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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第五章 ロウドン
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第86話 異常者(2)

 何かに刺された。が、そんなものはただ一つだろう。今そんな行動を取る者はソイツだけだ。


「しかし賢さが足りなかったかな? 警戒心が足りないよ」


「くッ……!」


「ミラ!!」


 細剣レイピアか……! すぐに剣を身体から引き抜き、傷口を押さえて片膝をついた。心臓……はなんとか無事か。


 しかし剣を抜く際にその剣を振られたせいで貫通した傷口が広がってしまった。心臓が傷つかなかったのはセリアが逸らしてくれたからか。魔障石のせいで実体化できないだろうに、よくやってくれている。


「覚悟は……あるんだろうな……?」


「覚悟が必要かい? 死ぬのは君だ」


「……!?」


「力が入らないだろう? ほらッ!!」


「貴様ッ……!!」


 オレは一旦魔力を打ち出して距離を取ろうとしたが、それができずにそのまま顔を蹴飛ばされた。頭を石壁にぶつけ、鼻の骨が折れて血が溢れてきた。


 壁は崩壊したが……一体どれほどの力で蹴りやがったのか……。そんなオレの様子を見て頭に血を上らせたルーシュがカルテッドに斬りかかろうとすると、彼は片手で受け止めた。


 そんな力があるようにも見えないが……違うな。ルーシュの力が落ちている。


「フゥー……!! カルテッド……! ミラにそれ以上手をだすな! さもなくば私が首を刎ねてやる!」


「よしてくれ。僕はまだやらなければならないことがあるんだ」


「がッ……ああ……。げほっ…げほっ……。ルーシュ、落ち着け。この程度で死ぬオレじゃない。……ここは危険だな……」


「頑丈だな。グランデュースの……!」


 少しばかり頭を抑えて痛みを落ち着かせてから、カルテッドの頭を掴んで城の外へと放り投げた。壊れかけの壁を突き破りながら投げ出された彼を見ながら、オレは速やかに結界を展開した。


「あぁ……。あの部屋は何かが充満してたな。オレとルーシュが力を使えなかったのは、“何か”……魔障石の粒子でも飛ばしてたのか?」


「……オレの力は『洗脳』……その霧に魔障石を混ぜてやったんだが………。なぜお前達には『洗脳』が効かない? ルシファー様から賜った力だぞ!」


「ルシファーだと?」


 やはり歴史の破壊者(デスティニー)が、しかもルシファーが関わっていたか。しかし“賜った”だと?


 能力スキルを与えるのは神の特権……ルシファーにできることではないハズだ。……いや、それはこの際どうでもいいな。その力を使って国王や第一王子を利用しているのだろう。


 ただその力がオレに通用しないのは反属性の魔力のせいだろう。ルーシュに効かないのは……まぁルーシュだからか。


「ルーシュ……コイツはオレが対応する。君は好きにしてくれ」


「………なら邪魔が入らないように守っておこうかな。危なくなったら助けに入るよ」


「ああ、よろしく」


 ルーシュが気を利かせてくれたのか、結界を補強するように円形に大樹が生えてきた。こうなればそう簡単に誰も入ってこない上にカルテッドに逃げられることもないだろう。


 大半の兵士達はガラリネオさんが引きつけてくれているから残りは任せても問題ない。この国の騎士団長は七星級の戦士だと聞いたことがあるが、ルーシュがいるなら誰が来ても止めてくれるだろう。オレは安心してコイツを斬ることができる。


「ウチには今、C72がいるぞ? みんな殺される。いいのか? 僕に構っていて……」


「誰も死なんさ。お前はオレに斬られることだけを恐れておけ。まぁ、恐れたところで変わらないがな」


 オレは刀を抜いて切先をカルテッドに向けた。殺すべきではないだろうな。ヤツの能力スキルはオレには効かない。生け捕りにするのもそう難しくはないだろう。


「……貴様……! 王族たるこの僕に! 刃を向けるとは何事だ!」


「……お前こそ勘違いしちゃいねぇか? 先に剣を向けたのはそっちだ。グランデュースに剣を向ければどうなるかなんざ子どもでも知ってるぞ」

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