第66話 悪く思うな(2)
異変に気づいたNo.6はすぐに構えたが、オレの傷では動けまいと油断している。オレは残りの魔力を脚に込めて高速の一太刀を繰り出した。
「『天翔轟炎』……!!」
「ッ!?“魔攻剣”『一咲乱』…!」
オレは突進しながら円を描くように袈裟斬りをし、No.6はそれに反応して技を繰り出した。短剣の刃とそれを超える鋭さの手刀が同時にオレの首を切り裂いた。
呼吸器が損傷するほど深くはなかったが、それでも充分致命傷にはなり得た。傷が浅かったのは炎の熱がその刃を溶かしていたからだ。
突進した勢いでオレはNo.6から10メートルほど離れていた。疲労のせいか毒のせいか、詳細には見えないが酷く血を流しているのは分かった。
そしてオレの魔力は完全に底をついたのだろう。天現融合も“叢雲剣”も解除されてしまった。
「……はぁ……はぁ……ふはは!!貴様は……貴様はもう限界だろう……!!私は……死んでなどいないぞ……!!感謝しよう! グランデュース……!!そしてもう会うことはない……私にも……王にもな……!!」
「くッ……」
No.6はダメージのために足取りも悪く、呼吸も荒くなってはいたものの、今の一撃では決定打に欠けていた。
殺せていない。オレの刃はヤツの命には届いていなかったらしい。No.6はゆっくりと、しかし確実にオレの前へと歩いてきた。
「さらばだ……!」
「……ぐあッ!?な、なんだッ!?」
No.6が短剣を振り下ろそうとしたその瞬間、白い炎が彼を包み込んだ。炎は地面から、正確には地面の魔方陣から召喚されている。
「ぐッ……くッ! いつ……仕掛けた……!?こんな……魔方陣を……いつ……!?」
「……お前が作ったんだろ……主を召喚するための……魔方陣……」
召喚魔法は複雑なために、咄嗟に発動することはなかなか難しい。
そして魔方陣というものは大半は一度発動すれば消滅するものだが、No.6の使った魔方陣からは魔力の残滓が感じられた。
それをオレ用にほんの少し組み替え、刀に吸い込ませた炎を召喚したというわけだ。
「焼き尽くせ……! 『天翔嵐』!!」
「がッ……かッぁあ!」
巨大な火柱が立ち上り、その熱気はオレの身体にも火傷を負わせた。炎が消えると煤になったNo.6が現れ、かろうじて息はあったがそう長くはもたないだろう。
「王は……!」
「?」
No.6は充分に動かせない口を無理やり動かし、息も吸えない肺を使って大きな声を出した。
「……王は始まりである。王は終焉である。王は必然である。王は運命である。王は歴史そのものである。王は……歴史の破壊者である……!」
「……お前らは……カルト集団なのか? そんな遺言を残すなんて……」
「くっく……。グランデュース……貴様は私よりロックだった……。もはや私に貴様を止める権利なぞないが…………悪く思うなよ。私の忠誠はただ王にのみある……!!」
「……なるほど。その忠誠心の高さには敬意を表すよ」
No.6はオレの言葉を聞くと、倒れ込んで身体を崩壊させた。運が良かったか……。それを見てオレも倒れ込んだ。
もう身体を動かすことはできない。毒のせいで身体中の筋肉が引き攣っているが、休憩してもう少し魔力が回復すれば問題ないはずだ。
あるとすればこんな迷宮のど真ん中で身動きが取れないという点だが……。考えていると、灰となったNo.6の身体から魔力が噴き出し、何かが現れた。
「ク……ソッ……まずったな……」
「……………………」
現れたのはNo.6に取り込まれたはずの迷宮の主、彼岸騎士だった。長く巨大な剣を持ちながらオレの方に近づいてくる。
ロイドは離れたところで魔物を倒しているだろう。オレは身体も動かせず、帰還石を発動させることもできない。天現融合を限界まで使っていたせいでセリアに実体化してもらうこともできない。
万事休すといったところか……? オレはなんとか助かる方法がないかと思って考えていたが、どうにもそんな方法はなさそうだった。




