ついてる
お昼に更新しようと思ってたら惰眠をむさぼってしまい投稿が遅れました尾中です。
今日はもう一話更新する予定です。
大げさな演出をしてみたけれどなんて事はない。
水球の中にたまたま入っていたのだ。
何がって?それは・・
「魚だ・・・」
そう、さっき私が諦めたばっかりの魚が水球の中をグルグルと泳いでいるのだ。
お~焦ってる焦ってる。どうやら異世界産の魚は地球産のものと変わりはないらしい。
よーし!今日の昼ごはんは君に決めた!
精霊さん達に頼んで水球を湖面から陸地の上まで移動してもらう。
【写真収納】を起動。水球を収納。
すると水球が消えた後には数匹の魚が地面に落ち、それを満面の笑みで拾う私。
そのまま小屋から拝借してきたナイフで内臓を取り除き頭を落とす。
【写真収納】から水球を1つ取り出して魚と手とナイフを洗い、魚を収納。
内臓と頭も迷ったけれど一応収納。
いやぁラッキーだった。
しかし手が生臭くなったが薬草臭いのとどっちがましなんだろうか。
小屋に戻り早速【写真収納】から魚を取り出す。
いやだって時間止まっちゃうぞ説があっても生ものは早めに調理加工するってのは常識だし。
キノコの時と同じようにそこら辺で拾った枝に魚を突き刺して2匹火で炙る。
しかし今回はいつもとは違う!
実は今日の朝、回復薬を入れるための瓶を探してたら岩塩が出てきたのだ!
茶色い皮の小袋に入っているものだからぜんぜん気がつかなかった。
なんかしょっぱい木の実とかは食べていたけれど、そろそろ本物の塩分摂らなきゃ拙いって焦ってたから丁度よかった。
やっぱり今日はついてる!
あ、ついでに鍋にさっき収納した水の一部を入れて沸騰させよう。
いくら綺麗でもさすがに湖の水はそのままはキツイ。
現代っ子のお腹はデリケートなのだ。
残りの魚、3匹は適当に開いて削った岩塩を擦り込み日陰に吊るす。
精霊さん達にお願いして魚に向かって常に微風を当ててもらう。
これでなんちゃって一夜干が出来るはず。
私は魚を加工できるし、精霊さん達は楽しそうで一石二鳥。
どうやら彼らは風に吹かれて魚がクルクルと回転するのが楽しいようだ。
『えーい』
『くるくる~』
『きゃはは』
『こっちも~』
うむ、なんて平和なんだろうか。
炙った魚を食べながら思考する。
果物、木の実、山菜、キノコ、魚と水に塩、これだけあれば食料の方はなんとかなる。
回復薬もあと3個あるしある程度は安心だ。
お風呂は我慢しなければいけないけれど、水が大量にあるから頭や服を洗うことも出来るだろう。
まぁ下着だけはこまめに洗っていたけど。
よし!これ食べたら盥に水張って体と服を洗おう。
ああ、石鹸とシャンプーがほしいなぁ。できれば環境に配慮した感じのやつ。
精霊さん達の住処っぽいし此処。これだけお世話になっているのに、そのお返しが環境破壊とかないわー。
そういえばこの小屋ってどうしてここにあるんだろうか
精霊さん達に人が住んでいるのかと聞いたが、答えはNO。それどころかこの山は人が住んだことがないそうだ。
じゃあこの小屋はなぜあるのかと聞いた所、以前一度だけコンタクトをとった知性あふれる精霊さんが答えてくださいました。
あれ以来いくら話しかけても出てこないから諦めてたけれど、やっぱり今日はついている!
精霊さんいわく、
『あれは人の営みに興味を持ちし我らが同胞が作りし物。異界からの迷い子よ、好きなだけ居るがいい』
とのこと。随分と簡単に答えがもらえて正直驚いた。
そしてさらに気になることを聞いてみた。
『あの、いま使ってるこの道具って見たことありますか?』
・・・はいやっぱりないそうです。
ついでに異世界からの迷子も聞いたことないらしい。
あの~、精霊さん達、迷子って言うより遭難者って感じなんですが。
でも普段は暇しているらしい古い精霊さん達が調べたりしてくれると約束してくれた。少し安心した。
この訳がわからない状況で自分より知性ある生物の協力をもらえたのだ。案外早く帰れるかもしれない。
その代わり他の精霊さん達と今まで通り遊んでやってほしいと言われた。
正直、えぇっ!?あんなんでいいのかっ!?って思ったけど精霊という存在について教えてもらったら納得した。
なんでもこの世界での精霊さん達は空気中の魔力が集まってできた存在らしい。
でも普通の場所に漂っている魔力は薄く精霊さん達の繁殖?に適していない。
なのでこういった山や森とか魔力が濃い場所に好んで住んでいるらしい。
姿は無く意志疎通はエルフとか限られた種族やごく希に人族の神管とかが電波キャッチをする程度。
限られた種族にしたってぼんやりとしか意思のやり取りが出来ない。
精霊は魔力の塊で奇跡の象徴、でも何かお願い事をされても聞き取れないからよくわかんないとのこと。
年数を重ねた強い精霊とかなら聞き取りは結構できるらしいが、そういった精霊はたいていが人に興味が無いためまず近づかない。
人と寄り添っていた時代もあったらしいが、戦争などで魔力を搾り取られる精霊が続出。
それ以降はお付き合いを控えていると。
魔力の塊である精霊は、魔力を使い切ると消滅する。その現象を溶けるというらしい。
現在進行形で風吹かせてもらっている身としては冷や汗物で、すぐに止めようとした。
だっていま彼等がいなくなってしまったら間違いなく私は死ぬ。
パニックになった私に精霊さん・・・大精霊さんでいいや、大精霊さんは教えてくれた。
水や風をちょっと動かすだけでは問題ないと。
逆にそれぐらいなら魔力コントロールにいいらしい。回復薬の件もセーフだった。
では何ならダメか。
生贄を必要とするほどの大規模魔法とからしい。生贄が50必要なところを精霊だと1の犠牲ですむらしい。
ただ度重なる戦争等で当時あったほとんどの生贄消費型大規模魔法は失われたらしいが。
なんというか、私では精霊さん達を害することができないと知って安心したのだった。
明らかに私が一方的に利用している関係であるのにもかかわらず、本人達も楽しんでいると御礼までされた。
だ、大丈夫ならいいんだけど精霊という種族?がなんか心配になった。
本当にいい人過ぎる。・・・なるほどだから人間に利用されまくったのか。
なのでこういった事情から私とのやり取りは人に興味はあるが、人に感知してもらえない幼い精霊にとって新鮮で楽しい。とのこと。
どうして話せるのか?って聞かれてもこっちが聞きたいわ!!
というかエルフいるんだ・・・。
どこまでもファンタジーだなおい。
『幼き同胞は人に興味を持ったが故に疲弊し世界に溶ける。
迷い子よ、我等が善き友として受け入れよう。
だが幼き同胞悪意から傷つけること許さん』
『はい!善き友としてこれからもよろしくお願いします!』
こうして私は異世界にて大家さんを手に入れたのだった。
次回!品川さんと異世界産生物の心温まる交流回です(笑)