第72話 圧倒的存在(2)
No.6との戦いでか? それとも幻術で何かされた影響か……? まぁ何にしてもこればかりは良いことだな。
翌日の朝を迎えるまで、オレはベッドの中で回復に専念していた。異常な精神疲労だけは大して回復しなかったが、傷はほとんどキレイになくなった。
昼になったら街を出なければならない。先生に渡すお土産の兎饅頭は買ったから……あとはギルドの方か。オレは朝食を摂ってからギルドに向かった。
「あ! グランデュースさん! いらしたんですね!」
「ん? ……ああ、あのときの」
ギルドに到着すると、受付の方からオレを呼ぶ声がした。一瞬は誰かと思ったが、あの人はこの街に来たときに話していた人だ。名前は知らないが顔は覚えている。
「お願いされていたお米、五キロ用意してありますよ!」
「ありがとうございます。買いますね」
「……どこかお元気のないようにも見えますが、身体の調子でも悪いので? 良かったら回復薬のおまけもしておきますよ?」
「? ああ、すみません。別に不調ということでもないんです。ありがたいですが、お気遣いをもらうほどではありませんよ」
「そうですか! いえいえ、それなら良いんです! もう街を出られるんですよね? お探しだった兎饅頭は買われましたか?」
「ええ、もちろん。教えてもらった店で買いましたよ」
「良かったです! ではまた気が向いたらいらしてくださいね! いつでも歓迎しますから!」
オレは会計をしてから米袋をセリアから借りた空間収納に入れた。
……この街でやり残したことはないかな? まぁあったとすればまたいつか帰ってくればいい。オレは受付に軽く礼を言ってからギルドを出た。
「おい! 小僧!」
「?」
ギルドを出てみんなのところへ向かおうとしたとき、男の声がオレを呼んだ。馴染みがあるというほどでもないが、よく覚えている声だ。
「……ロイドじゃねぇか。生きてて良かった」
「お前こそな。……ありがとう! お前のおかげで俺は自分を見つけられた!」
「感謝されるようなことはしてねぇよ。こっちこそ刀をありがとうな。……酒に溺れて死ぬんじゃねぇぞ」
「ああ! いつかまた会おう! そんときは飯でも奢ってやる!」
この街を心配する必要もなさそうだな。後腐れなく発つことができる。余裕ができたら遊びにこようかな。
電車に乗ると、例のごとくすぐ隣にはジンリューが座った。他のみんなはすぐに寝てしまうから話す相手も彼しかいないが……。まぁ構わないか。
「乗り物酔いは平気か? 行きではだいぶやられていただろう?」
「……まだ問題ないよ。ただ酔う前に寝てしまった方が楽なのかもな」
「今は平気なのか。アレ以降君は常に気分悪そうにしているから分かりづらいな」
「……言うほどか?」
「そうだな。ただまぁ平気なら少し話そうか。えーっと……霊明祭がもうじき開かれるだろう? 準備期間と本番はちゃんと出られそうか?」
「うーん……どうだろうな。できるだけ出たいが、今回のことを校長に話さないといけないからな……。ガラリネオさんとの約束ももしかしたら被るかもしれねぇし……」
「……今回のことか。俺も引率としては先生達にちゃんと報告すべきだろうが……もし情報が漏れようものならルーシュが面倒臭いことになりかねんからな……。校長以外には俺は黙っておこう」
「何から何まで助かるよ。……ルーシュにはオレから軽く話しておこうかな。隠し事も何か悪いし」
ジンリューとの話を一通り終えた後、オレは乗り物酔いに潰されないうちに軽く眠り、数時間後には列車を降りて学園の寮に戻った。




