第98話 黄金の魔力(3)
しばらく空を飛んでいると、いよいよ華陽が見え始めた。華陽の地形は帝都周辺が海に囲まれており、さらにその海を囲むように土地があった。
貴爵邸は帝都と同じ中央の島にあるようだ。そこに向かっている間に大きな魔力を感じた。
「……なぁ、星香。客ってのはオレ達だけじゃないのか?」
「ミルアルト様は最近色々と大変だったそうではありませんか。校長先生はあの人がいるからあなた様の同行を許可してくれたのですよ。それと、彼は運命のお方ではありませんので、ご安心ください」
「だからそれは認めてないって言ってるでしょ!」
なるほど……校長が何もアクションを起こさなかったから少し変だとは思った。あの人がいるなら確かに安心だ。恐らくこの世界のどこよりも安全だろう。
しかしオレとしても彼に会えるのは嬉しい。ちょうどもうすぐ夏休みも始まるし、そろそろ頃合いだと思ってたから。
「さぁ! 案内いたしますわ! ここが私の屋敷にございます!」
「君のっつーか……当主様のじゃねぇのか?」
「……申し上げておりませんでしたっけ? 私が神社家の当主にございましてよ?」
「あっ……そうなの。そりゃ悪かった」
若いのに大変だな。……当主のくせに抜け出してオレに会いにきたのか。まぁそれほどに占いの力が信用されているということだろうけど。
街の風景は圧巻だった。瓦造りの屋根がどこまでも広がっていて、聖都とは違い剣よりも刀を持っている人達が多い。写真でしか見たことのない景色が目の前にあるというのはなんとも不思議な感覚だった。
オレ達は星香に案内について行った。彼女の屋敷はとても広く風情があった。屋敷は基本的には木造で、部屋はほとんど畳が敷かれていた。
カーペットを敷かずとも柔らかい床というのは心地良いものだった。ルーシュは客室に案内され、オレは別の部屋に案内された。もちろんルーシュは嫌がっていたものの、説得の上で渋々と承諾していた。
オレと二人で話したいから別の部屋にしたのだと思ったが、そこにはオレと星香の他にもう一人来ていた。
「お久しぶりです。まさかこんなところで会うとは」
「私も君に会えるとは思わなかった。金色の水晶について星香さんから話を聞いていてね。十法帝会議以来かな? しかしあのときはあまり話もできなかったからね」
部屋にいたのはベルドットさんだった。上空からその魔力は感じていたが、まさかこんな形で会うこととなるとは。オレと星香、ベルドットさんは座布団に座り、茶飲みで緑茶を飲みながら話をした。
「私はミルアルト様と二人でお話したいことがございますので、今はお二方……というよりもベルドット様にお伝えしたいことをお話させていただきますわ」
「私にかい?」
「はい。ベルドット様……もちろんミルアルト様でも構いませんが、“黄金の魔力”というものをご存知ですか?」
「……?」
黄金の魔力……? オレは聞いたこともないが、セリアが反応しないということは彼女も知らないのだろう。そしてベルドットさんの様子からするに彼も知らないようだ。
「オレも知らないが、何なんだ? それは……」
「私も詳しくは知りませんが、魔力を超越した魔力だと聞いています。普通の魔力とは違って常人には感知できないそうですが、信じ難いエネルギーを発するとか……。私の占いではベルドット様はお持ちの力だと出たのですが……」
「私が? ……あぁ、心当たりがないこともないけど、それがどうかしたのかい?」
「その力は歴史の破壊者と……ルシファーと戦う際に重要なものとなります。今はそれだけお伝えいたしましょう」
「なるほど……アレは後天的なものではあるけど誰でも手に入れられる力ではないし、同時に極めて危険な力だ。そして私は人に教えられるほど自在に扱えるわけでもない」
「構いませんわ。私はただ助言をするだけでございます。それからのことに関して私が言えることはございません」
なんか話についていけねぇな……結局ベルドットさんは“黄金の魔力”がなんなのか知ってるってことか。そしてそれは歴史の破壊者やルシファーに有用だと。
けれど他者に教えられるほど彼もまだ使いこなしてはいないというわけだが……
「ではベルドット様、地下はご自由にお使いください。それから私にできることなら何でもご協力いたしますわ」
「ありがとう。ミルアルト君とはまだ話があるのかな?」
「はい。とても大事なお話がございます」
「ならそれが終わったら私のところまで案内してくれ。ああ、もちろん用があるなら私のことは後回しで構わないし、急ぐ必要もないのだけれどね」
「かしこまりました。ではミルアルト様、こちらにお越しください」
「ああ。ベルドットさん、ではまた」
ベルドットさんには一時の別れを告げ、オレは再び星香の後ろをついて行った。
そして案内されたのは……自室だろうか? まぁここなら確かに誰にも聞かれはしないか。少しすると彼女は覚悟したように話し始めた。




