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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第四章 イスダン迷宮
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第76話 魔眼(3)

「ねぇ、ミラ。霊明祭一緒に回ろうよ」


 霊明祭は来週末だったか。学外学習もあったというのに、なかなかのハードスケジュールだな。ただ夏休み前はそれが最後のイベントだから気は楽か。


「それはいいけど……生徒会の仕事が忙しいだろ? 回れる時間がどれだけ取れるか……」


「仕事はジンリューに任せておけばいいよ! 去年も準備期間が少し大変だっただけで本番は逃げても怒られなかったから!」


「それは………まぁいいや。どうしても外せない予定でも入らない限りはいいよ。一緒に回ろう」


「やった!」


 話を終えてオレとルーシュは一緒に寮へと戻り、そこで別れて自分の部屋に戻った。ピンポイントで予定が入ることもまぁないだろう。


 ベッドに座り込むと一日の疲れがどっと流れてきた。異様に疲れたな。……そりゃそうか。色々とあったからな。


「ミラ? 疲れてるところ悪いんだけど、刀を持ってくれる?」


「……嘘だろ? もう動けねぇよ……」


「いや、動いて。別に特訓をしようって話じゃないから」


「……特訓じゃないならまぁ……」


 セリアの圧のある説得に負け、オレは渋々指輪を八雲に戻した。オレのストレスでも食って腹一杯にでもなったのか、今は極めて大人しいな。鞘から刀を抜き、白い刃を現した。


「じゃ、能力スキルを全開にできる?」


「……ここ部屋なんすけど……」


「大丈夫よ。結界は張ってるから。ちなみに君の魔力でも壊れないように強固にしてるから何の心配もいらないよ」


「まぁ……セリアが言うなら……」


 そうしてオレは能力スキルを全開放した。刀に魔力を注ぎ、ミシミシと唸り始めた。いや、そんな音を出しているのは結界の方か?


 まぁ何にせよ、心配する必要はない。セリアが大丈夫と言うのなら大丈夫だ。


 オレは何も気にかけず力を振り絞ればいい。ただ困ったことに……やはりというか何というか……刀をしっかり握ることができない。


 恐怖しているせいで上手く力が入らない。今までの比にならないほど手が震える。


「うーん……。やっぱりね」


「……ああ、こんな様子じゃまともに戦えねぇ。リュウラ先生からもらった薬のおかげでだいぶマシになってると思うんだけど……」


「いや、そうじゃなくて……まぁそれもそうなんだけど……」


「ん? 違うのか?」


「まぁ自分じゃなかなか気づかないとも思うけど、能力スキルを使ってるときだけ瞳の色が赤くなってるのよ」


 瞳の色……? 言われてみれば目が熱いというかなんというか……まぁ少し違和感があるな。鏡を見てみると確かに赤い瞳になっていた。


「……これが何か?」


「まず一つは能力スキルの熟練度が上がったってところかな。昇華すると見た目が変わることもあるんだけど、少しそれに近づいたってことね」


「……ならもう一つは?」


「たぶん開眼した魔眼に接触したせいでミラのも共鳴したんだと思う。もうちょっと仕上げたらちゃんと開眼するんじゃないかな?」


 魔眼に接触したというと……No.6と仮面の男か。アイツらとの戦闘は必ずしも悪いことばかりではなかったということか? ……ん?


「“オレのも”ってのはどういう……?」


「ミラも魔眼を持ってるって話よ。いつからその素質を持っていたかは分からないけど、私と同じ『高貴なる魔眼(ルミナス・イヴァン)』を開眼する可能性があるね。たぶん私を召喚した影響もあるのかな?」


「オレが? ……セリアも魔眼持ちなのか?」


「あれ? 言ってなかったっけ? まぁ私の場合はエストの魔眼に影響されたらしいんだけど……ミラの場合は私か歴史の破壊者(デスティニー)かな」


「へぇ……。魔眼って便利なもんなのか?」


「そうね。能力スキル自体が魔眼に組み込まれている場合を除けば魔眼っていうのは基本的には“見る力”だから。普通の人には見えないものまで見えたり、魔力の操作コントロールが楽になったり」


 No.6が王の力だなんだと騒いでいたが、案外大層なものでもないんだな。いや、程度によっては圧倒的に強いのは事実だが、あくまで力の底上げのようなものだ。


 だがオレの戦い方からするに非常に強力だろう。魔力制御力が上がったり魔力消費を抑えられればそれは単純に戦闘能力の向上に繋がる。


「まぁ今日は確認したかっただけだからもう寝なさい。たぶんまたうなされるだろうから早く寝ておかないと休憩もできないよ?」


「……そうだな。疲れたしもう寝るよ」


 オレは薬を飲んでベッドに入った。薬のおかげで昨日よりはマシになっていたが、今日もひどい夢を見た。


 夜中に何度も何度も起こされ、その度に息ができなくなるほど荒れた呼吸になった。朝起きて、どうしようもないこの不安感をセリアが癒してくれていなければ、夢に殺されていたかもしれない。


 これが治るのはまだずっと先のこととなりそうだと、汗でびしょ濡れになった服を見ればすぐに分かった。

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