第48話 九つの帝(2)
「歴史の破壊者についてだ。シャルテリアさんが調べてくれていた情報を改めて話すが……一つ、奴らは戦力を貸し出して戦争を促している。二つ、その他にも魔物などを利用して世界中で攻撃をしていると考えられる。三つ、歴史の破壊者を名乗る者達は皆、戸籍などがなく正体が不明。この三つが特筆すべき点だろうな」
「そして先日、歴史の破壊者に新たな動きがあった。それに遭遇したのがミルアルト君だから、詳しいことは彼に話してもらう」
ベルドットさんはそう言って深く座り直した。話をするなんて聞いていなかったので急に振られてオレは動揺してしまった。正直細かく話せるほど覚えちゃいない。
「えっ……ええと……」
「ミラはあのときの記憶が混濁してるかもしれないから。私が正確な情報を話すわね。……まずあれは獄境の大洞窟に行ったのだけど、そこには百体を超える混沌人に加えて混沌竜もいた」
「確かに混沌人だったのですか? 不死人ではなく?」
「それは間違いないはずだわ。まぁその話も後でするとして、とりあえずその後のことを話すけど、ミラが混沌竜を倒した後、No.8と名乗る男が現れた。ソイツは自分を歴史の破壊者と言ってたわけだけど……。シャル、今まで接触した者達は自分のことをなんて呼んでた?」
「余が関わった者達はほぼ全て名などなかったな。……B50やC03などと名乗っている奴はおったわ」
“B50”に“C03”か……法則性があるのかどうかは知らないけれど、もしあるとするならば、もしその番号通りなら、想像以上に巨大な組織なのかもしれない。
「ならもう一つ尋ねるけど、彼らの戦闘力はどれくらいだった?」
「そうじゃな……余が苦戦するほどでもなかったゆえ一般的な四星級か五星級といったところでないか?」
「No.8はあなた達八星級に匹敵する力だった。むしろそれ以上というか……まともに戦って確実に勝てると言えるのはベルドットとシャルぐらいだと思うわ」
「それが“8”ですか? 嫌な話ですね」
誰もが想像しているだろうが、No.8ということは、恐らく1〜7までもいるだろう。数字が強さを表すのかどうかは分からないけれど、八星級に匹敵する実力の者が最低でも八人はいることになる。
それがもしNo.9とか10とか、もっといるとするならば……厄介なんてものじゃない。少なくとも今のオレではどうひっくり返っても太刀打ちできない。
「そしてこれから話すことは予測だけど、まず誰も知らない八星級の戦力を八人も揃えるなんてことは不可能よ。その上出所不明の百体もの混沌人。それらを組織に引き入れるなんてことは普通に考えてできないわ。だから私は、歴史の破壊者のメンバーっていうのは誰かに造られた者達、つまり人工生命体だと思う。そして混沌人や混沌竜は恐らくその失敗作じゃないかな」
「シャルテリアさんが言ってはったやつですか。正直根拠が足りちゃいやせんが、そうなら肉体を造ってる“何者か”を見つけないかんいうわけですな」
「シャルが言っていたのは造った肉体に誰かの魂を植え付けてるってものだったかしら。私が言いたいのとは少し違うわ」
「……というと?」
「猛帝のリラルガだっけ? ルシファーって人と会ったことがあるのは」
「ええ、それは確かに私ですが。確かシャルテリアさんが歴史の破壊者のボスと推測しているとか」
シャルテリアさんの話で聞いたな。13年前の戦争で現れたルシファーという存在、それを目撃したのがリラルガさんだと。当時は七星級の国の軍人だったとか。
「一応聞いておきたいんだけど、ルシファーは当時どれくらい強かったの?」
「そうですね……あのとき私は七星級でしたが、その他にも七星級が軍には十人、六星級が五十人、それ以下が千人近くはあの場にいました。それでもものの一時間足らずで国は壊滅。私は運良く生き残り、それ以降強くなるために鍛えて今に至りますが……正直今の私でもとても敵わないでしょうね。足止めにもならないかと」
「心当たりがあるわ。No.8と会ったときの違和感、アレは魔力が特殊だったから。今ではほとんど存在しない純粋な魔族より、さらに祖に近い性質の魔力を持っていた。混沌人や混沌竜も、魔物というよりも魔族に近かった」
「……というと?」
「ルシファーの正体は恐らく転生した魔神・ルシフェル。アイツが肉体も魂も造り出して、新しい兵力を得たんだと思う。現状何らかの理由で生前の……全盛期の力は振るえていないのでしょうけど、動けるようになったらいずれ世界を飲み込むわ」
「いやしかし……無理な話でしょう。魔神が転生したというところまでは理解できますが、魂を生み出すのは世界の法則を無視している」
魂を意図的に生み出すことはできない。それが世界の法則だ。たとえ創造神様であろうとも、それだけは不可能だ。だがそれを知らないセリアではない。どういうことだ……?




