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ヴァルハラ・ヴァルフレア  作者: えむ
四・五、灼熱
23/26

03

 『あの娘がたまたま女神の特性を持って生まれただけだ』

 ならばニーナは、その偶然によって殺されたという事か? もしかしたら回避できていたかもしれない死だったという事にはならないだろうか?

 ──……答えろ。

 足元の焔が巨大化。ロビンの身体が紅蓮のそれに包まれる。

 『他に理由は無い』

 ならばニーナは、そんなどうでもいい理由で死んだというのか?

 何か罰を受けたというわけでもなく、償いのためというわけでもなく、妹の事情も知らずに勝手に命を奪ったという事にならないだろうか?

 ──……答えろ!

 ロビンの身体を包んでいた火焔が大炎上し、四方を巻き込んで巨大な炎陣と化した。

 草という草を焼き、大地という大地を焦し、焔の巨大化はロビンの心に呼応するように その速度を爆発的に加速させていく。

 

 四大『火』術。それがロビンに宿った力だ。「──………………ルド」四大は術者の精神に依存する心の力である。ヴァルハラに戻りたいと強く思えば至れるように、大地を穿つ剣が欲しいと思えば具現できるように。「──…………リ……ルド」感情を力に変換する。怒りの熱さだけロビンの焔は強大になる。まるで、感情そのものを具現化するように。「────ブリュン、ヒルドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


 瞬間、燃え盛る大火焔の中から焔を纏った怪鳥が飛び出した。燃え上る背にロビンを乗せ、波打つ焔の翼を振るい、大気を激震させながら滑るように空を駆ける。

 対するブリュンヒルドも雷で巨大な騎馬を創りだし、騎乗。走り出していた。

 彼我の距離は一瞬で無くなり、衝突。

 弾ける雷と燃え上る焔が激しく喰らい合う。それとは別に術者同士も闘争に及んでいた。

 ロビンが焔の拳を振り抜けばブリュンヒルドが雷槍を突き刺す。

 雷槍が身体を貫くたびに意識が飛びそうになった。だが、死ぬほどの痛みではない。苦しみでもない。

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