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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第三章 会議
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第45話 神話に建てられし聖なる要塞(2)

「それよりさ、あんなにカッコよく魅せたのに、自爆技なんて思わなかったよ。もう使っちゃダメだよ?」


「気づいてたのか。まぁもっと身体が頑丈になるまでは使わないよ。それにもう痛みも引いたし心配はしなくていいから」


「それならいいけど……それよりさっきまで人がいたから聞けなかったけど、ユリハ様は腕も治せるの?」


「うん。……うん!?なっ……えっ? なんで?」


 想定していなかったルーシュの言葉に、オレは分かりやすく動揺してしまった。なんで知っているのか、驚いたのは言うまでもないだろう。


 左肩を見れば違和感はあるだろうが、それを隠すために最近は長袖を着るようにしている。実際、今ルーシュに聞かれるまで誰にも言及されなかったのに……。


「どれだけ長いこと一緒にいたと思ってるの? 歩いてるときも左腕がぎこちない感じがしたし、よく見てみたら腕自体いつもとちょっと違うんだもん。…………痛いの?」


「いや、痛くはないかな。ただ馴染むまでは時間がかかるっぽくて、まだあんまり上手く動かせないんだ」


「じゃあ、手を貸して。私が完璧に治してあげる」


「……?」


 よく分からなかったけれど、オレはルーシュに言われるがままに手を出した。彼女の小柄で柔らかい手のひらから、春の太陽のように温かい魔力が流れてきた。神経の隅から隅まで温まる感覚になった。


 血液が勢いよく左腕に巡り、ジンジンと熱を帯びていった。細胞が騒ぎ始め、痛みとも取れるその感覚はオレの腕に生きていることを感じさせた。


「すごいな。いつの間に治療ができるように……?」


「私の能力スキルって生命を生み出すものでしょ? 治癒魔法とは少し違うけど、細胞を活性化させるの。どう?」


「すっかり元通りだよ! 感覚も握力も……!!」


「そっ? 良かった!」


 ルーシュはさっきまでの固い顔から、いつも通りの朗らかな笑顔を作った。安心したのかは分からないが、その顔を見れたのでオレとしては満足だ。


 それからもう少しだけ二人で散歩をして、寮の前で別れた。オレはベッドに飛び込んでそのまま深い眠りについた。


***


 次の日、学園に行って最後の時間は、クラスで学外学習についての授業だった。オレは昨日カミュール達に話したことをラルヴァとリアンにも話した。


 リアンはいつものようにうだうだと弱音を吐いていたけれど、ラルヴァは当然乗ってきた。リアンには強制でもないので無理はしなくていいと伝えたのだけれど、そう言うと“そんなこと言うなよ! 僕のことを除け者にするのか? 行くよ! 行けばいいんだろ!?”と言って承諾した。なんか……面倒くさいやつだな。


「許可は出せません。ミルアルト君、君はこの前大変な目に遭ったばかりでしょう? なんでそう危険な道を進もうとするんですか」


「オレと同じ歳でも迷宮ダンジョンに行く人はいますよ。2階層までならよほどのことがない限りはその辺の山と同じですよ」


「それはそうですが……ですけどね……」


「お土産も買ってきますよ」


「そんなことを言っているんじゃありません。学外学習でわざわざお土産なんて……ご両親に買うだけでいいですから」


「ウサギ饅頭でも買ってきますから」


「…………そこまで言うなら条件をつけます。まず全員がご両親から許可をもらうこと。何があっても3階層以下には入らないこと。迷宮ダンジョンに入る際には必ず帰還石を持って入ること。その上で引率を付けるので、その人には必ず従ってください」


 帰還石とは転移魔法が刻まれた小さな魔石のことだ。一回限りしか使えないけれど、魔力を流し込めば転移魔法が発動して決められた座標に転移する。


 つまり危険が迫った際に迷宮ダンジョンの外に転移するための道具だ。多少値は張るけれど、大抵の冒険者は常備している。


 難点を挙げるのならば転移魔法は複雑であるために小さな魔石では扱いが難しく、迷宮ダンジョン内でしか発動しないという条約の上で成り立っているところか。


「引率というと?」


「それは校長先生に探してもらいます。私が行きたいところですけど、一つの班に付きっきりになるのもよくないですから」


「じゃあオレ達はとりあえず親に許可を取ればいいんですね。ありがとうございます!」

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