第92話 金色の水晶(2)
第五章完結です!
ロウドン王・・・カルテッドによって思考能力を奪われていた
ロウドン・スザン=カルテッド・・・歴史の破壊者に協力した。ロウドンの第二王子。ミラに敗北
C72・・・歴史の破壊者の一員。ガラリネオ、およびミラとルーシュに敗北
ところ変わってここは王室。玉座に座った国王とガラリネオが対面していた。この部屋には第一王子と必要最低限の騎士達も並んでいる。兵士の大半は損壊した城や街、さらには国民の不安を拭い去るために出張していた。
「ガラリネオ殿、あなた方には一生頭が上がらない。息子の暴走を止めてくれて……いや、私の失態の尻拭いをさせてしまい申し訳ない……!」
「そう責めなさるな。歴史の破壊者の実態は我々も捉えられていない。これだけの損害で済んだのはマシな方さ」
「いや、どんな理由があれ国民を危険に晒し、多くの命を奪ったことに代わりはない。その被害はあなた方によって止められたのだ。どうか礼はできないだろうか? どんなことでも、私に……我が国にできることならやらせてくれ」
ロウドン王は頭を下げて懇願した。彼はかつての噂通りの国民想いの王に戻ったようだ。戦争によって多くの民の命が失われたことに心を痛めていた。
「そりゃあアンタの気持ちは分かるがよ、俺ァ政府の人間だ。仕事としてやったわけで感謝されるような立場じゃねぇさ。グランデュースの小僧達も同じだ」
「しかし……賠償金も政府が背負ってくれると言うではないか。私にできることはないのか?」
「……実は小僧から頼まれていてな。礼をしたいと言うのならオレからの質問に二つ答えてくれ」
「質問? ああ、私の知っていることなら惜しみなく話すが……」
ガラリネオは懐から一冊の日記を取り出した。それは執務室でミルアルトが見つけたものだ。国王に謁見するにあたり、できれば聞いてみてほしいと頼んでいた。
「この日記は二年前、アンタがカルテッド王子に操られる前まで書いていた日記だ。これに記されている“仮面の男”、グランデュースはその男と遭遇したことがあるかもしれないと言っていた。それに少女との二人組と書かれている。コレは今回の件と関係が?」
「ああ、あれは今でも覚えている。少女はルシファー、そして仮面の男はアルファと名乗っていた。あなたの想像通り歴史の破壊者だ」
ロウドン王は顔を暗くして話した。ルシファー、その名前は法帝であれば耳に穴が空くほど聞いている。ガラリネオは衝撃を受けつつも当然のことだと平静のまま尋ねた。
「奴らについて覚えていることは?」
「容姿から話すと……ルシファーは長髪の黒髪の少女だった。背丈はグランデュースの少年やルーシュ君と同じようなものだ。歳もそう変わらないようだったかな。それでも一目で見て分かるほど異質な魔力をしていた。アルファの方は……特別魔力が多いようにも感じなかったが、どこか不気味な雰囲気だった。しかしアレは見て分かるような異質さは感じなかった」
「……それで、“忘れられない”とは何かあったのか?」
「二人が来た翌日のことだ。彼らが私に“戦争を仕掛けろ”と伝えに来た。それを私は拒んだのだ。彼らは大人しく帰ったかと思ったら……この街はたった一日で火の海にされた。何もかもが破壊され……気づけば私はカルテッドに支配されていた。アイツは脅されたのか自ら下についたのか知らないが……」
ロウドン王は古い記憶を思い出しながら話していた。彼の顔色からその記憶が辛く苦しいものだということは容易に想像がついた。しかしその話を聞いてガラリネオは疑問に思うことがあった。
「街が破壊されたとは言うが……その割にはキレイに見えるぞ? 確かに相当の時間があっただろうが、街が崩壊したんじゃ復興も難しいだろ?」
「……アレは実に不可解だった。崩壊した街も城も、全てが元通りになったのだ。……直ったなどという次元ではなかった。まるで時間でも巻き戻ったように……全てが無かったことになった。記憶が曖昧でどちらがそうしたのかは分からないが……」
「……時間を止める力は聞いたことがある。なんでも時間の流れを切断してほんの一瞬生まれる亀裂に入っているだけで、世界全体に干渉しているわけではないらしい。というのもそんなことをするなら膨大なエネルギーが必要だとか。しかし時の逆行に関してはそうではない。それは世界干渉しているからだ。ユリハ様であっても極めて限定的な逆行しかできない」
「しかし事実なのだよ。もしかしたら巻き戻しではないかもしれないが……とにかく私の目にはそう映った」
ネフィル=ユリハの時の逆行、つまり“回帰魔法”は特定のものに対してしか発動しない。加えて元の状態に向かって回復するというものなので単純な時間の巻き戻しとも少し違う。どちらかといえば記憶している過去の状態への帰復だ。
「……まぁそれならいい。それともう一つ、奴らの目的はなんだ? 何か聞いてはいないか?」
「一応、国を支配すれば裏から操ることで自由に動けると話していたのを聞いた。ただ少しばかり興味深いことも……」
「なんだ?」
「いや、にわかには信じ難いのだが……なんでも華陽の宝を手に入れたいとか……」
「“金色の水晶”か? 詳しくは知らんが、アレは伝説ではないのか?」
「さぁ……。そもそもその伝説さえ知る者は少ない。調べれば得られぬ情報でもなかろうが……」
“金色の水晶”はそれほど有名な伝説ではない。そして当然、詳細などは誰も知らない。実在するというのなら、それを知っているのは華陽と呼ばれる国でも少ししかいないだろう。
しかし歴史の破壊者がそれを欲しているということはそれなりの価値があるということだ。
「まぁいい。華陽には知らせておこう。オレはもう帰るぞ。小僧達が帰りたがってるからな。三日もすれば俺の部下が来るハズだから頼れ」
「何から何まで……感謝する。二人にも伝えてくれ」
「それくらいの礼は受け取っておこう」
ガラリネオはそう言いながら退室した。そして客室に戻ってミルアルトとルーシュを回収して城を後にした。
来るときは彼の部下であるカナの転移術で入国した。帰りも同じように転移門を開いてもらい、ガラリネオの所有するビルへと一瞬で戻った。
「さて、今回のところは解散だ! お前達には助けられたからな! グランデュース! アリベル! お前達に助けが必要なときはこの俺様を頼れ! 借りは必ず返そう!」
「ええ、いざというときには……期待しています」
ミルアルトはガラリネオと別れを告げ、少ししてからそのまま聖都に戻った。転移門や魔導列車をいくつも利用し、帰ったのは翌日の昼間であった。
疲れは酷く溜まってはいたが、夜を過ごすと案外リフレッシュされていた。学園では霊明祭の最終日となっていたため、少しばかり休憩してから二人で回った。




