大詰めへ(2)
佐々丘さんが、これ限りでめたもう狩りをやめることについて、
私に異議はなかった。
社会生活を送る一人の大人として、
それが健全だ。
佐々丘さんは一生分見ておこうとするかのように
私を見ていた。
今まで自分に禁止していたことを、
今だけは免除したらしかった。
私は、そんなまなざしで見ないでほしかった。
目をそらした。
どうせ、後で尋ねても、はぐらかすに決まってる。
そんなのはわがままだ。
遠くへ行ってしまうような口ぶりの後で、
そんな目をするのは、
私は期待してしまいそうで、
期待したいと思っているのに、
ブレーキをかけざるを得ない。
横目でうかがう。
佐々丘さんはなんて痛ましい目をしているんだろう。
澄んで遠くを見ているような目をしている。
私はやっぱり黙らされてしまっている。
何か言って冗談にしてしまえば、
佐々丘さんが私を見るのをやめてしまいそうで。
やっぱり、彼をずるいと思いながらも、
私は佐々丘さんに私のことをもっと見てほしいと思っている。
佐々丘さんはしばらくそうした後、
ゆっくりと元に戻って、
「で、日曜は大丈夫なの?」
と何気なく聞いてきた。
「日曜は弟たちが地元から遊びにくるんですけど、
その日は二人で上野に行くって言ってたから、いいんです」
「いいの?
……僕が一人で行ってもいいんだけど」
とんでもない。
佐々丘さんがめたもう狩りを最後にするって言ってるのに、
その場に居合わせないなんて。
「いえ、東京ドーム、行きます」