02
──殺してやる……!
刹那、先よりも巨大な雷光がロビンに殺到した。
複数の雷鳴は甲高い悲鳴を重複させ、しかし光速で地を穿っていく。
僅かに触れただけでレガースが裂け、ガントレットが剥がされ、全身の装甲が朽ちていった。
ロビンは僅かに残った腕の白銀を自ら毟り取って叫ぶ。
「ブリュンヒルド! 聞こえているのなら答えろ! なぜニーナなんだ!? なんでニーナでなければならなかった!!」
ロビンの声はほとんど雷鳴に掻き消されていた。
彼女との距離もまだ開きがある。
だが、届いていなくてもいい。例え今更なにを弁解されようとも、体内から溢れ出る火焔を止める事などできないのだから。
しかし、答えは返ってきた。
「あの娘がたまたま女神の特性を持って生まれていただけだ。他に理由は無い」
温度の無い言葉と同時、更に巨大化した雷光、いや、巨大な光の柱がロビンに迫る。
ブリュンヒルドの言葉に動きを停止させたロビンに光速の一撃を躱す術は既になく、強烈な光の束が炸裂──
「──ロビン!」
ズダァアアアン!! と、空から降ってきた巨大な剣が大地に突き刺さり、雷撃を遮断。雷鳴とは全く別の轟音が鳴り響いた。
あまりの衝撃に地が震撼し、ロビンは巻き起こった衝撃波に飲まれて後方に吹き飛ばされる。
大地に突き刺さる巨剣。巨人が扱いそうなほど巨大なそれは、アルヴィンスが行使する四大『地』術の一つ。
ロビンに近付こうとするアルヴィンスだったが、別方向から飛んできた戦乙女の攻撃に吹き飛ばされてしまった。
巨剣が淡い光となって消え失せる。
ロビンは身体を起こしながらブリュンヒルドの言葉を反芻する。それと共に、地に落ちた血液が発火、炎上を始めた。




