第08話 天現融合(1)
まえがき
あまりに説明が多く申し訳ないです……
オレは校長との話を終え、急いで授業に向かった。今日の授業は魔法戦闘学だ。今日は校内の訓練場で実技が行われるらしく、校長室からはある程度離れていたがなんとか間に合った。
魔法戦闘学の教師はオレ達の担任のランファ先生だ。先生は出欠を確認すると、早々に話を始めた。
「天獣や天人は、現世では防衛目的以外で力を振るうことができません。しかしその力を使うことはできます。これから皆さんに習得してもらうのは“天現融合”と呼ばれる技術ですが、これは召喚者と守護者の魂と魔力を結合させ、召喚者の力に守護者の力を上乗せすることができます」
「これの利点は当然、自身の力を飛躍的に向上させることですが、その他に魔力の共有、受ける損傷の分割、許可した範囲での記憶の共有などでしょうか」
「ただ天現融合も万能な技術とは言えません。二つの魂を一つの肉体で操ることになるので、肉体や精神の疲労は通常時の2倍にも3倍にもなります」
「加えて個人の能力にはそれぞれ限界点というものが存在するので、この技術は自身を磨けば磨くほどに力の上乗せは期待できないものとなります」
「特に召喚者が守護者の力を凌駕したら力の上乗せはなくなると考えてもらっていいのかと思います」
「はい! じゃあ先生や校長先生みたいな人達は天現融合? っていうのは使わないんですか?」
誰かが先生に質問をした。それに対して先生は“まだ説明の途中ですよ”と優しく伝えて話を続けた。
「確かに私や十法帝の方達のようになったら天現融合による強化はなかなか望めませんが、全く使わないということはありません。天現融合に慣れ始めると、疲労も少なくなるんですよ」
「つまり器が強化されるんです。そうなれば魔力を共有できる分むしろ長期戦をすることができます。それに天現融合を完全に操ることができるようになれば、損傷に加えて疲労をも分割することができるので、習得すればいつまでも利用できる技術ですよ」
「習得するのはなかなかに困難ですし、守護者との力量が離れていればいるほど更に困難になりますが……まぁ頑張ってみてください! コツは守護者の存在を実感することです! 魂や魔力を感じてみるんです!」
具体的な習得方法は教えられないままに練習が始まった。なんでも魂や魔力を繋げる感覚は言葉で説明できるようなことでもないし、個人差もあるのだとか。
一応先生は回ってアドバイスをしたりもしているけれど、天現融合という技術自体がそう簡単に習得できるものでもない。ほんの数分で習得できる者もいれば、何年もかけてやっと感覚を掴む者もいるらしい。
……オレは守護者がセリアということもありだいぶ難航しそうな予感がする。座りながらオレの外側に集中していると、先生が話しかけてきた。
「ミルアルト君は大変でしょうね。まずは魂を感じられるようになられては? 守護者の魔力を辿れば何かを感じられるかもしれませんよ」
「うーん……。そう言われましてもなかなか……魔力の感知でさえ難しいもので」
「君の守護者は天人でしょう? 声をよく聞きなさい。彼らは肉体から声を出しているわけではないのですよ」
「声……ですか……」
先生は全ては言わずに他の生徒のところへ行った。確かに天人は仮の肉体を得ているとはいえ、その肉体は人体構造を完璧に再現してはいない。
つまりその声が魂を感じるためのきっかけになり得るということか……。声……声ね……
(ミラ? 自由に話しかけていいってこと?)
先生が離れたところを確認し、セリアはオレの脳内に語りかけてきた。いつも急だからびっくりしてしまう。
(………別にセリアはいつも自由に話しかけてるけど……まぁそうだな。せっかくだから話したいことがあるなら話しといてくれ)
(じゃあさ、良いニュースと悪いニュースがあるんだけど、どっちから聞く?)
………なんか思ってたのと違う話題が出てきたな。もっとなんか雑談とか……てっきり昔のことでも教えてくれるのかと思ったのに。
(じゃあまぁ……悪いニュースから)
(あのね、そもそも魔力って質があるんだけど……まぁ質って一言で言っても色んな見方があるんだけどね、とりあえず属性について話すわね。人はそれぞれ魔力を持ってるわけだけど……例えば私は火属性とか、他の人でも風とか水とか、色んな属性のうち絶対に何かに分類されるの。強弱はあるから実際世の中には無属性とか言われる人もいるんだけど、それはただ属性が弱いからそうとしか捉えられないのね)
(無属性は属性がどこにも偏ってないんだと思ってたけど……まぁそれくらいは知ってるよ。同属性の魔法は発動しやすかったり能力に影響があったりするんだろ?)
(そんなところね。それで大体の人は元素属性なんだけど、中には固有属性って呼ばれる独自の属性を持ってる人もいるの。それがまぁ今の時代だと見分けづらいんだろうけどね)
(ほう……ほう?)
(つまりミラの魔力はその固有属性なの。君の能力って魔力や魔法をも斬る力なんでしょ? それってどっちかというと魔力を分解して飲み込むっていうミラの魔力の特性で、その魔力を効率良く利用して剣に纏うっていうのがミラの能力の本質ってわけ。言うなれば反属性ってとこかな)
へぇ……。面白い話を聞いたな。……? 何が悪いニュースなんだ? 今の話を聞いても別に悪いところはなかった気がするが……。
(あんま分かってないみたいだから言うけど、つまり今のミラの魔力じゃあ私の魔力と結合はできないってこと。一応魔力の質としては私の方が圧倒的に上だし、私の魔力が飲まれるなんてことはないんだけどね。でも私の魔力が抗ってるようじゃいいバランスは保てないし。当分は魔力操作を精密、正確にする特訓をしなきゃね。)
(んなッ……!?)
なんてこった……! ただでさえ天現融合には時間がかかりそうだってのに、オレはそもそも土台にすら立ててなかったってことか……。
……どんな良いニュースでも取り戻せないぞ……。いっそ聞かなかった方が幸せだったかもしれない。




