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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第六章 華陽大帝国
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第94話 貴爵(2)

 ガラリネオさんから聞いたが、つい最近までロウドンと戦争をしており、歴史の破壊者(デスティニー)の目的と予想される国だ。ここに来ているということはそう有用な情報を持っている立場とも思えないが……


 試合が始まると、それは驚くべき結果に終わった。いや、驚きなのはその内容だろうか。


 ミライアは終始果敢に攻めていたものの、その攻撃が当たることはなかった。まるでどう避ければ分かっているかのような無駄のない動きで、攻めるときは持ち前の莫大な魔力を用いて強引に攻め立てていた。


「お疲れ! ミライアちゃん!」


「負けちゃったー! 何あの人! なんか強すぎない!?」


「確かに強かったな……。ああいうタイプとは戦いたくないな」


 オレとルーシュは試合を終えたミライアに挨拶をしに来ていた。悔しがってはいるが、なかなか楽しんでいたようだな。


 ただミライアは相当強いのにそれを容易くあしらっていたから……下手したらルーシュよりも強いのかもしれない。………戦ってみたかったなぁ……


「そういえば二人はいつ帰ったの? ウチなんも聞いてないんだけど」


「帰ったのはついさっきだよ」


「え、疲れてないの?」


「疲れてるけどせっかくだしさ。年に一回だし楽しみたいじゃん?」


「それもそうだね。二人でちゃんと楽しんできな! 無茶はしないでね!」


 ミライアと別れ、オレとルーシュは適当に校内を歩き回った。綿菓子やリンゴ飴など“祭りっぽいお菓子”がたくさん売っており、オレはリンゴ飴をルーシュに買ってあげた。


 甘くて美味しいとは思うが値段の割に量がないからなぁ……まぁルーシュは嬉しそうにしてるからいいか。


 日が沈みかかり、売店のない廊下を歩いていると前方から一つの人影がこちらに向かっているのを見つけた。黒い髪と黄金の瞳……さっきの試合の優勝者だ。


 名前は確か……何だったか……。その人がオレ達を見るや否や、目を輝かせて近づいてきた。


「……ん?」


「探しておりましたわ! あなた様がグランデュース=ミルアルト様でございますね!?」


「え……まぁそうですが……。あなたは……えっと……」


わたくし神社かみしろ星香せいかと申します。華陽大帝国の貴爵家の者にございます」


 貴爵家だと? 地理や歴史に疎いオレでもそれは知っている。皇帝に次ぐ権威を持つ特別な爵位、そして噂では特別な力を持っている一族でもあるとか。それならば彼女は……もしかしたらオレと同じ継承能力者インヘリットかもしれない。


「これはこれは……まさかお貴族様だとは……。神社様、私に何かご用で……」


「私、星香と申しますの。“様”も敬語も不要でしてよ?」


「いや、そう言われてもですね……私からしたら貴族であるあなた様に無礼をなすわけにも……」


「私、星香と申しますの。“様”も敬語も不要でしてよ? それに私からしましたらグランデュース家の方がよっぽど偉大だと思いますの」


 ……なかなか頑固そうな人だな。お淑やかな口調からは信じられない圧を感じる。これはたぶんこちらが折れない限りは話が進まないな。


「……そう言うならそうさせてもらうが……なら星香さんも敬語でなくてもいいんじゃないか?」


「私は淑女でございますから。それと“さん”も不要でございますわ。どうか星香とお呼びください」


 なかなかというかだいぶ頑固だな。オレの隣にいるルーシュはやけに警戒しているが……何を気にしているのか……


「なら星香、それで何でオレを探してたんだ?」


「そんなことは決まっておいででしょう? ミルアルト様が私の運命の人だからでございますわ! ぜひとも私をお嫁にしてくださいまし!」


「……は?」


「ちょっっっと待て!!」


 星香の言葉をイマイチ理解できなかったが、それ以上に取り乱したルーシュが声を荒げた。ついさっきまで静かにしていたが、どうにも我慢ならなかったらしい。オレとしては少しむず痒いが……


「あら、あなた様は?」


「アリベル=ルーシュ、名前くらいは知ってるでしょ?」


「まぁ! もちろんでございますわ! 生徒会の副会長ですね? なんと……まぁまぁ……。なるほど……!」


 星香はルーシュと少し言葉を交わすと何やら考え始めた。ルーシュのことも知ってるんだな。ジンリューがそれなりに有名なのは知っていたが、ルーシュもそれなりに名が通っているらしい。


「そうですかそうですか! ならば私は第二夫人でも構いませんことよ?」


「待て待て待て! 話をそう飛躍させるな。星香、オレは君に会うのは初めてだし、はいそうですかとは飲み込めねぇよ。なんなんだ? “運命の人”ってのは……」


「そうですね……まずは順を追って説明すべきでした。申し訳ありません。“運命の人”と言ったのは占いでそう出たからでございます」


「占い?」


 なんか急に胡散臭い話になったな。……本当に貴爵家の者なのか? もしかしたらただのホラ吹きという可能性も……いや、あれだけ強くてそんなことはないか。

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