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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第四章 イスダン迷宮
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第62話 完成した能力(1)

 No.6の動きは速いなんてものじゃない。仮にオレの目で追えないほどに速かったとするならオレではとても敵わないわけだが……それならばさっきの蹴りでオレは殺されていただろう。つまりヤツの力はそうじゃない。


「瞬間移動か……? 空間転移だとか、そういう次元の速さじゃねぇよな?」


「さっきの一瞬で見破ったか! なるほど、センスも並じゃないな!!そう、私の能力スキルは『瞬間移動』! 多少のインターバルは必要だが、視界の中なら“移動”という過程を飛ばして動くことができる!!」


能力スキルまで明かしちまって親切なこったね。余裕のつもりか?」


「私の勝因が“相手が私の力を知らなかったから”じゃロックじゃねぇだろ? 貴様も単純な実力差で負けられるのだから嬉しいだろ? ああ、貴様の力はある程度知ってるから説明は要らんぞ」


 本気で勝つ自信があるようだ。確かに実力はあるようだが、どうにもならないような相手ではない。相手が慢心してくれるならそれに越したことはない。


 話を終えたNo.6が瞬く間にオレの目の前に現れ、オレは咄嗟に刀を振った。


 ヤツは速さ(スピード)は足りているために全ての魔力を破壊力に回しているようだ。斬れ味が尋常ではないはずの八雲の斬撃をその拳で受け止めている。


「ハッハッ!!なんだその刀は!?メチャメチャにロックじゃねぇかよ!!」


「想像以上ではあるんだが……お前の硬さの方がどうかしてんだろ……!!」


 八雲の斬撃はNo.6を斬るには至らなかったが、防がれなかったところは奥の壁まで斬れていた。


 特別力を込めて刀を振ったというわけではない。今のはただ受け止めただけだ。それだけのものなら、攻撃力は充分足りている……と思う。


「ガキの振るう刃は恐ろしくて敵わないね。防御はちゃんとした方が良さそうだ」


「だいぶ硬いんだが、脅威には感じてるのか。お前の硬さの限界を見極めなきゃならねぇな」


 No.6は瞬時に目の前に現れ、攻撃に失敗するとすぐにどこかへ避難してしまう。


 オレの攻撃は全て受け止められてしまうが、効かないわけではない。鋭い剣筋で斬りかかることができれば、かろうじて皮膚には傷を残せる。


 だがヤツもボルテージが上がっていってるようだ。瞬間移動が発動するテンポもそうだが、身体の動きなども少しずつ速くなっている。しかし長期戦になれば有利なのはオレだろう。


「貴様に触れると魔力を持っていかれるな……。残念ながら、そういうのは好きじゃねぇ!!」


「ぐはッ……!!」


 No.6はオレのすぐ横に現れ、オレは腹に強烈な蹴りを喰らった。胃が迫り上がってくるような不快感と激痛が走った。


 瞬間移動には攻撃力がないはずだから、これは単純な身体能力によるものだ。身体の中で出血しているようだ。腹の奥でドクドクと鳴っているのを感じた。


「そうだそうだ。私は優しいから教えてやろう。貴様、No.8にやられたとき、殺されなかっただろ?」


「ごほッ……はぁ……それが……?」


「王はな、貴様を殺さないよう命じていたのだ。貴様を殺すことで計画に何かしらの支障が出ると考えられたのだろうな。だが王はその命令を変更した。“邪魔になるなら殺せ”とな!」


「つまり……前とは違って本気で殺しにくると?」


「その通り! 命を懸けた戦いこそ、ロックだと思わねぇか!?」


 No.8には殺されかけてはいたんだがな……。しかしコイツは強いな。動きを見極めるだとか、そんな悠長なことは言っていられない。消耗はするだろうが、温存して戦えるような相手じゃない。

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