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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第一章 序列戦
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第04話 相棒(3)

能力スキル・・・創造神に授けられる力。一人あたり最大一つまで。大抵の場合は得られずに一生を終えるか、あるいは何かを極めた暁に得るもの。


能力保持者スキルホルダー・・・能力スキルを保持している者。一般には固有能力者ネームドでも継承能力者インヘリットでもない者を言う。


固有能力者ネームド・・・生まれながらの能力保持者。生まれたときから創造神が加護を与えていることを意味する。


継承能力者インヘリット・・・親や先祖に近しい能力スキルを発現した者。実際には生まれながらの能力保持者であることが多いが、認知するには多少の年数がかかることも。創造神が一族に加護を与えている。

 思考が行ったり来たりしている間に、夕食は食べ終わってしまい話は流れるように天転召喚へと移っていった。


「毎年のことだけど、世界中で今日はお祭り騒ぎよね。この街も例外じゃないし、大変よ。まぁ結果はどうあれ大きな節目とされるんだから当然なんだけどね〜」


「そうですよね〜。神様も天界が寂しくなるって文句垂れてましたよ」


「やっぱり? 天界も大変なのね。……? ッ!?」


「なッ!? だ、誰だ!?」


「え!??!?」


 母さんが話していると、その話に急にセリアが入ってきた。コップに注いだお茶をちびちびと飲みながら。


 世間話でもするように当たり前に話し始めたから……父さんもルーシュも、当然母さんも腰を抜かしている。なぜオレの説明を待てないのか……。英雄というものはどうにもマイペースらしい。


「あー……えーっと……オレが天転召喚で召喚したセリア……グランデュース=セルセリアです。……びっくりするだろうけど。……」


「セルセリアです。ミラ君の生涯の相棒パートナー……とは言えないけど、守護者として彼を守ると誓いましょう」


「なんでよ!! あなたみたいな美人さんならミラの相棒パートナーになってくれたっていいのよ!? ねぇ!?」


「落ち着いて下さい、お母さん。私には先約がいるんですよ。彼にはルーシュちゃんもいるみたいですし、下手なこと言うべきではないですよ?」


「あら! セルセリアちゃんは分かる子なのね!! そういうなら安心して任せられるわ!!」


 変な誤解をしている母さんをセリアは何やら説得したらしい。小さい声でよく聞き取れなかったけど、たぶん碌なことではないな。


 母さんは色々と動転しているのか分からないけれど、父さんとルーシュは理解が追いついているようで、しっかり頭が真っ白になっている。母さんもそうなってくれていればまともに話を進められたのに……。


「…………? “セルセリア”ちゃん……?」


「ええ。そうですよ?」


「グランデュースの……?」


「ええ」


「…………ミラ!! 母さんには理解ができないわ!! 簡単に説明してちょうだい!!」


 ああ……どうやら母さんも正気に戻ったらしい。簡単に説明した結果がこれなのだが……まぁ父さんもルーシュも納得していないようだし仕方ないか。オレは今日の召喚のことを一から詳しく説明した。


「まさか英雄様だとは知らず……無礼な態度を……」


「いやいや、構いませんよ。それに何も私は偉い人間というわけでもありませんから! むしろ楽に接してくださいな」


「そうですか!? じゃあよろしくお願いします!!」


 顔を青ざめた母さんに、セリアは笑って返してくれた。オレはしばらく話していて多少なり人となりは分かっているけど、そうでない人からしたら顔を見ることすら畏れ多い崇高の存在だからな。


 それでもすぐに打ち解けられ、人に好かれるのは英雄として語り継がれる所以なのかもしれない。セリアはすぐに父さんやルーシュとも仲良くなってしまった。


「だがまさか……かの有名なセルセリア様を召喚するとはな。僕達の息子はやっぱり大物になるのかも知れんな」


「彼が望むなら、いくらでも私が強く鍛えてあげますよ。なんならガスターさんにも教えましょうか?」


「ははっ! ありがたいですがね。無茶をできる歳でもありませんから」


 いつの間に名前で呼ぶような仲になったのか、父さんとセリアは楽しそうに話していた。酒を交わすとそうなるものなのだろうか。大人になればオレにも分かるのか。


 ときどき母さんや父さんの質問に答えながら紅茶を飲んでいると、ルーシュがくいっとおれの服の裾を引っ張った。


「? なんだ?」


「……ミラはセルセリアさんみたいな人が好みなの……?」


「まさか。綺麗な人だとは思うけど、一体あの人が何歳だと思って……」


「ん??」


 おっと……。口が滑ってしまった。これ以上何かを言ったら確実に殺されてしまうな。ルーシュはオレの答えに満足したのか、裾を話していつも通りの明るい顔に戻った。


「か、母さん達まだ寝ないから! あなた達お部屋で好きにしててもいいわよ!! ねぇ、父さん!?」


「そ、そうだぞ!! なんなら父さん達はどこかに泊まってくるから……」


「茶化すんじゃねーよ!! 親だろ! せめて止めろ!」


 まったく……。変なことを言うのはやめて欲しい。ルーシュも困るだろうに……。オレの親のこういうところは本当にダメだと思う。


「っと、そうだ。セルセリア様、あなたは剣は持ってるんですか?」


「ありますよ、一応。生前使ってた剣は無くしてしまったんですが、普通の剣ならいつでも天が作ってくれるので」


「それなら少し待ってて下さい。セルセリア様に相応しい剣が一振りあるんですよ」


 そう言って父さんは部屋の奥へと消えていった。セリアとルーシュが“何?”とオレに尋ねてきたが、オレもそんなものは知らない。


 グランデュース家は剣士の家系だから倉庫に行けばそれなりのものはあるだろうけど……正直英雄が振るに相応しいものなどあっただろうか。そう考えていると、父さんは思ったより早く帰ってきた。抱えていた長い木箱を机に置いたのだが、それは父さんの部屋の奥にいつも置いてあったものだ。


 その箱には封印の魔法が施されているようで、一度開けばその魔法が解除されてしまうので絶対に開けないようにと言われていたのだが……もしかしてこの中に剣が入っているのか? …………こんな埃臭い箱に……?


「神話には色んな書かれ方をされているのですがね、あなたの話を聞く分にはこの剣はあなたが使うに相応しいかと」


「……?」


 そう言って父さんは木箱を開いた。そこにあったのはただの剣だった。特別重いとか軽いとか、鋭いとかでもなく、ありきたりな剣のようだった。


 強いて言うのなら、剣には封印がされていなかったのにその輝きを失っていないという点では普通ではないか。だが木箱に封印がされている時点で外界とは遮断されていたわけだから別に不思議なことでもない。


 それでも、セリアは何かを感じており、その剣を手に取るとその何かが確信に変わっていた。


「……名前は?」


「“オーディラン”……という名の剣のようです。ずっと昔の剣ですので、使っていた者の名前とグランデュース家に下さった者の名前しか今では分かりませんが。もちろんそれも確かかは分かりません」


「いや、これはエリスの使ってたものね。それにくれたのはエストなんでしょう? 懐かしいわね。彼の持ってた刀と同じようなものだわ……」


 セリアはしばらく剣を眺め、生前の記憶に浸っているようだった。少し目に涙を浮かべながら、確かに過去を見ていた。


 オレ達はそれに水を差すことはせず、セリアが落ち着くのを待った。


 父さんは受け継がれてきた剣の所有権を正式にセリアに渡し、この日は終了した。忙しかったわけでもないのに、朝から晩まで濃い、そして人生で一番長い一日だった。

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