第57話 妖刀“八雲”(2)
珍しく他人のために話したせいか、いつもよりもケーキが美味しく感じられた。
思えばルーシュとオレが仲良くなったのもあの事件以降だった。それまでは誰とも関わりたくないとでもいうようなどこか冷たい目をしていた記憶がある。
正直幼い子供があんな経験をしたらオレを怖がりそうなものだが、よほど優しかったのだろう。あるいは戦争で多くのものを無くして希望を失っていた中で、これ以上失いたくないと思った結果なのか、とにかくルーシュはあれ以降、今のように明るく積極的な性格になった。
そういう面でもオレは助けてくれたその“何者か”に感謝をしたいんだ。
「まぁ……なんだ。聞きたいのはそれだけじゃねぇっていうか……むしろその上で聞かなきゃならねぇことがあんだが……」
「知っていることなら答えるが……?」
「あの魔物はどこから連れてきたんだ? アレは普通の魔物じゃねぇ。どこにいた?」
「普通じゃない? ……俺があの魔物どもを見つけたのは五階層だったか……。知らねぇ顔の奴が襲われてたんで助けてやったんだ。ついでに貰った」
「アンタが知らない顔だって? ギルドに来るヤツらの顔はよく確認してるんだろ? 怪しいな」
「それもそうだが……何を怪しんでる?」
セリア曰く、あの魔物は大洞窟の混沌人達と同じような魔力だったらしい。そしてロイドが知らない冒険者……いや、そもそも冒険者ではないと考えた方がいいだろう。
歴史の破壊者が関わっていることは間違いない。オレはケーキを食べ終わって、残りの紅茶を飲みながら考えた。
「うぅーん……五階層か……。三階層以下に入るのは許可されてないしなぁ……。まぁいっか。話はとりあえずこれだけだ。アンタがこれから何をしようとオレの知ったこっちゃないが、とりあえずアンタが助けたっていうヤツに会いたいから明日ギルドで会おう」
「分かった。……まぁなんだ、そんなこととは関係ないんだが……お前、その剣はどこで手に入れたんだ?」
ロイドはオレが腰に差している剣を指差して言った。普段使っている剣ではあるが、変わったものではない。使い古しているから買い替えなければならないが……。
「これは家にあった剣だよ」
「思い入れがないなら買い替えろ。近くに武器屋がある。謝罪の意味も込めて金は俺が出すから、ダメになる前に新しくしとけ」
「え……金を出してくれるんならそりゃ嬉しいがよ……」
「気にすんな。迷惑をかけたのはオレなんだから、そのくらいはさせてくれ」
「……じゃあその言葉に甘えさせてもらうよ」
オレ達は会計を済ませて店を後にした。オレはロイドの案内に従い、人気の少ない道を歩いていた。紹介してもらう武器屋は揃えはいいらしいが、なにやら雰囲気が悪いらしく客入りは少ないようだ。
「お邪魔しまーす」
「あん? お客さんか。好きに見ていけ」
……なるほど、雰囲気が悪いというのはそういうことか。剣に槍に戦斧に、盾に鎧に……確かに良い武器が揃えられてはいるが、中には呪いの武器もある。近寄り難いと思うのも無理はない。
「剣士なら……魔法剣はどうだ?」
「魔法剣か……魔術式が刻まれている分脆いからな……。加えて言うなら斬れ味よりも耐久性を重視したいな。剣の鋭さなら能力で補えるから」
魔力を極限まで圧縮する“白天”を剣に纏った“叢雲剣”を使うと剣は悲鳴を上げていた。それに天現融合まで加えたら並の剣ではまず保たないだろう。
ここの剣は確かに良いものではあるが……正直オレの最大の技に耐えられるほどなのかというと……
どうやらオレが今まで使っていた剣はなかなか良いものだったらしい。




