委員長と俺と。放課後の教室にて。
夏の虫たちのざわめきが気が付くとなくなっていて、葉が色を変え始めた今日この頃。
10月上旬の爽やかな風を浴びながら俺は友人と下校していた。
俺は部活動には所属せず、毎日バイトをしていた。
ただ今日から中間テスト10日前なのでシフトは外してもらっている。
アルバイトをするには一定の成績をテストで取らないと許可を取消にされてしまうため勉強を手を抜くことは出来ない。
そのため今日から勉強に取り組もうと思っていたのだが・・・
「あっ、ノート教室に起きっぱなしだ」
「おいおい、そんなんで大丈夫なのかよ?バイト出来なくなるぞ」
「悪いが、先に帰っててくれ。ちょっと取り行ってくる」
返事を聞く前に俺は学校へともと来た道を戻っていた。
学校に着くと毎日使っている下駄箱に靴を入れシューズに履き替えた。
テスト期間のため部活動は活動していなく、校舎内は静かだった。
普段ならうるさいくらいの野球部の野太い声は聞こえなかった。
階段を上り教室に入ると女の子が一人黙々と作業していた。
うちのクラスの委員長だ。
「あれ、委員長まだ学校に残ってたの?」
二人しかいない教室を無言でやり過ごすことが無理だと感じた俺は言った。
「あ・・・、ちょっと用事で、残ってやってるの」
そう言われ彼女の座る机に目線を移すとそこにはプリントがなかなかの枚数積まれていた。
「ちょっとって・・・これ全然ちょっとって量じゃないでしょ」
「でも委員長の仕事だし・・・」
「というか先生押し付けすぎだっつの。テスト前だっていうのに。俺手伝うよ」
「え・・・悪いよ」
「ここで見なかったことにして帰ったら後味悪いからね。二人でやった方が捗るでしょ」
「ありがと・・・。じゃあこれお願い」
そういってプリントの山の一部をもらい二人で作業に取り掛かった。
「ふぅ・・・とりあえずこれでけりついたな」
「そうだね。思ったより早く終わったかも・・・」
早くといっても当初の俺の中の予定では勉強がある程度進むはずだったんだが。
「あのね・・・、今日手伝ってくれてありがとね。凄い助かったし、嬉しかった」
「困ったときはお互い様。どうせ大してやる事もなかったし・・・・・あ、そうだノートノートっと」
当初の目的を思い出し自分のロッカーから必要なノートを取り出す。
「ノート・・・?あっ、今日からテスト期間だもんね。ごめんなさいっ!勉強しなきゃいけないのにわざわざ手伝ったりしてもらったりして・・・」
「気にしないでー。今日帰ってからがんばるから」
「あの・・・・もしよかったら私、勉強教えましょうか?今日のお礼に何かしたいし・・・もちろん迷惑じゃなければだけど・・・」
口ぶりもそうだけどこの委員長、勉強はとっても出来る。
これが理由で委員長にされられたんだからひどい話だと思う。
ただ勉強以外はあんまり褒められたものじゃないが。
「いいの?俺としては願ったり叶ったりなんだけど」
出来なくて困ってるんだから断るはずがない。
「私なんかでよければ。ただ、明日も委員長の仕事があるからそれが終わった後になっちゃうけど」
「全然かまわない。・・・・ん、わかった。明日以降も俺、委員長の仕事手伝うよ。だから終わった後でいいから勉強教えて」
「明日も手伝ってくれるの?ありがとっ・・・凄い嬉しいよ」
そう言ってこの日は別れて帰っていった。
それから土日を挟みながら9日間、俺は委員長の仕事を手伝い、委員長は俺に勉強を教えてくれた。
委員長の仕事は慣れるまで大変だったが、コツを掴むとトントン拍子で進んでいった。
勉強の方は委員長の教え方が最初はよくわからなかったけど、次の日からしっかりと内容をまとめてきたりとさながら1対1の授業を受けているようだった。
苦手だった数学もこれならある程度の点数が取れるだろうというところまで到達していた。
テストが終わりテスト返しがどの科目も始まった。
軒並み点数は伸びていて、特に平均を超したことのなかった数学は学年トップ10に入っていた。
委員長授業恐るべし。
そして全教科のテスト返しが終わった日のホームルーム。
「明日から、後期になるので係りの割り振りをきめまーす」
と、担任。
「まず委員長を決めるが、立候補はいないかー?・・・・いないよなぁ」
どうしたモンかなぁっと悩む担任。
「今のままじゃダメなんですかー?」
他人事だからなのだろう、後ろの席の方の女子がそんな身勝手な意見を出した。
「本人がいいなら構わんが・・・どうする?」
「え?私ですか・・・?それはちょっと・・・」
委員長は乗る気じゃない様子。
そりゃ流石にあれだけ雑務を押し付けられたらやりたいなんて思わないよなぁ。
でも、誰かがならないといけないわけで。
よし決めた。
「せんせーい。俺委員長やりますよ。時間的に許される範囲でならやります。」
「おっ、そうか。期待してるぞ。じゃあ次は副委員長だな・・・・」
仕事の内容はあらかたわかってるしな。
バイトの時間に影響出ないくらいにがんばろっと。
その日の放課後。
「なにもまた大変な仕事に就かなくても・・・」
委員長は副委員長になったらしい。
なんでも俺が委員長になることに罪悪感を感じただとか。
「委員長も物好きだね。ってもう委員長じゃないのか」
「物好きなんかじゃないです・・・」
そう言うと彼女は目を赤らませながら立った。
「だって・・・・あなたの隣にいたいんだもの・・・・。あなたががんばっているときの顔、笑いながら助けてくれる時の顔、勉強に苦戦してるときの顔。・・・・・全部一番近くで見てたいから・・・・・・あなたが好きなんです」
彼女がここまでハッキリと意思を示したのは初めて見た。
「取り得の無いこんな私ですけど、よかったら私と付き合ってください」
「もう少し自信持ってよ」
「え・・・?」
「君はとっても魅了的な女の子だよ。俺にはもったいないくらい。だからこれからよろしくお願いします」
そう言い終わるとほぼ同時に彼女は泣き崩れた。
数分後、やっと落ち着いた彼女に俺はひとつ質問した。
「そういえばさっきも少し触れたけど、もう委員長じゃなくなったけどこれからなんて呼べばいい?」
「私、もう委員長じゃなくなったから・・・・・・・・・・名前で呼んで・・・・?」




