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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第四章 イスダン迷宮
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第65話 悪く思うな(1)

「くっく……! 人間というものは脆いな……! 16年生きてこの程度とは……私達は生まれながらに強いからなぁ……哀れだなぁ! グランデュース!!」


「ゔッ……!!」


 一つ一つの動きの速度スピードでは上回っている。天現融合に加えて“叢雲剣”も使っているから攻撃力も充分に足りていることだろう。


 だが瞬間移動という圧倒的機動力には追いつけない。No.6の動きは確かに鈍くはなっている。が、それに関してはオレも同様だ。


 むしろ少しずつ毒を身体に入れられている分、弱っていっているのはオレの方だ。


 No.6は能力スキルを昇華させてから常に魔眼を発動している。そのせいで瞬間移動のタイミングを予測しづらい。想像以上に戦闘が長引いてしまっているのはそのためだ。


「しかしことごとく……貴様とは戦いたくないな…!!私の魔力が壊されていなければ! 貴様などとうに殺せていたのだ……!」


「はぁ……はぁ……そんなこと言うならな……お前が毒なんざ使わなければとっくに終わってんだ。…………こんなつまらねぇこと言ってんのはロックじゃねぇよな? 戦いはもっと楽しむもんだろうがよ!!」


「違ぇねぇ! 私としたことが悪かったな! 恨むのはどっちかが死んでからにしよう!!」


 オレの刀が、白い炎がNo.6の拳、脚、短剣と衝突する度に大きな衝撃を生んでいた。


 毒が筋肉を蝕んでいるのか、それとも天現融合と“叢雲剣”の掛け合わせで限界が近づいているのかは分からないが、刀を振る度に腕の筋肉がちぎれるような痛みに襲われた。


 何度斬ろうとしてもすんでのところで回避されてしまう。どうすればいい……? 当たるまで斬り続けるか? それが妥当ではあろうが……もう少しやりようはないだろうか。


「何を考えているんだ!?」


「かッ……!!」


 No.6は目の前に現れ、オレは首を掴まれた。その掴んでいる腕をオレは力の限りに握り、八雲で斬ろうとした。


 そのときNo.6が短剣で攻撃しなかったのは間に合わなかったか、あるいはその攻撃の方が有効だと考えたからだろう。


「楽しかったぞ! グランデュース!!」


「ッ!?」


「“魔攻拳”『穿魔ゼンド』!!」


「がッ……あッ……!」


 魔力によって鋭くなった五つの指がオレの胸に突き刺さった。深く刺さった指は身体を完全に貫き、心臓も掠めていた。


 なんとか身体を捻ったために心臓が傷つけられることはなかったが、肋骨も砕けたせいで呼吸が苦しく、ほんの少し身体を動かすだけで肺の中に異物が入っていくのを感じた。


「なん……だっ……今……の……は……」


 なんとか左手で八雲だけは握っていたが、もはや脚に力は入らず、オレは膝をついた。地面に頭突きをし、八雲を地面に突き刺して身体を支えた。


 八雲からはいまだに白い炎が噴き出しているが、少しずつ赤い炎に戻りつつあった。肺からはゴロゴロという音が聞こえ、骨や筋肉からはギシギシという音が鳴っていた。


「はぁ……はぁ……。魔攻拳……これは王のお力だ。王の武術、剣術、魔術……私達歴史の破壊者(デスティニー)はこれらを使うことができる! ……流石に身動きも取れんか? ……よく頑張った方さ。……人間の限界というものだろう……」


「ぐッ……」


 身体が悲鳴をあげている。いや、悲鳴にもならないほど軋んでいる。自分の身体が言うことを聞かない。


 あと……あと一振りだ。八雲を……刀を触れるのはあと一回。それが限界だ。


(ねぇ、ミラ! もう出ていいでしょ!?私が出たらアイツを止めるから! 帰還石に魔力を……)


(いいや……その必要はねぇ)


(必要ないって……!)


(次で勝てる……! セリアの魔力は……治癒に使えるか?)


(……分かったよ。でも痛みを和らげる程度のものよ?)


(充分だ……!)


 オレは八雲を握り、魔力を流し込んだ。逆流した滝のように炎が巻き起こり、その炎は八雲の中へと入っていった。

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