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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第四章 イスダン迷宮
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第78話 “海帝”ガラリネオ(2)

 放課後でよかった。そうじゃなかったら生徒達で溢れて到着が遅れていただろう。


「……先生……ルーシュは……」


「ああ、やっぱり来たのか。すぐそこにいるよ。……私は用があるからこの部屋は若者達に任せようかな。仲直りするんだよ」


 そう言ってリュウラ先生は保健室を退室した。気を利かせてくれたのか。ありがたいな。二人きりでちゃんと話したかったから。


「ルーシュ……?」


「……さっきはごめんね……ミラの優しさだったのに言い過ぎた……」


「謝んないでよ。オレの方こそルーシュの気持ちを無視してたんだ。オレがルーシュの優しさに甘えてたんだよ」


 オレはルーシュの寝転がっているベッドに座った。ルーシュもそれを見て、上半身を起こして話す姿勢になってくれた。


「まずはハッキリと言っておこう。オレはたぶん、ルーシュにどれだけ止められても無茶をやめようとは思わない。もちろん無茶にならないように極力努力するけどね」


「うん……」


「それでいてルーシュには無茶をしないでほしい。平穏に、何事もなく生きていてほしいって思う」


「…………うん。……でもミラが危険を冒すなら私はハラハラしちゃうよ。平穏になんてムリ」


 ルーシュは少しだけ元気を取り戻したように話した。やっぱりオレはルーシュには安全に生きていてほしい。そのためならオレが危険な目に遭ったって構わないと思っている。


 けれどそれはルーシュも同じなのだろう。


「ルーシュがロウドンに一緒に来たいっていうならできるだけオレは止めたい。でも止める権利がオレにあるわけじゃない」


「じゃあ行きたい! いや、行く! 私も!」


「……ならガラリネオさんに掛け合ってみよう。それで断られたときは流石に諦めてくれ」


「うん! それでいい!」


「じゃあ生徒会に戻ろう。みんな心配してるよ」


「うん!」


 オレはルーシュの手を取って生徒会室に戻った。ガラリネオさんと直接の連絡は取れないから校長に頼むか。なんてお願いすればいいかは……まぁなんとかなるだろう。


「しかしミルアルト君がいなくなると……想定していたより忙しくなるかもな。一人分の人手が減ってしまうのだから」


 生徒会室に戻ると、メンバーが全員揃っていた。今オレ達が話していたのは霊明祭における生徒会の仕事についてだ。


 クラスやサークルによっては出し物をするため、“霊明武会”の運営に加えてそれらの予算を決めなければならない。予算はある程度決められてはいるものの、余りや過剰な分も一旦は計算する必要がある。


「……? 私が行くなら二人分でしょ?」


「まさか。ルーシュはもともと戦力外だろ」


「……え?」


「当日はともかくオレはやれるだけの手伝いはするつもりだぞ?面倒臭いけど表作りとか」


「法帝との任務があるのに疲れを残されては大変だろ。手伝いは嬉しいが……君がいなくなる前の引き継ぎなどを考えると最初から任せない方が楽だよ」


「そんなもんか。……じゃあサポートに徹することにするよ」


 細かい仕事の調整のため、一時間ほど話してから解散になった。みんなは寮に戻り、オレは校長室に向かった。


 校長はまだ残っていたのでガラリネオさんとの任務にルーシュも連れて行きたいと伝えた……が、それ自体は了承されたもののガラリネオさんになんて連絡しようかと考えていた。


「……面白くなりそうだからと伝えればいいのでは?」


「……確かに。分かった。ルーシュさんを連れて行くのは私が許可しよう。ガラリネオにも伝えておこう」


「ありがとうございます。それと、ルーシュとジンリューに歴史の破壊者(デスティニー)について教える許可を頂きたいです。ジンリューにおいては気づいている上で気づいていないフリをしていますし」


「……構わないよ。ルーシュさんは今回触れるかもしれないし、ジンリュー君は後任になるかもしれないからね」


「後任?」


聖都魔法学園ここの先代校長、“暴帝”カナレア=バンドールさんのね。あの人はもうお歳だから引退しようとしているのさ。その際知っていることが多い方がジンリュー君も楽だろう。ただ伝えるのは私がしよう」


「ええ、もちろん。オレは正しい情報を伝えられないかもしれませんから」


 しかし……となるとジンリューは今最も八星級に近い七星級ということか。まぁあんなに強いヤツが他にいても困るが……案外世界は狭いものだな。


 校長との話も終え、その日は寮に戻った。後日校長から知らされたが、ルーシュの件は快諾されたらしい。一週間ほど生徒会の仕事は手伝い、出発までの残り数日は休ませてもらった。


 ルーシュに関してはジンリューの言う通りほとんど戦力になってはいなかったが、他のメンバーだけで充分なほどに順調に仕事が回っていた。

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