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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第二章 魔天皇の城
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第34話 歴史の破壊者(3)

 そして二日後、やっとの思いでオレはベッドから降りた。身体はまだ痛むけれど、動けないほどではなかった。


 それでもまだ素早く動くことはできないし、左腕にはほとんど力が入らない。オレは弱々しい足取りでユリハ様に挨拶に向かった。


「まぁ! お久しぶりですね! こちらへは何のご用で?」


「いえ、たまたま近くに来ていたら歴史の破壊者(デスティニー)が出たという話を聞いたので。何やら大変だったそうですね?」


 ユリハ様の部屋まで来ると、中から誰かと話している声が聞こえた。若い男の声だったが、ユリハ様の話す雰囲気からして魔族ではなさそうだ。気にはなりながらも、とりあえず扉をノックして部屋に入った。


「ユリハ様、お世話になりました。それと……!!」


「君が歴史の破壊者(デスティニー)と遭遇したという子か。初めまして。私はアーサー=ベルドットという者だ」


 アーサー=ベルドット、その名を知らない者はいない。今の世において“人類最強”の名を冠する男だ。


 五年前、突如としてその頭角を表し、八星級に至ってからわずか一週間で九星級と認められた。それまでは一切名を聞かなかったためしばらくは世間も認めていなかったが、今ではその実力を疑う者はいない。


 校長やシャルテリアさんと比べてもさらに別格の存在だ。雰囲気オーラは静かなものだが、生物としての本能が彼から圧力を感じている。


「……初めまして、グランデュース=ミルアルトと言います。オレはすぐやられてしまったんであまり覚えてたせんが……」


「グランデュース……神話の血族か。なかなか良い魔力を持っているようだけど、太刀打ちできなかったのかい?」


 「直前まで大量の魔物と戦っていて……そうでなくとも負けてたでしょうけど。意識を失った後はオレの守護者とユリハ様が助けてくれたらしく……。近いうちに知るでしょうからこの際言ってしまいますが、オレの守護者というのがネフィル=セルセリアなんです。彼女がいなければ死んでいたでしょう」


「ほう……なるほど、近々行われる十法帝会議はそれについてということか。運が良いのか悪いのか、災難だったね。何にしても若い命が摘まれなくて良かった」


 今度行われる十法帝会議には校長やシャルテリアさんから誘われている。神話の時代の英雄が現れたことを詳しく伝えなければならないからだ。今はまだそれらは知られていないようだが、セリアのことを聞いただけでそれを理解できたのか。


「私はそろそろ帰るとしよう。立ち寄っただけなのでね。ユリハ様も、お邪魔しました」


「ええ、お気をつけて」


「あのッ……!!」


「……?」


 帰ろうとするベルドットさんに、オレは自ら声をかけた。多少の躊躇いはあったけれど、逃げたくもなかった。


「オレはアンタと同じ九星級を目指します! 九星級は一人まで……。まだまだアンタには敵わないけど、ずっと強くなってアンタを超えてみせる!!」


「ふっふっ……。威勢が良いじゃないか。死に目に遭ってまだ高みを目指すとは……。いいだろう」


「ッ!!」


 ベルドットさんは言い終わると、いつの間にか槍を持っていた。そしてオレはそれに反応することができず、気がつけば喉元に刃が置かれていた。


 全く見えなかった。本気ではないだろうに、魔力の動きさえも捉えることができなかった。オレとは次元が一つも二つも違っているんだ。


 混沌竜カオスドラゴンとの戦いでオレはずっと強くなったはずなのに……。


「私の一撃を……対応できずとも構わない。見切れるようになれば、私の師を紹介してあげよう」


「師匠?」


「私をここまで鍛え上げてくださった方だよ。あの方のことは私も詳しく知ってるわけではないが、恐らく誰よりも強いお方だ。法帝の誰よりも、そして当然私より……恐らくユリハ様よりもね」


「それはまた……すごいですね」


「……またな」


 どこまで本気で言っているのかは分からないが、九星級の師匠ともなると確かに規格外の強さを持っていることだろう。八星級に匹敵する力を持っていてもおかしくはない。むしろそっちの方が納得がいく。


 ベルドットさんは何か用があったわけでもなく、本当にただ立ち寄っただけらしい。オレとの会話を終えると、すぐにどこかへ行ってしまった。

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