女子大にて(1)
彼女は一通り話を聞き終わると言った。
「なるほど。彰子の言ってることは分かった。うん。
でも1つ聞いていい?めたもうって何?」
それは難しい質問だ。冷房の効いた教室の外に初夏の緑が鮮やかだ。
私たちは誰もいない教室を貸し切りでお弁当を食べていた。
「何だろう?幽霊よりは妖怪に近い気がするけど……?」
「それってどんな形をしてるの?」
「人間くらいの背の高さで、ぼやぼやしてる。うーんと、
ドラクエのマネマネに似てるかなあ」
「ごめん、ドラクエはわかんない。そっかー、人間みたいな感じ?」
「高さ的にはそのくらいで、手足とか無くて
ただ煙みたいにぼやぼやと存在してるのが”見える”
でも実際には何も目には映ってないんだけど」
「……なんとなくわかったような……」
「うん、それで、いつもこっちを見てるんだよね。
顔が実際に見れるわけじゃなくて、そんなふうに感じるだけだけど。
なんかあいまいな表情を浮かべて
こっちをじーっと見てるわけさ」
「なんか怖くなってきた……」
「ふと気づいてそっちを見ると、
奴が物言いた気な表情でこっちを
じーっと見つめている……!」
「やめてー!」
つい調子にのって怖がらせてしまった。