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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第三章 会議
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第43話 予定(3)

「では二人の好きなタイミングで始めなさい」


「分かった。……シュベッツ、アンタに一応聞こうか。序列が一つ上の人間に争奪戦を申し込むのはおかしなことでもないけど……なんでオレに?」


「強い者が上に立つのは当然のことだ。だが、カッコ悪いかもしれんが、後輩に劣っているというのも気に入らないんだ。カミュールは俺より強かった。だからお前も俺より強いのか、俺は納得したいんだ」


「なるほど、いいじゃんないか? 上辺ばかり取り繕ってるヤツよりはよっぽどカッコいいと思うけどな。だからオレも全力でアンタに勝とう」


「全力とは言うが……剣は抜かないのか?」


「傷が癒えてないんでね。手を抜くというわけじゃない。色んなスタイルを模索してるんだ。剣がないと戦えないんじゃ、戦いの中で戦えずに死ぬかもしれないから」


 そう言ってオレは拳に魔力を込めた。ユリハ様に作ってもらった左腕はまだ馴染んでいない。こんなのでは片手でしか剣を握ることができないから違うスタイルでやった方がいい。


 まぁ慣れないことはするものではないが、肉体はずっと鍛えてきたからな。剣の有無は言うほど不利でもない。


「ならば俺も武器を使うのはやめよう。同じ土俵で戦った方が公平だもんな」


「優しいな。惚れちまうよ」


 シュベッツは薙刀を使っていた記憶がある。彼の嵌めている指輪に空間収納アイテムボックスの魔法が刻まれているんだ。序列戦ではそれをバチバチと鳴らしながら取り出していた。


 その様子がないあたり、本当に使う気はないらしい。オレとしてはどっちでもいいと思っていたけれど、妙に律儀な人だ。


「ほう……五星級の下位といったところか」


「行くぞ……!」


「くッ……!!これは……!」


 オレは魔力を身体中に巡らせてシュベッツに飛びかかった。魔力を可能な限り高速で回し、なるべく体内に留めながら身体を動かした。身体強化も使って速度と膂力を底上げし、シュベッツのみぞおちに重い一撃を入れた。彼はなんとか意識を保ち、飛び上がって距離を取った。


「……魔力そのものに刃があるのか。殴られただけなのに身体の内側までズタズタだ。グランデュース家特有の能力スキル……流石だな」


「今回は早く終わらせよう。正直言って相当無茶してるんだ」


 魔力を相手に流し込むことで体内まで斬ることができるが、それを有効にするには相当な量の魔力を圧縮して流さなければならない。そうでなければ相手の魔力に相殺されてしまうからだ。オレの魔力が他の魔力を滅するとは言っても、シュベッツも五星級、そう楽ではない。


 オレの徒手空拳での戦い方を把握したシュベッツは、そこから猛攻に出た。素早い打撃が繰り出され、オレは受け止めたり身体を捻ったりしていなした。


 力も素早さも、魔力量でも、勝っているのはシュベッツの方だ。だがオレには圧倒的に勝っている部分がある。それが、それだけがオレを優位に立たせていた。


「速いッ……!!」


 速さでオレを超えていても、最適な動きをすれば捉えられることはない。猛攻を回避し、地面を蹴り上げて飛び上がった。


 身体強化をより集中し、一瞬だけ、シュベッツには捉えられないほどの速度スピードで彼の頭上に移動した。手のひらに白天を作り出し、それを爆発寸前まで膨張させた。


「『勾玉まがたま』!!」


「ぐぬぁッ……!!」


「ッ!!」


 膨張した白天を、爆発と同時にシュベッツの体内に流し込んだ。魔力は爆散し、彼の身体の内側から爆撃と斬撃が発生した。


 バリバリと鳴りながらシュベッツの身体は傷つき、彼は闘技台の結界外へと転移させられた。闘技台も随分とボロボロになってしまった……というか大破してしまったが、時間が経てば勝手に修復してしまうらしい。なので気にする必要はない。


 シュベッツはなかなかに強かった。オレ以上の力は持っていたけれど、そんな彼にオレが勝てたのはセリアと訓練をしていたからだろう。


 たぶんオレの強さは能力スキルや固有の魔力などではなく、ただこの経験なんだろうな。それが他の人達にはない圧倒的な優位性だ。


「勝者、グランデュース=ミルアルト! 異存はないな?」


「もちろん……。負けたのは俺だからな。ありがとう、ミルアルト」


「ッ……いや、オレの方こそ楽しかったよ」


「……ねぇ、アンドラン君。……ウチ思ったんだけどさ……」


「皆まで言うな。俺だって分かるぜ。アレで本調子じゃねぇってんなら俺らも危ねぇよ。……ルーシュの奴との試合も見てたが、あのときより強くなってやがるな」


 今の試合を見ていた生徒会のみんなが、ザワザワと話していたけれど、よく耳に入ってこなかった。騒ぐほどではないけれど、我慢するにはあまりにも辛いことが起こっていた。


(大丈夫……じゃないか。白天は爆発させちゃダメだよ)


(試してみたかったんだ……先に言っといてくれよ……)


 オレが右手の激痛に耐えていると、セリアが頭の中に話しかけてきた。白天は小さな弾丸ほどの大きさしかないけれど、そのエネルギー量は半端ではない。


 オレから少し離れたところで爆発させたというのに、腕の骨が悲鳴を上げている。そしてどうやら……結界では自傷は防げないらしい。この技はしばらく封印だな……。


(昔エストが白天を大爆発させる技を使ってたんだけど、そのとき腕が吹き飛んだから本当に気をつけた方がいいわよ。まぁアレはミラのやつとはサイズもエネルギー量も違ったけど)


(怖ッ! 先に言っといてくれよ! ……エスト様の白天はどれくらいの大きさのヤツだったんだ?)


(うーん……拳くらい……よりは大きかったかな。小さめの大砲の砲弾くらい?)


 (……そんな凄かったのか?)


 (うん。乱射してた)


 マジか……やっぱり化け物なんだな。オレもそれくらい強くなりたいな。


 オレは闘技台から降り、みんなのところに向かった。少し試合の感想を話し、シュベッツとは改めて握手をした。これで認めてもらえただろうか。


 そうでなくとも、いくらでも受けて立とう。今の試合は楽しかったから、多少忙しくてなったとしてもこういった戦いは何度でもしてみたい。

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