第51話 米が美味い(2)
イスダンは聖国の北端に位置する街、転移門を利用すればそれほど時間を要さない。
「引率というのは誰なんだろうな? ランファ先生は来られないと言っていたし……」
「鬼教官は嫌だな。それ以外なら正直誰でも構わねぇや」
「ジンデール先生じゃなくて悪かったね。何なら今から代わってあげようか」
オレ達は話しながら校門に向かって歩いていると、突然目の前に現れたのはジンリューだった。今まで話していてもそんな素振りを見せなかったのにまさかオレ達の引率をするとは……。まぁほとんどの先生よりは強いからこれ以上の適任も少ないか。
「我らが生徒会長ではないですか。アンタが引率ならオレ達も安心だよ」
「嘘を言いやがる。どうせ誰が来ても変わらんだろ。……さて、現地ではくれぐれも俺に従ってもらうぞ。君達には軽い怪我はしても重傷を負ってもらっちゃ困るんでね」
「もちろんですよ。それが先生との約束ですから」
一番不安だったのがラルヴァだったが、案外約束は守るヤツみたいだな。となると一番約束を破りそうなヤツといえば……
「俺が一番懸念しているのはミルアルト、君だ。くれぐれも勝手な行動を起こすなよ」
「やっぱりそうなのか……。まぁ安心してくれ! オレは軽い行動はしないから!」
「その軽さが不安だよ。まぁいい。とりあえず出発するぞ。イスダンに行くには転移門を使った後に三時間は魔導列車に揺られなければならない。あまりゆっくりはしていられないぞ」
そう言ってジンリューは早々に歩き出した。転移門を使って街を二つも三つも飛ばしてイスダンの近くの街に到着し、そこからイスダン行きの魔導列車に乗った。
ガタンガタンと線路を走る音は、オレの身体のみならず心までも躍らせてくれた。
「お、おい、大丈夫か?」
「え……? オレか……いやぁ……大丈夫さ。……大丈夫……」
列車の揺れは気分を上げてくれたものの、実に不快に感じられた。他のみんなは特にそのような気配はないから、酔っているのはオレだけなのだろう。
乗り物酔いなどオレはしないものだと思っていたが……どうやら列車には弱いらしい。ただ多少気分が悪くなる程度の軽いものだからそう気にすることでもない。
……いや、やっぱり気にはすべきかもしれない。
「まぁ君がそう言うなら構わないが……それより十法帝会議に参加していたようじゃないか。どうだった? 法帝の方達は」
「凄かったぞ……なかなかに……。付き添いの人達は置いといて……感覚的にだけど、あの中じゃ校長先生が一番弱いんじゃないかな。能力差はそんなになさそうだけど、経験が違いそうだったよ」
「そうなると奪う席はそこなんだろうがね……あの人の能力は厄介だからな……」
「校長先生の能力……? 聞いたことないな」
「あの人の能力は『超感知』、要は一定範囲の人とは念話ができるってものだよ。有事の際にはそれを使って非難とかの指示をするんだ」
念話か……。便利ではあるけれど、いうほど厄介だろうか? そりゃあ戦闘中に頭の中に落書きされたんじゃ集中はできないだろうが……。
「イマイチ腑に落ちないようだね。まぁ厄介なのはそこじゃないさ。集中力は必要なようだけど、昇華した能力はほんの一瞬だけ他人の思考を書き換えるんだ。数年前に胸を借りたことがあるが、あれには敵わなかったね」
「確かにそれは……。能力のことを考えなければ勝てる見込みはあるのか?」
「俺の能力だけを考慮するなら五分ってところじゃないか? だが思考の上書きに打ち勝つためには校長を超えるためには速度で圧倒しないといけないから……挑むのはもっと鍛えてからだな」
「へぇ……じゃあそれより先にオレが序列一位を奪おうかな」
「できるものならやってみろ。まだまだ今の君には負けないぞ」
そのままジンリューと話をしながら、三時間ほど揺られていた。途中、ヴァンルージとも言葉を交わした。
彼は魔法銃を使う戦闘スタイルらしい。己の魔力量を補う魔導具を使っている以上特等クラスに入ることはできなかったようだが、その実力はなかなかのもののようだ。早く迷宮で戦う様を見てみたい。
イスダンの駅に到着し、オレ達は冒険者ギルドに向かった。
オレとジンリュー、ヴァンルージは冒険者に登録しているから問題ないが、カミュールとラルヴァ、リアンは登録していないので今の状態では迷宮に入ることはできない。そのためにギルドに赴き、ギルドカードを作ってもらうことにした。




