天使の人形
今日はそのくらいにした。
私たちはエスカレーターを降りて電車に乗った。
始発駅なので、まだ少し停車している。
降りる駅は私の方が早い。
「ところで、気になってたんだけどそのかばんに何かついてる?」
「あ、これキーホルダーです」
私はキーホルダーがよく見えるように、
かばんの内側へ回ってしまっていたそれを
ぐるっと外側に持ってきた。
「天使の人形。
私、天使好きなんですよー」
最近、新宿の雑貨屋で見つけたのだ。
少女趣味だとは思うが、歩くたびに揺れるのもかわいくて気に入っている。
親友の千晴なんかはこういう甘い系のものは肌に合わないそうだが。
そして話題は変わった。
私はちょっとショックだった。
なぜなら佐々丘さんは、まるで嫌な物でも見たかのように、
キーホルダーからすっと目を反らしてしまって、
それ以降人形を見ようともしなかったからだ。
(佐々丘さんは天使が嫌いなのかな……?
そんな人めずらしいけど)
天使の人形は大人しく目をつぶって揺れている。
頭には光の輪っか、背中には大きな白い羽。
首の後ろに金具がついていて、
そこが鎖とつながって、ぶら下がっている。
本体は布に綿をつめた人形だ。
女の子の天使。