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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第五章 ロウドン
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第91話 金色の水晶(1)

 新暦6207年土の月29日、世界中に報せが届いた。それは近国と戦争を起こしていたロウドン王国の突然の敗北宣言だ。


 公表された内容は“第二王子の乱心により国王含む国の上層部が全て能力スキルによって呑まれていた”とのことだった。しかし真実はそれほど単純な話ではない。


 各国の上層部には中央政府より通達があり、歴史の破壊者(デスティニー)が関与しているということが伝えられた。当然、事情を詳しく知らない市民達からはそのようなことは納得し難いとの意見は少なくなかった。


「……まぁ分からんでもないな。戦争のために死んだ人の数というのは端数が生まれるほどだ。この国の民に限ってはお前は国民に寄り添ってくれる為政者と思われてるしな。まさか国王を狂わせた張本人だとは思うまい。理解したくない気持ちも当然だろう」


 オレは王城の地下牢獄に来ていた。戦闘後、オレ達はガラリネオさんの拠点に戻り療養していたのだが、早朝に兵士達がやってきたのだ。なんでも国王が礼をしたいとかなんとか。


 洗脳にかけられていた間の記憶は残っていたらしい。断ることでもないし話をしないわけにもいかないということで案内してもらったが、王と対面するのはガラリネオさんだけでいいと思ったのでオレはここに降りてきたのだ。


 ちなみにガラリネオさんが戦ったC72はさらに地下深くの魔障石でできた牢に拘束されているらしい。


 少しばかり不安だが、魔力を分散させる、魔障石よりもさらに強力な魔解結晶という鉱石でできた手錠や鎖で監禁しているから心配はいらないとのこと。実際ガラリネオさんが問題ないことを確認していたようだ。


「……新聞の情報を全て信じろという方が無理な話だ。僕は能力保持者スキルホルダーだと明言したことはないからね。能力スキルってのはそんな都合良く発現するようなものじゃないだろ?」


「今まで隠してたってか?」


「そんなわけないだろ。そもそも僕は今だって能力スキルなんか持ってないんだよ」


「はァ? お前『洗脳』使ってただろ?」


「アレはルシファー様から借りてただけだ」


 カルテッドは弱々しい声でそう話した。力を借りた? そんなことができるのか?能力スキルを与えるのは創造神様にのみ許された力のハズ……


 秩序を作り出すという力であればそんなことも可能なのか? ……歴史の破壊者(デスティニー)からの借り物ということは今はもう使えないのか。


「……しかしだ。そんなことはどうだっていい。それより僕が聞きたいのは、君、なぜ僕を生かした? なぜ殺さなかった?」


「なんだ、殺して欲しかったのか」


「そうじゃない。僕は君を殺そうとした。それになぜあれほど怒っていたのかは知らないが、僕が人を殺していたことにも怒っていただろ?」


「怒りに任せて人は殺さねぇよ。それに生きたまま捕まえられるほどお前が弱かっただけだ」


「そんなことが聞きたいんじゃない! どうせ僕は用済みなんだ! 与えられた『洗脳』の力、その繋がりを元に呪い殺される。どうせ死ねば何も残らない。だから死ぬ前に知れるものなら知っておきたい」


 ……つまりあれか。力を借りた代わりに命を預けていたのか。よくそんなことができるな。オレとしてはそっちの方が不思議でならない。


「そういうことなら安心しろ。その魔力の繋がりってのはオレがぶった斬っといた。アイツらがお前を感知するようなことはねぇし、殺されることもねぇよ。感謝しろよ? なんとなく不穏だったからついでに斬っただけだが、そのまま放置してりゃお前に力を貸したヤツを逆に探知できたんだからな。結果論ではあるが、実利を捨ててお前の命まで助けてやったんだ」


「なっ……!?だからなぜ! 君はそこまでする!?」


「一国の王子を殺しちゃいくらなんでもマズいだろ。それにオレは何もされてないからな。お前は生きてるべき人間だなんて思えないし、許すつもりもないが……オレが殺すのはお門違いってヤツだ」


「……たったそれだけの理由なのか? 結局死ぬなら誰が殺そうと、どう死のうとも同じだろう?」


「お前が本当にそう思ってるのならオレとは一生分かり合えねぇな。だが心のどこかでそうとは思ってねぇから理由が知りたかったんだろ?」


「……は? 何のことだ?」


「なんでもねぇよ。処遇は待ってるんだな。事実確認にゃまだ随分時間がかかるだろう」


 オレはそう残して地下を出た。あの男は大嫌いだし気に入らないが、どうにも放っておけないような危うさを感じる。危ういというよりはすでにアウトといったところだが……どうも何かが欠如しているような雰囲気だ。


 人として大切なものを失っている。ずっと昔からそうだったのか……あるいは母親を亡くしてアイツこそ狂ってしまったのか。


 どちらにせよ許すつもりはないが。

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