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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第四章 イスダン迷宮
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第73話 圧倒的存在(3)

 どうも日が暮れたようだ。校長やルーシュに話をするのは明日の朝でいいかな。……明日は一応休日だから会えるかどうか……まぁ急ぐ必要もないか。


「さて……何を話せばいいかな……」


 翌日、オレは校長室の前まで赴いていた。ジンリューが軽くは話しているらしいが……歴史の破壊者(デスティニー)についてはオレから話さないといけないからな……


 仮面の男に関してはどう話したものか……まぁいいか!


「失礼します」


「おお、待っていたよ! 入りなさい!」


 扉をノックすると校長の声が聞こえた。久しぶりに聞く声だな。……言うほど久しぶりか? どうも最近聞いたような気もするが……いつの記憶だろうか。……気のせいか。


 部屋に入り、椅子に座ってから向かい合った。まずはNo.6のことから始めるか。


「まずはそうですね……」


 オレはNo.6との戦いのことを話した。そしてその中で得た情報として、“王”と呼ばれるのがルシファーで正しいだろうということ、そして歴史の破壊者(デスティニー)はそのルシファーに造られた者達だということ。


 気づいてはいるだろうが、一応オレが七階層に踏み込んだことは伏せて可能な限り細かく説明した。


「つまり、現れたNo.6と魔物達を現地の冒険者と協力して討伐したということでいいかね?」


「結果を言えばそうですね。生け捕りにできるほど余裕はなかったので殺してしまいましたが、一応髪の毛は取ったので渡しておきますね」


「ああ、ありがとう。政府の研究所に送っておこう。殺しに関しては大丈夫だったかい?」


「快いものではありませんでしたが……相手も相当の殺気だったので特には。やっぱり魔物を斬るのとはまた違った感じでしたね」


「立場的に勧めるべきでもないのかもしれないけど、その程度なら戦いの才はありそうだ。ところでそのNo.6っていうのはどの程度の強さだった?」


 まぁ……当然の質問だな。No.6はNo.8よりも弱かった。確か番号は強さに関係ないと言っていたか。……いや、まずは力について話すべきか。


「結論から言うと平均的な七星級の下位といったところでしょうか。能力スキルは瞬間移動を扱うもので、召喚魔法を使っていましたがそれは能力スキルには関係なさそうでしたね。間違いなくNo.8ほど強くはありません」


「瞬間移動……となると固有能力者ネームドではなさそうだね。そして番号と強さは関係ないか。弱くはないが……」


 固有能力者ネームドとは、グランデュース家などの継承能力者インヘリットとはまた違った能力保持者スキルホルダーだ。


 血の繋がりとは関係ない生まれながらの能力スキル持ち、それはつまり生まれたときから創造神の寵愛を受けているということだ。親や祖先が能力保持者スキルホルダーであれば固有能力者ネームドとして生まれる可能性も高いが、継承能力者インヘリットと違うのは受け継がれる力ではないということ。


 ルーシュやジンリューがその例だ。単に能力保持者スキルホルダーと呼ばれる一般的な能力スキルよりは強力なことが多い。


 No.6が固有能力者ネームドではないということはルシファーは望んで能力スキルを与えることはできないということだろうか……


「加えて言うと魔眼を持っていましたね。詳しくはないのでどういった効果があったのかは分かりませんが」


「魔眼か……。目を起点に発動するのか能力スキル効果の底上げといったところか……。よく勝てたね。正直私でも手こずるだろう」


「ええ、それと……正直信じ難いものの重要性の高いと思われることが……」


「……聞こう。アスダルト、メモを取れ」


「はい」


 校長が指示をすると、後ろに立っていた副校長がメモ帳を取り出した。そういう態度を取るほどの情報では……いや、それほどの情報か。


「まずNo.6との戦いの後、帰るところで黒い仮面の男と遭遇しました。言動からするにヤツも歴史の破壊者(デスティニー)でしょうが、オレはあの男の魔眼にやられて恐らく幻術にかけられていました」


「恐らく?」


「その間の記憶を失っているため断言はできません。ただ間違いないかと」


「……それで、問題なのはどの辺りだね?」


「仮面の男の強さです。あのときはジンリューもいましたが、とても敵う強さではありませんでした。セリア曰く彼女やベルドットさんでも足元に及ばないと」


「ほう……はぁ!?何……何!?」


「それについては私が話すわ」


 そう言って実体化したセリアが現れた。今回の件はオレがちゃんと話すべきではあろうが……こればっかりはセリアの方が分かりやすいか。


「セルセリア様……! すみません。少々取り乱しました……が、今の話は?」


「事実よ。天地がひっくり返っても私やベルドット君で勝てる相手じゃない」


「……しかしその男とベルドットの実力を実際に見たわけではないのでしょう? 言い切れるものなので?」


「確かに実力の上限は知らないけど、アレには勝てないわ。次元が違うもの。どう言っても納得はし難いでしょうけどね」


「……いえ、あなたがそこまで言うならそうなのでしょう。…………ならば全ての法帝で戦えばどうでしょう?」


「それでも勝てるとは断言できないわ。足止めは充分できるだろうけど、殺せるとは言えない」


 ……そんなに強いのか? 本当なら次元が違うとかいう話でもないじゃないか。勝てるか勝てないかではなく、どうやって戦わないかを考えるレベルだろ。


「……そんな化け物がいるなら敵いませんよ」


「打つ手がないというわけでもないわ。こればっかりは深くは言えないけど、そんな化け物がいるからこそどうにかなる」


「……よく分かりませんが分かりました。そう焦らずにいましょう」


 セリアの言う“人”というのが誰なのかは分からないが、平気と言うのなら平気なのだろう。……いや、平気とは言っていないのか。


「それでここからが重要なんですが、No.6は“番外”を除いた歴史の破壊者(デスティニー)には序列がないと言っていました。それはつまり“番外”という圧倒的な存在がいるということでしょう。そして恐らくその“番外”というのが仮面の男だと思われます」


「待て待て待て……。つまりそんな化け物が何人もいると? 加えてルシファーだろう? ……とりあえずその話は法帝達に伝えておくよ。報告ご苦労だったね。少し頭を冷やさせてくれ」


「ええ、では失礼します」


 とりあえず報告すべきことは以上だな。校長も流石に頭を悩ませていたが、セリアが自信を持っているから胃が痛くなることもないだろう。オレは部屋を出て寮へと向かった。

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