第64話 完成した能力(3)
「基本的には人間と変わらねぇと思ってたんだが……お前らは魔物か魔族なのか……?」
「うん? ……ああ、そういや名乗ってはなかったか? 私達は歴史の破壊者だ!!」
No.6は二振りの短剣を握ってオレに斬りかかってきた。オレは上半身を逸らして回避しようとしたが、完全には避けきれずに刃は頬を掠めた。
小さな傷ではあったけれど、痛みは抉られたかのように強く走った。その上電気でも走っているかのように顔の筋肉が痙攣している。
「……毒でも……塗られてんのか……?」
「王が作られた“生きた毒”だ! 体内に入った毒は成長し、蝕んでいくものなのだが……どうやら貴様の炎とは相性が悪いようだな……!!」
これで“相性が悪い”か……。セリアとの天現融合を習得していなかったらどうなっていたか、考えたくもない。
オレは両手の短剣を刀で受け、炎で防ぎながら攻撃にも転じた。ヤツは短剣を宙に舞わせながら打撃も加えてくるせいで対処が難しい。
確実にオレに向かってくる攻撃にだけ意識を集中し、フェイントのために放り投げられた短剣は無視することにした。
「ぐッ……!??ガハッ……ハッ……!?」
「ふふ……貴様はやはり切り替えが早いな…! それがセンスというものか……仇になったな……!!」
宙に投げられていたはずの短剣が、なぜかオレの右肩に突き刺さっていた。オレに刺さるような位置には投げられていなかったはずだ。
仮にそのような位置だったとしても、落下してオレに当たるまではまだ時間があったハズだ。なぜ刺さった……?
「不思議に思っているようだな! 貴様は“昇華”というものを知っているか!?」
「“昇華”……?」
いつだかセリアから聞いたことがある気がする。なんだったか、考えながらNo.6の攻撃をいなしていた。痛みのせいで動きは鈍くなっている。
この際短剣による攻撃に集中して打撃は甘んじて受ける方がいいのかもしれない。オレは大きく後退して肩の傷を焼いた。動脈が損傷したため出血が酷かった。
早くポーションを使って治すべきだろうが、コイツを野放しにしておくべきでもない。最悪、帰還石を使ってしまえばいいのだからまだ退くわけにはいかない。
「今は気分がいいから教えてやろう! 私の完成した能力は触れたものをも移動させる! 貴様が対処すべきは私だけではないぞ!!」
「…………」
手数が増えたってとこか……。だがNo.6もある程度は消耗しているようだ。だが強い。どうも……オレも後先考えずに全力でやるしかないかもしれん。
「『叢雲……剣』……!!」
「ほう……!!」
八雲を纏った炎は、魔力のせいか白く変色した。熱気はさらに勢いを増して刀とオレの左半身を包み込んだ。もって三分ほどだろうか。オレは全ての魔力でNo.6を迎え討とうとした。
***
ところ変わってここは迷宮の二階層、一行は昨日と同じように魔物を狩っていた。定期的に出現する階層ボスを狩りながら、基本的には下級の魔物を狩り尽くしていた。
「やっぱ二階層じゃ歯応えがねぇな。なぁ、リアン?」
「君なぁ……無茶をした奴から死んでいくんだぞ! 弱くていいんだよ! 敵は!!」
「まぁでもラルヴァの言うことも理解はできるな。せっかくの学外学習だというのに……まぁ迷宮は危険の伴う場所だから仕方ないがな。」
「………………」
「どうかしたんすか? ジンリューさん」
迷宮の主が現れた影響か、あるいはミルアルトとNo.6が激しい戦闘をしているせいか、迷宮は微かに震動していた。
ジンリューにそれを知る由はなかったが、何かが起こっているという異常性は理解していた。
「君達、今日はこのあたりで引き上げよう」
「それはまたどうして?」
「嫌な予感がする」
「嫌な予感ってのは魔物が出るっつーことですかね? それならいいじゃないですか」
「もう一度言う。今日は引き上げよう」
「……分かりました……」
ジンリューの言葉で全員武器を収め、一階層に上がる階段へと向かった。ラルヴァに関してはどうしてか説明されないためにイマイチ納得できていなかったが、何が起こるよりも彼を怒らせる方がよっぽど恐ろしかったので抗議はしなかった。




