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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第六章 華陽大帝国
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第95話 貴爵(3)

「ここではあまり詳しく話せませんが……私の屋敷にいらしていただければお話しいたしますわ。政府が気にかけているという“金色の水晶”についても……いかがです?」


「…………いや、それは政府の仕事だ。わざわざオレやルーシュが聞く必要はない。それにオレ達はロウドンから帰ったばかりなんだ。少し休みたい」


「しかしミルアルト様、あなた様が華陽にいらすことは“吉”でございますわよ? もちろん私にとっても」


「申し訳ないが折れるつもりはないよ。疲れてるんだ」


 オレは夜の花火を見たらとっとと寝てしまおうと思っているほどに疲れているんだ。……いや、本当なら今にも寝てしまいたいくらいに。海外旅行なんてものは続けて行くようなものじゃない。


「そうでございますか……。残念ですわ。せっかく機械竜を動かしましたが……仕方ありませんわ」


「待て! 機械竜と言ったか!?」


「ええ。しかし仕方ありませんわ。強要することなどできませんから」


 機械竜、それはつい数年前に開発された空を飛ぶ魔導具だ。飛行機よりも速く、力強く、燃費がいい。加えてドラゴンの姿を模しているために魔物に襲われる心配もない。


 ……そして何よりカッコいい。本物のドラゴンはその誇り高さゆえに人を乗せて飛ぶことはないと言うが、それだけにロマンがあるというものだ。


「待ってくれ! ……ちょっと考える。なぁ、ルーシュ?」


「うん。…………え?」


「もちろんですわ。屋敷でもしっかり休めるようにしておきますから、どうか気兼ねなく。また明日、夕方に生徒会室にお邪魔させていただきますわ」


 星香はそう言って立ち去った。機械竜に乗れるような機会はそうそうないだろう。これを逃せばいつまた訪れるか……


 だが気に入らないのも事実だな。あからさまな餌に釣られるのはいい気分じゃない。とはいえ彼女の言う“占い”だとか“吉”だとかいうのが気になるのもまた事実……。どうしたものか。


「ねぇ、屋上行こうよ。花火始まっちゃうよ?」


「ああ、そうだな」


 ルーシュに促され、オレは校舎の屋上に行った。日中の暑さからは考えられないほど涼しい風が流れており、白や青の星が空に輝いていた。


 西の空はまだどこか赤く、今日という一日が終わりかけているような気分だ。花火が上がるのはまだ十数分はありそうだな。


「ミラは行くの? 華陽に……。星香って人、胡散臭いよ」


「胡散臭いのはそうだけど……たぶんアレ、オレを連れてくまで諦めないぞ? オレとしても気になる部分はあるわけだし、行ってもいいかなと思ってるけど?」


「ミラが行くなら私もついてくよ。ミラと二人にしてたら何が起こるか分からないから」


「ははっ。オレが何かするとでも?」


「星香がね」


 ルーシュはどこかぷりぷりとしていた。怒っていたとか、ムスッとしていたというより、“ぷりぷり”と表現するのが正しいと確信できるほどにぷりぷりとしていた。


 たぶん星香に対抗心を燃やしているのだろう。オレが靡くわけもなかろうに……まぁオレがどうという問題じゃないんだろうな。


 日がすっかり暮れて空が黒色に染まると、少ししてから花火が打ち上がった。夜空に咲く赤い光にも感動はしたが、それ以上に身体中を振動させるその爆発音にどこか心打たれた。


 まるで心臓が身体の外にもう一つあるような、そんな感覚だった。長くも短いその一瞬を終え、オレはルーシュと共に寮へと戻った。


 吸い込まれるようにベッドに転がると、巨大生物に飲み込まれるかのように夢の中に落ちていった。


 悪夢さえ見なければ素晴らしい一日だったのに、そう思えるほど充実していたのは久しかったかもしれない。

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