第70話 懐かしい気配(3)
何に怯えているのかが分からないのに、怯えずにはいられない。精神が、魂がそうなってしまっているのだ。
「寝る前の記憶がまるで何年も何十年も昔のものみたいだ。……仮面の男は一体何者なんだ?」
「それも分かんない……けど、アレは強さは人間のものというよりも天災の類いだよ。実力は個人のものではあるけど、正直私とかベルドット君の力じゃ足元にも及ばないよ。何者かって聞かれると何とも言い難いけどあの感じ……」
「あの感じ?」
「ちょっとだけエストに似てたんだよね。雰囲気というかなんというか……絶対にエストではないんだけどね」
「……子孫とか?」
「いや、そういう感じでもないんだよね……。そもそも子供なんていないし。まぁ気のせいかもしれないんだけど……」
仮面の男は今まで会った誰と比較しても別格の存在だ。No.6はナンバーズには序列はないと言っていたが、“番外”は違うとも言っていた。恐らくはアレがその“番外”というものだろう。
つまり、正直アレほど強い者がそう何人もいるとは考えたくないが、同格として扱われている者が他に何人かいるということだ。
……あの異常性を感じた以上、その数は何としても調べなければならない。……それも歴史の破壊者と遭遇しないには始まらないな。
「参ったな……。問題は山積みか……。でも個人的なもので言えばもっと問題があるんだよな……」
「身体の不調でも?」
「……身体っていうか精神の方が不調なのは否定できないけど、そうじゃなくてさ。今回ってなかなか良い戦いだったと思うんだよ。でも魔力が全然増えてないんだよな……。ずっと五星級のままだよ」
「……言われてみればそれもそうね。まぁ六星級以上にはなかなか上がりづらいとは聞くけど……」
「それにしてもだよ。……もっと追い込まなきゃいけないかな……」
「…………何にしても今はゆっくり休んでなさい。ミラったら今死んだような目をしてるもの」
「……それもそうだな」
オレは毛布を深く被って寝転がった。しばらくするとカミュール達が帰ってきた。
すぐにオレの心配をしに部屋に入ってきたが、そのときもまた、オレは正体の分からぬ何かに怯えていた。それが何なのかが分からない、分からないことにさえ恐怖していそうだ。
「しかしお前が気を失うほど戦ってたとはなぁ……。どこをほっつき歩いてたんだ?」
「ん? いやぁ……まぁボチボチな。お前らは土産でも買ってたのか?」
「ああ。ジンリューさんに帰されちまったからな。明日も迷宮に入る予定ではあったんだが……この様子じゃ見送りになりそうだな」
「悪いね。身体の方は平気なんだが……どーも何かがおかしくて……」
「気にするな。ずいぶんと疲れた顔をしているからな。ゆっくり休め。私達だって街の観光は嫌いじゃない」
「……ありがとう」
それからは翌日のことについて調整をし、オレの傷に響かせないようにとそそくさと部屋を出ていった。
リアンに至っては迷宮に入らなくて済むことに安堵しているように見えたが、それでもみんなに気を遣わせてしまったかもしれない。多少は仕方なかったとは言え、流石に悪かったかな。




