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希望的観測。
もしかしたら、かもしれない、だったら。
たとえその希望が蜘蛛の糸よりも細かろうとも、すがり、手繰り寄せ、登ろうとする。
それは明らかに無謀で馬鹿馬鹿しい愚行だが、動く者にしか見えない風景が。抗い、求め続けた者にだけ訪れる答がある。
同じだ。
厳冬の地で欠片を見つけ、ヴァルハラまで登り詰めた己れと。
己れはその時、王女との出会いに似た、親しい者との間に生じる信頼関係というものを感じ取っていた。
『…………己れの知っている全てを話そう』
どうやら本当に運が回ってきたらしい。
この地に訪れ、おそらく百余年の歳月は過ぎているはずだ。
向かいの赤の部屋も、右隣の青の部屋も空室のままだが、これ以上の好機はないように思える。
己れの使命を突き動かす時が、来た。




