実験(3)
その後もいろいろと、まあささやかに実験してみて、
・近すぎると見えない。
・誰か他の人が乗っていたり待っていたりすると見えない。
ということが分かった。
(私たちは多少、迷惑行為を行ってしまっていたかもしれない……)
実験しながら話したことが、以下だ。
「私、基本的にこういうのってあまり好きじゃないんですよ。
誰かがエレベーターのボタン押したはいいけど、
来るのが待ちきれなくてどこか行っちゃって、
それで後からエレベーターが来て、
その階で停まって開くんだけど
誰も待っていないっていうの。
エレべ-タ-に乗っている側としてもあまりいい気はしないけど、
すぐに”閉める”ボタンを押しちゃえばいいからいいんですよ。
そうじゃなくてもっと嫌なのは、
エレベーターに誰も乗っていないときなんです。
せっかくその階まで来て扉開いたのに、誰も乗らない。
ポカーンとそのまま開いていて、
ちょっとするとあきらめたように扉を閉じるんですけど、
その間が嫌なんです。
”さあ乗れよ””あれ、誰もいないの?””・・・・・・””もういいよ”
って感じで、見てるとなんだかエレベーターが期待を裏切られて
がっかりしているみたいで、やだなあ」
「エレベーターに感情移入してるんだね」
佐々丘さんは苦笑した。
私が話してる最中から笑いをかみ殺していたけど。
私はちょっとむきになった。
「だって、いるかと思ってたのに、いない。
ボタン押されてたから誰かいたはずなのに、いないっていうの。
さみしくって、心理的に受け付けないんです」
そう言うと、ちょっと真面目に聞いてくれそうな顔をした。
「そういうエレベーターを目撃すると、なんだか分からないけど、
ちょっとゾッとするんです。
あと、私が下に降りたくてエレベーター待ってるとき、
私より上の階の人が下ボタンを押したみたいで、
エレベーターが私の階を通過して上へ昇っていくんです。
しばらくしてから降りてきて、やっと開いたときに、
誰も乗っていないと、ちょっとゾッとします。
絶対誰か乗っていると思ってたのに、って。
今の今までめたもうが乗っていたんじゃないかって気になります」
佐々丘さんは途中から私の話を真剣に聞いてくれていた。
「まだはっきりとは分からないけれど、
何かいい線ついてる気がするよ」