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ヴァルハラ・ヴァルフレア  作者: えむ
五、そして、
25/26

01

 がたがたとした音と揺れを感じ、ロビンは目を覚ました。

 きょろきょろ周りを見渡してみると、ここが荷馬車の上だということが分かる。

 ふう、と一息ついて積載してあった干し草に身体をうずめ──瞬転、がばりと起き上がってもう一度周囲の状況を確認する。

「………………僕は」

 確か、ブリュンヒルドと闘っていたはずなのだが……。

「起きたか」

 不意に荷台の前方から声。

 揺れる荷台を歩いて御者がいる方に行くと手綱を握ったアルヴィンスがいた。

「アルヴィンス、僕は」

「安心しろ。お前は確かに勝った」

 だが、

「ニーナはヴァルハラに居ないらしい」

 そう。アルヴィンスの言う通り、結局のところニーナはヴァルハラにいなかったのだ。

 まさか……とロビンは変事を予測してしまったが、ニーナが(魂として)生きているというのは事実で、その事はブリュンヒルドが証言している。しかも、ニーナの肉体が死んだあの時に。


 これより先に起こりうる『神々の黄昏』に勝利するためには女神の覚醒を促す必要がある。したがって、カサドレア国のニーナ姫の魂を拘束する。


 ブリュンヒルドは最初から、殺害するとは言っていなかったのだ。

 それにしても府に落ちない点がいくつかある。

 前述した事もそうだが、最期の声。──それだけの思いがあれば、妹は救えるだろう。

 これはどういう意味で放った言葉なのか。加えて彼女が最期の最期に残して言った言葉が一番理解に苦しむ。

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