06
騎士団は己れを守ろうと鎧纏いの女に立ち向かった。そして王女までもが壁となり、女と対峙したのだ。
しかし鎧纏いの女の強さたるや、まさに鬼神が如し。
強靭な戦士たちである騎士団が女の一撃で宙を舞い、叩きつけられ、女の眷属である有翼の獅子に屠られていった。
それでも騎士団は、王女は、立ち向かう事を止めない。
逃げろと叫んだ。大人しく己れを差し出せと喚いた。流れ者を庇う理由などこの国にはないと絶叫した。
それでも王女は己れに言ったのだ。──お前もすでに、私が守るべき民なのだ、と。
虚しくも、勝てる術などなかったというのに。
死の間際、王女は己れに黄土色の欠片を託した。
元は石版か何かだったのだろう。古の文字が刻まれており、終わりの文しか読めないため、全容を解明することはできない。
──か*─総て ──終わりへと導く。
途切れ途切れの文章。
終わりへと導く。それが私の使命だった。後はお前に任せる。──王女は最後の力を振り絞り、それだけ言い残して息を引き取った。奇しくも安らかな笑みを浮かべながら。
結論から言えば、己れは死んだ。
王女と騎士団が全てを賭して守護してくれた命を自ら捨てた。
突撃という最も愚かな形で。
だが、王女から託された使命は、最期の命令だけには背くことはできない。許されない。
ならばなぜ己れは間抜けに死んだ? この世で最も返しがたい恩を受けた王女と騎士団の思いを踏みにじるような行動に及んだ?
後悔ばかりが募った。それはやがて自嘲になり、自己卑下となった。
そして果たせぬ約束と知りながらも果たさねばならないという止楊に辿り着いたころ、己れは目を覚ました。
世界の最下層。暗く閉ざされた地獄で。
後悔、というのが簡潔で正しいのだと思う。ただ、それだけではない。
重なり、折り合い、積み重なった後悔は────固き約束となった。
『鋼の誓い』
感情というには程遠い表現だが、それが己れの力の核だ。




