第33話 歴史の破壊者(2)
「ありがとうございます」
「いえ。ミルアルト君がどれくらい覚えているかは分かりませんが……まず君が洞窟に行ってから二週間が経ちました。君は洞窟でNo.8という者から襲撃を受け、大怪我を負ったようです」
「私が回帰魔法で傷を治して命は取り留めましたが、回帰魔法で巻き戻せる時間は限られているので混沌竜との戦いで受けた傷は治せませんでした。加えて失った血や腕まで治すことはできなかったので、そのせいで目を覚ますのが遅くなったみたいです」
「…………腕ありますけど」
オレは失ったはずの左腕を上げて見せた。No.8とかいう男にちぎられた覚えはあるが、確かに今、オレの左腕はある。
「それは私の創生魔法で作った腕なので、違和感はあるでしょう? 馴染めば普通の腕と変わらないでしょうけど、少し時間がかかります。それでもかつてほどの腕力は戻らないでしょうが。それと作った腕とは言っても痛覚はあるので気をつけてくださいね。神経を通わせるためには必要でして」
「そんな、感謝しかありませんよ。片腕がないと剣を振りづらくなりますから。……それより……なんか凄い魔法を使われたんで?」
「おじ様が教えてくれたんですよ。魔力消費が酷くて他の人には使えないでしょうけど…… 私は魔力切れを起こしませんから」
おじ様……っていうとネフィル=エスト様のことか? ……なんでそんな魔法を教えられるんだよ。
「……二週間? ってことはもう帰らねぇと」
「無理しちゃダメよ、ミラ。レイジさんには私から連絡しておいたから、心配しないで、今は回復に専念しなさい」
「そっか。分かった」
「それと、君を治してから私が大洞窟に行ってみたけれど、特になにも残されてませんでした。No.8を追うことはできません」
そうか……。まぁ今追ったところでオレはアイツには敵わない。もっと力をつけないと……。もっと……もっと……。
「あら、寝ちゃった」
「……仕方ありませんよ。疲れてるでしょうし、まだ15なんでしょう? それなのにこんな目に遭って………本当に申し訳ありません……。私がお姉様達を大洞窟に案内したばかりに………」
「ユリハは悪くないわ。魔物と戦うなら命懸けということくらいミラも理解しているし……その上で守れなかった私の責任よ」
「……No.8というのはお姉様よりも強かったのですか? シャルが今まで遭遇した歴史の破壊者はせいぜい六星級だと聞いていますが」
「不意を突かれた感じだから何とも言い難いけど……まともに戦えば私の方が強いけど、油断はできない相手ってところかな。たぶん十法帝と比較しても遜色ないくらいかな」
「……なら幹部級ということですかね? もしそうなら逃げられたのは痛いですね」
「どうだろ……まだ歴史の破壊者がどんな組織なのか、よく分かってない以上は断定もできないよ。……まぁ最初の目標は達成してるからいいわよ」
「……というと?」
「ミラは五星級になってる……! たぶん混沌竜を倒したときね。死線も潜り抜けたわけだし、前よりずっと強くなってるよ」
「そうですか! それは素晴らしいですね!!」
それからオレが再び目を覚ましたのは数時間後のことであった。流石に腹が空き、数日分の食料を一気に平らげた。異様に食欲が湧いていたのは体力を回復させるためなのか、はたまたオレが成長したからなのか。
セリアから指摘されて気がついたがオレはどうやら五星級になっていたらしい。色々あって気づけなかったが、確かに魔力が全身から溢れていた。死ぬところだったが結果として生きていたし、正直不可能だと思った昇級もこの短期間で成し遂げることができた。案外悪いことばかりではなかったのかもしれない。
「……何日くらい安静にしてたら治るかな?」
「普通は“日”じゃ治らないわよ。まぁ二日もすれば動けるようになるんじゃない? 腕が馴染むのは一ヶ月くらいって言ってたけど」
「それまでは身体動かさない方がいいかな?」
「そりゃね。もし何かあったら動かなくなっちゃうかもよ? そのときは私が斬って、もう一回作ってもらえるようにユリハに頼むけど」
「…………ちゃんと安静にしとくよ」
「そうしときなさい」
セリアに説得され、オレはその日と次の日は寝たきりの状態だった。食事だけはなんとか摂り、暇なときは魔力を練っていた。
五星級になり量は当然のことながら、質や密度が大きく向上しているのを実感した。
それに加えて属性効果もより大きくなっているようで、指先に魔力を集中するだけで極めて至近距離の周りの空間が歪んでいた。魔素を分解しているせいだろう。




