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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第五章 ロウドン
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第88話 ロウドンの戦闘(1)

 ガラリネオは青く冷たい魔力を身に纏い、対するC72は黄色く激しい魔力を纏った。互いの魔力がバチバチと音を鳴らしながら衝突し、嵐のように渦巻き、石壁を破壊した。そして軽い準備体操をした後、突進しながら拳を交わらせた。


「“海帝”ガリヌラ=ガラリネオ……魔法師と聞いていたが、思っていたのと違うな?」


「俺こそ歴史の破壊者(デスティニー)は強く厄介だと聞いてたんだがな。どうやらそこまで警戒すべきでもないらしい」


 魔法師は近距離戦闘にすこぶる弱い。それは魔法師にとって身体能力や身体強化の魔法を鍛えることは効率が悪いからだ。だから彼らは基本的に後方から高火力の大魔法を発動することが多い。


 手練れの魔法師であれば近接でも対処できることが多いが、それは何かしらの魔法で受けているだけだ。真正面から殴り合う魔法師など存在しない。ただこの男を除いて。


「魔法師がそんなにデケェのはどうなんだ? もっと魔法の研鑽に力を入れた方がいいと思うがな?」


「……そもそもお前、何をもって戦士となり、何をもって魔法師となるのか知ってんのか?」


「知らねぇわけねぇだろ。舐めてんのか?」


「おぉ、怖ぇ怖ぇ。情緒は大丈夫か? テメェこの野郎」


 戦士は魔力を纏う能力に長けている者達で、魔法師は魔力を放出する能力に長けている。


 放出することは比較的簡単なため、魔法師に求められるレベルは戦士のそれと比べて極めて高い。実際、魔法系能力(スキル)を持っている者がほとんどだ。


 能力スキルを伸ばす方が能力スキルに影響しない魔法を鍛えるよりもよっぽど簡単で強力であるため、肉体を鍛えることもほとんどしないというわけだ。


「俺様はなァ、生まれつき身体が頑丈なのよ。能力スキルは確かに魔法系だが、俺様にとっちゃぁ肉体を鍛えるのは効率的に強くなる方法だったってワケよ!」

「『海龍装兵マリンヴェール』!」


 ガラリネオは渦潮を身に纏い、甲冑のように身を包んだ。青い鎧はところどころ白い波を立てており、流動的であった。


 流動的であるからこそ、その鎧は鉄よりもよっぽど硬く防御力が高い。加えて海流によって破壊力も上昇させる技だ。


「器用貧乏か? 格闘でこの俺と戦おうなんざ思っちゃいねぇよな?」


「むしろお前、この俺様に勝てるとでも思ってんのか?」


「くっくっ……。さぁ、始めよう。何を言おうと勝つのはどちらか一人だ」


 海のような深く重い魔力と、雷のような鋭く速い魔力が衝突した。街には雷鳴が轟き、海の匂いが押し寄せた。


 拳と拳が交わり合い、その衝撃で両者吹き飛ばされ、蹴りが交差すれば弾けるような音と共に周囲の瓦礫と人影が消し飛んだ。


***


 カルテッドの突きが頬や腹を何度も掠め、浅い切り傷がいくつもできた。血の流れる感覚や痛みに気を取られて少しずつ集中力が削がれる。


 そして当然体力もすり減っていくわけだが、それは相手も同じだ。しかしオレの刃は斬ろうとすると減速してしまう。どれだけ斬ろうと覚悟しても、心のどこかで何かが邪魔をする。


「……千日手だな。だがそれはつまり僕が優勢ってことさ」


「どうだかな。オレはいつでもその首を落とせるんだぞ?」


「いいや、無理だね。確かに君は強いが、僕には敵わないよ。戦えない奴は強くても無意味だ」


 ……何か知っているような口調だな。実力では劣っていると自覚しつつもこちらを見下しているヤツはどうにもムカつくな。


「まともに戦えなくとも勝つのはオレだ。温室育ちのモヤシ野郎にどうして負けるよ?」


「強がりもここまで来ると滑稽だな。しかしまぁ、彼らが言っていたことは本当らしい。詳しくは知らんが……グランデュース=ミルアルトはとても戦えるような精神ではないと。可哀想になぁ! 強いくせに負けるなんてどんな屈辱だ!?」


「ぐッ……!」


 強力な突きがオレの肩を貫いた。それだけなら傷は深くとも小さく済むというのに、引き抜く際に振り下ろすせいで肉と骨が切り裂かれる。


 ……異様に速く感じるのはオレが遅くなったからか? ヤツの能力スキルは『洗脳』、つまりそれから身を守るためにオレは常に魔力を消費している状態なのだろう。そのせいで少しずつ身体強化が弱くなっていっている。


「なんだお前? オレが不調だから勝てるとでも言いてぇのか?」


「だから? どこか間違っている?」


「アーサー=ベルドットがなぜ人類最強と呼ばれているか、分かるか?」


「急になんだ?」


「この世の誰も、彼より弱いからだ。決闘タイマンについても同じだ。相性や体調コンディションなんざ二の次だ。勝負ここは“強さ”が物を言う世界だ。オレが弱いんじゃなければ、勝つのはオレさ」


「……なるほど、なら君は弱い。僕が勝つのだからな」

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