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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第四章 イスダン迷宮
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第50話 米が美味い(1)

 山奥に存在する歴史の破壊者(デスティニー)の本拠地、架空空間と呼ばれる空間の一室にベータはいつもの通り座っていた。


 彼らの王と直接連絡を取れるのは“番外”と呼ばれる存在だけだった。王が許可をすれば歴史の破壊者(デスティニー)は全員思念魔法を用いて連絡を取り合うことは可能なのだが、組織の人数が多すぎるために制限しているのだ。ただし配下の者達の間では自由に思念魔法を使える。


 そもそも思念魔法というものは歴史上、彼ら以外が使ったことはない。彼らが元々ただ一人、王から創造された者達であるため魔力が繋がっており、それゆえに彼らの間だけで使用が可能だったのだ。それはつまり、固有魔法とも呼べる魔法だった。


——………私だ。聞こえるか? ベータ。


——ッ!!王ではねぇですか! 久しい声だ。あっしに一体何の用ですかな。


——私はルシファーと名乗っているというのに……。君達の呼び方はいつも固いな。


——王は王でございやすから………気に入らねぇなら母か父とでも呼びやしょうか?


——……それなら王で構わない。


 ルシファーは諦めたような口調でそう言った。彼は王とは呼ばれているものの、絶対的な存在というわけではないようだ。


 いや、むしろ絶対的な存在であるからこそ、配下達は“王”という呼び方に拘っているのかもしれない。


——いや失礼。話を戻しやすがどのようなご用がございやすんで?


——十法帝会議が行われていたのは知っているな? アルファから報告があったんだが、奴ら私が歴史の破壊者(デスティニー)のボスだということに気づいたらしい。


——ほう……。アルファさんが法帝と繋がっているとは存知やせんでしたが?


——なんでも偶然にも近くにいたから聞き耳を立てていたようだ。ほんの微かな空気の振動から声を聞いたとか……私には理解し難いがな。


——しかし、それならどうするんで? 今更アンタが見つかることもないでしょうが……世界は今まで以上に警戒を強めるでしょう。いっそのこと全面戦争でも始めやすか?


 ベータは穏やかな口調ながら、物騒な言葉を口にした。彼にとって王のためならば、何者が死のうとも関係のないことだった。


——……いや、私の準備が整っていない以上それは無しだ。君達に戦闘を任せようとも法帝の力を考慮するなら万全の状態で私も参戦しなければならない。


——番外あっしらなら法帝にも引けを取りやせんよ。それにアルファさんを使えば誰が相手でも負けることはねぇはずだ。あの人は自由人ではあるが、アンタへの忠誠心は本物だ。アンタが出張らなくとも充分世界を終わらせられる。何を不安に思っておられる?


——考えたまえよ。戦争など起こせば、それこそ私の身体がどうなってしまうか。それに、いつの時代の最強も慢心した者から殺されている。記憶の無い私でもこの魂に深く刻まれている。……あの者がいる以上は迂闊に動くことはできぬ。


——なるほど。……あっしの浅慮をお許しくだされ。


——その程度のことで罰するほど私はつまらぬ者ではない。それよりもこれから言うことをガンマ、デルタ及びAからC型の全ての者達に伝えろ。まず一つ、“神話の時代の魔神、ルシフェルという者について調べろ”と。


——ルシフェルでございやすね。アンタの記憶にはどれほど残ってるんで?


——いや、何も覚えてはいない。ただ魂の奥底に刻まれているヤツらの記憶にだけは、ほんの少しだけ憤りを感じている。……そして二つ目、“グランデュース=ミルアルトと接触した場合、これまで通り極力戦闘を避けること、ただし邪魔になった場合は殺すことも許可する”。


——構わないんで? 準備がどうのというのもありやすが、彼を殺せばネフィル=セルセリアもこの世に存在しなくなりやすよ?


——構わない。我々の戦力が削られるよりはずっとマシだ。


 ベータは一言、“了解しやした”と言って思念魔法を解除した。それからすぐに全ての番外、それから部下達全員に思念魔法でルシファーから受けた命を伝達した。


***


「さて、じゃあそろそろ出発しようか。」


 十法帝会議よりしばらく経ち、一年(オレたち)は学外学習の日となった。


 迷宮に誘った人達は全員親からの許可をもらえたようで、オレとカミュール、ラルヴァとリアン、それからヴァンルージの五人で行くことになった。

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