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喫茶店にて(2)
私はブラックのままで少し飲んだ。
ここのコーヒーは酸っぱくなくていい。
あ、ドビュッシーだ。「2つのアラベスク」。
ここの喫茶店はフランスの曲ばかり流している。
フランスならば時代は構わないようで、
本当にいろいろ流しているけど。
さっきは「恋は水色」(L'Amour est Bleu)が流れていた。
何がBleuなのかと言えば、恋人の目の色が、なのだ。
……。
私は平静を保とうとしていた。
怒ったりしてはだめだ。
きっと用事なんだ。
今まで遅れたことは一度もなかったから。
先に地上に上がって、喫茶店に入ってしまった。
20分待っても来なかったから。
普段は佐々丘さんへメールを送らないので、
どきどきしながらメールも送った。
「先に上へ行ってます」
上、と言えば、地上に上がったところのいつもの喫茶店だと分かるはずだ。
……。