第05話 八星級戦力(1)
「じゃあ、気をつけてね。いつでも帰ってきて良いからね」
「ありがとう。でも今度帰るのは夏休みかな」
「またね! おばさん!」
そう言ってオレとルーシュは家を出て、学園へと向かった。オレ達は五日間だけ家で休日を過ごしたが、今日の午後からは学園で授業を受けなければならない。
天転召喚は肉体、精神的に酷く疲労することも少なくないため、家族などへの報告も加味して儀式から五日間は休日になっている。のだが……。
「何回も聞いたけどよ、やっぱルーシュが休んだのはマズいんじゃねぇか?」
「いいの! 休まなかったらセリアさんとも会えなかったし、そもそも数日休んだくらいなら取り戻せるからね! なんたって私は優秀だから。ゆーしゅーなのよ!」
ルーシュは鼻高々にそう言った。まぁルーシュは頭もいいし魔法も充分使える。その上生まれながらの能力保持者、つまり固有能力者であるため正直言って学園でもトップクラスの人物だ。
確かにそんな彼女が五日間休んだくらいじゃ何の問題も出ないわけではあるけれど……。
「ルーシュの担任って“鬼教官”じゃなかったっけ? サボりだって思われたらヤバいんじゃないの?」
「…………。……なんとかなるよ」
ルーシュは静かに言ったが、顔にはヤバいと書かれていた。“鬼教官”と呼ばれるその先生は、元々は冒険者、つまり魔物を狩る仕事をしていたそうだ。
合理的で情に厚い男だとはよく聞くが、命のやり取りをしてきたために規則には鬼のように厳しいともよく聞く。事前に休む理由を説明していればそんなに怒るような人ではなかっただろうが……まぁルーシュは何も言わずに来てるのだろうな。
オレ達は転移門を潜り、学園に到着してから別れた。寮で一度荷物の整理をし、その後で教室に向かった。少し早く着いてしまったが、先生が来るまではセリアと話して暇を潰していた。
(ミラ、そういえばルーシュの魔力量は何星級なの?)
(七星に近い六星級だったかな。学園で最強って言われてる人でも七星級だって話だし、結構スゴいんだよ)
(ふーん……。教師達は何星級?)
(ほとんどは五星級か六星級かな。オレの担任とかルーシュの担任は七星級の下位だった気がする)
聖都の魔法学園は世界有数の名門ということもあり、教師達は最低限の実力はある。五星級の先生でも同じ階級の生徒とは比べ物にならないほど強いし、七星級の教師など世界中でも数えるほどしかいない。
オレの担任であるランファ先生は元々中央政府直属の魔法師だったっけ。魔法師のくせにオレより剣も上手いんだから困るよな。
(でもそれがトップじゃないでしょ? 校長の近くにいる副校長だか教頭だかが七星級の中位ってところかな? それで校長が八星級……つまり十法帝よね?)
(そうだけど……なんで分かったんだ?)
(私だって君達が言う“神話の時代”には法帝をやってたんだから。それくらいの感知はできるわよ)
そういうものなのか。先生達は魔力を抑えてるから少なくともオレ程度ではその魔力量を推し量ることはできないんだけどな。
それなのにセリアは簡単に、しかもある程度離れたところから測定したのか。英雄と呼ばれているのも伊達ではないということだ。
オレがセリアと話しているうちに教室には生徒が集まり、いつの間にか先生が話を始めていた。
「高等部に上がった皆さんはこれまでとは違って実技の時間が増えますが、くれぐれも無茶をしないように。最初は慣れるまでしっかり休憩も取るようにしてください。それとミルアルト君はこの後私と一緒に校長室に行きますよ」
「えっ?」
「今日のお知らせは以上です。ミルアルト君、着いてきてください」
先生がそう言ったので、オレはとりあえず先生に着いていった。今日からはせっかく実技の授業があったのに……オレなんか悪いことしたっけ?
「心配はしなくていいですよ。君は召喚した方が普通ではなかったので話がしたいというだけです」
「ああ、なるほど。そういうことですか。ならセリア、姿が見えるようにしておいた方がいいんじゃないか?」
セリアはそうね、と言って実体化した。校長先生は生徒が何を召喚したのか簡単に整理しているらしい。神話の時代の人間なんて珍しいものを放ったらかしているわけがないか。接触しようとするのは当然のことだ。
「校長、ランファです。ミルアルト君を連れてきました」
「おお、入りなさい」
校長室の扉の奥から、若い男の声がした。その声を聞き、先生が扉を開いてくれたのでオレとセリアは部屋に入った。




