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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第四章 イスダン迷宮
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第77話 “海帝”ガラリネオ(1)

「来週27日から4日間、ガラリネオがロウドンに行くらしいが、君もついて行くのだろう? 準備をしておくといいよ。場所はあの男のビルらしいけど……かなり遠いからね。どこの転移門を使うかよく調べておくといいよ」


「……分かりました。ありがとうございます」


 校長室に呼び出されたオレは来週末の話をされた。十法帝会議のときにガラリネオさんと約束していた件か。


 あの人は極めて自分勝手で一週間以上前の段階で連絡が入るのはだいぶ良心的だという話だが……なんてこった。まさかこんなピンポイントで予定が入ってしまうとは……。


 4日間なら霊明祭の最終日にはギリギリで帰ってこれるか? ……最悪後夜祭になるな。まぁ後夜祭だけでも回れるならマシではあろうが……ルーシュには何と言ったものか……。


「ほんっとーに申し訳ございません!」


「はぁ……」


「……?」


 放課後、生徒会室に来たオレはルーシュに対して深く土下座した。昨日の今日でこんな状況だと許されないかもしれない。


 だが報告が遅れれば遅れるほどその分許されないだろう。オレは他数名に見られるという恥を忍んで謝罪した。


「……会長? あの二人何かあったの? 痴話喧嘩?」


「茶化してやるな。死人が出かねん」


 オレは姿勢を崩さないまま事情を一から説明した。本祭最終日には参加できる可能性もあるが、万が一のことを考えて後夜祭にしか間に合わないと伝えておいた。


「……まぁ予定が入らなければって約束だったし、法帝様からのお誘いなら仕方ないとは思うんだけどさ……。ミルアルト君、私は今非常に怒っています。理由は分かりますか?」


「……ロウドンだからでしょうか?」


「分かってるじゃん。……なんでわざわざ戦時中の国に行くの? まさか観光だなんて言うわけじゃないでしょ?」


「いやまぁ……ちょっとした調査の手伝いといいますか……別に危険なことをする予定はないんですよ……?」


「戦争してる国が安全とは言えないでしょ」


「まったく……おっしゃる通りで……」


 マズい……ルーシュが一番怒ってるのはそこだったか……。まぁ考えてみれば昨日のパニックのせいで心配をかけてしまっているし、それ以前に大洞窟に行ってからは常にオレの危機に対して敏感になっているのだろう。


「……止めても無駄なのは分かってるけど……」


「オレだって危険を冒すのが趣味ってわけじゃないから……そんなに心配していただかなくてもですね……」


「なら私も連れてってよ。ミラだけ行かせても危ないもん」


「……それはダメだ。ルーシュは連れていけない」


 歴史の破壊者(デスティニー)と衝突する可能性を考慮しなくても、ロウドンは戦争中の国だ。確実に何かしらの形で戦争に触れることになる。


 危険性で考えるならオレよりも強いルーシュを案ずる資格はオレにはないが、戦争に触れて辛い記憶を思い出す可能性がある以上、彼女を連れて行くことはできない。


 たとえガラリネオさんに頼まれてもそれだけはオレは拒否をする。


「……それは戦争中だから……? 私のことを心配でもしてるの?」


「……」


「ふざけないでよ! 私だって我慢してミラの無茶を認めてるんだよ? 今のミラが何か大変だって分かった上で行くのを止めてないんだよ? 私だって子供じゃないんだしさ! 昔の辛い記憶くらいなんでもないよ! 前は君の無茶を認めようって思ってたけど……やっぱり私の知らないところでミラが苦しんでる方がよっぽど辛いんだよ……!」


 ルーシュは少し呼吸を整えてからボソッと“ごめんね。”とだけ言って駆け足で部屋を出てしまった。


 参ったな……オレがガキだった。自分のことばかり考えて……結局ルーシュのためだと思ってたことも全部オレのためじゃないか……。彼女を悲しませて、泣かせただけじゃないか……


「あの……ルーシュさんが普段と違う雰囲気で出ていったけど……何かあったのか?」


「な、なんかすごい雰囲気になっちゃった……。ルーシュちゃんの方はウチが見てこようか?」


 ちょうど今カミュールがこの部屋にやってきて、一部始終を見ていたミライアさんが事の深刻さを考えて第一に動こうとした。


「……やめておけ。アイツは普段からふざけた奴だが、あんなに取り乱した様子は見たことがない。君が行ってどうなる?」


「うーん……」


「君もそう思うんだろう?」


「……そうだな。ルーシュは普段どこに……あぁ、いや、いいや。心当たりがある」


 屋上か教室か……中庭か。誰でも行けるようなところはいくらでもあるが、ルーシュの性格からしてこういうときに行く所はだいたい見当がつく。恐らく……いや、間違いなくあそこだろう。


「ミルアルト、それを正解だというとまた違うのかもしれないが、少なくとも君の考えは間違ったものでもない。ただ食い違いをしただけだ。君達の過去なんて俺は何も知らないが、ちゃんと話し合いをすればいい。遠慮するようなことでもないんだろう?」


「……ああ。悪いな」


 オレはジンリューに背中を押されるように部屋を出た。全力疾走にはならない程度に駆け足で廊下を走り、目的の部屋まで向かった。

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