第47話 九つの帝(1)
「すみません、遅れました。皆さん集まってますか?」
「お前が最後だ。とっととしやがれ」
「偉そうにするでないわ。お主も待たせておったろ。そもそもまだ予定までは時間があるというのに、どの顔で威張っておるんじゃ?」
部屋にはシャルテリアさんも含めて八人が座っていた。ということは不参加なのは一人だけということだろうか。校長は空いている椅子に座り、オレはその後ろに立った。すると、“ピッ”という音とともに何かがオレの頬の近くを通った。
「うおッ……!!」
「ほう……! 案外動けるじゃないか。そいつが今回の議題に関係しているのか?」
「おい! 彼に対してあまり勝手なことをするな!」
「そう怒るな、レイジ。ミラも無事ではないか」
オレに向けて飛ばされてきたのは、魔力を纏っただけのペンだった。反応ができたために回避はできたけれど、異常な速さだった。
それを魔法も使わずにやっていたのだから、やはり法帝というのは化け物だ。挨拶がオレの本気の一振りと速度という面では変わらないのだから。
「落ち着け、お前達。直にラファエル様もいらっしゃる。見苦しい姿を見せるな」
ベルドットさんの言葉によって、部屋は静まり返った。比較的若い彼だが、人類最強という肩書きは伊達ではない。彼の言葉には他者とは隔絶した重みがあるのだ。
「しかしレイジ、俺の攻撃を躱すとはなかなかのものだぞ。一位と二位は変わってねぇだろうが、そいつは何位だ?」
「……ミルアルト君は六位だ」
「六位だとォ!?今はそんなに豊作なのか!?」
「二週間ほどユリハ様の下に行っていたんだ」
「あぁ、なるほどな。そういうことなら納得」
“ユリハ様”という名前が出ただけで、彼は納得してしまった。知ってはいたけれど、法帝達から見ても彼女はそれだけ偉大ということか。
そして一瞬、ほんの一瞬だけ空気がピリついたと思えば、どこからともなくその方は現れた。姿形は人間とそう変わらないというのに、なぜか神々しさや神聖さを感じた。これが天使様という存在なのかと、一目にして理解した。
「……いつもの通り始めたまえ。私は立会人としてここに座る」
「では……」
天使様、ラファエル様は、静かで優しい声でそう言い、そしてベルドットさんの隣の中央の席に座った。瞼を下ろしていたけれど、部屋の隅から隅まで見渡し、全員の心音までも聞いているような雰囲気だった。
「まず今回の議題は一つ……いや、報告が一つと議題が一つだな」
「報告?」
「ミルアルト君の守護者についてだ。……まずは自己紹介をしてもらおうか。ミルアルト君、私達のことは知ってるかな?」
「ええ、もちろんです。ええと……私は中央政府管轄聖都魔法学園・序列六位、グランデュース=ミルアルトです!」
「グランデュース……神話の血族だったか」
少なくとも親や祖父母の代までは世界的に目立った活躍はなかったはずだ。分かっていたことではあるけれど、やはりセリアの名前は大きいということだ。
椅子に座っているのは“大帝”アーサー・ベルドットから順に、“竜帝”ジルダ=シャルテリア、“妖精帝”アリイェット=シュリナ、“暴帝”カナレア=バンドール、“海帝”ガリヌラ=ガラリネオ、“猛帝”バルアリド=リラルガ、“聖帝”ハナンド=リアネール、“天帝”スヴァリア=レインレイド、“魔帝”シュールラ=レイジ、そしてラファエル様だ。
十法帝のうち九人がこの場に集っており、いないのは“剣帝”シリアン=シューレットという方だけとなっている。妖精帝はエルフ、確かセリアと同じパーティにいたフリナというエルフの子孫だった覚えがある。
そして暴帝は先代の魔法学園校長、剣帝はカミュールの母親で、先ほどペンを投げてきたのが海帝だ。
「彼についてはレイジ、君に頼もうか」
「ええ。ほとんどの方がご存知ないかと思うので改めてここで明言しておきますが、彼の守護者は神話の英雄、ネフィル=セルセリア様です。お姿をお見せできますか?」
「もちろん。初めまして、法帝のみなさん」
「ッ!!」
校長に軽く説明を貰うと、セリアは実体化して姿を現した。それと同時に魔力で威圧していたので、全員が疑うことなく受け入れた。
それも当然だ。これほどの魔力を正確に発することなど、そうそうできることではない。最低でも法帝に匹敵する実力を持った者でなければ。
「これは驚いた……お初にお目にかかる。炎の姫よ」
「セルセリア様ですか。お久しぶりですね」
「久しぶりね、ラファエル。天界でもたまにしか会ってなかったけど、こうして現世で会うのも不思議な感じね」
セリアはラファエル様と会ったことがあると聞いていたが、想像以上に仲が良かったのだろうか。顔を合わせるや否やすぐに挨拶をしていた。
「レイジ、セルセリア様とはちゃんと挨拶をしなければならんし色々と尋ねたいことはあるが、とりあえず話を続けろ」
「まずミルアルト君とセルセリア様についてのことは、当分は我々の間だけでしか共有するつもりはありません。下手に公表しても狙われかねないので」
「……そうね。まず間違いなくセルセリア様の能力は八星級、今のミルアルト君の能力差を考えれば危険でしょうね」
「ええ。一旦彼女について伝えるべきことはこれだけですが、次は議題について……ベルドットさん、いいですか?」
「まず前提として、ミルアルト君とセルセリア様はこの話について知っているので心配しないでくれ」
ベルドットさんの前置きで、みんな何の話なのかを理解したようだった。“十法帝にのみ共有されている情報”というものが少ないためか、推測できたのだろう。
はい!
ちょっと十法帝の紹介が雑でしたね!
こちらに名前だけまとめておきます!
現段階で覚える必要はありません!!
“大帝”アーサー・ベルドット
“竜帝”ジルダ=シャルテリア
“妖精帝”アリイェット=シュリナ
“暴帝”カナレア=バンドール
“海帝”ガリヌラ=ガラリネオ
“猛帝”バルアリド=リラルガ
“聖帝”ハナンド=リアネール
“天帝”スヴァリア=レインレイド
“魔帝”シュールラ=レイジ
“剣帝”シリアン=シューレット
通り名の読みが“〇〇おう”なのは女性キャラです。




