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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第二章 魔天皇の城
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第31話 “8”(3)

「……セリアは治癒魔法は使えるか……?」


「ちょっとだけね。痛みを抑える程度のものだから、応急処置が終わったらお城に戻りましょ。もともとこんな傷を負うほどの相手だと思ってなかったから……私がおぶっていくわ」


 ……そういえばユリハ様は十日後くらいに迎えにくるって言っていたな……。流石にこんな傷で、こんな不衛生なところで十日は待てない。大人しくセリアに従っておいた方がいいか。


 オレはセリアの指示に従ってちょうどいい大きさの岩に腰を下ろした。彼女の魔力が全身に巡り、少しずつ温かくなったと思えば痛みが和らいでいった。


「……今度から毒はちゃんと避けなさいね。今回は私が燃やしてあげてたから軽傷だけど……勝てる相手にも勝てなくなるわよ。毒で死んだら辛いのくらい分かってるでしょ?」


「……ごめんなさい」


 毒が効きづらいのはオレの力だと思ってた……。まさかセリアのおかげだったとは……恥ずかしい。自惚れていた。


 どう転んでもセリアの力無しには勝てなかったということか……。……まだまだだな。


「……それで……混沌竜カオスドラゴンが出たから人が集まって……それで殺されたから混沌人カオスゾンビが大量に生まれたってことでいいのかな……? ドラゴンの死体が先なら納得もできる……」


「まぁ……その可能性もあるのかもしれないけど、それだとこれまで騒ぎになってないのがおかしいかな。この洞窟は元から魔物はよく出るんでしょうけど、だからってあの数の混沌人カオスゾンビは異常よ。まるで意図的に連れてこられたみたいな……あるいは作られたとか?」


「……まさか」


 魔物を作るなんてことは不可能だ。人が魔素を操れないのだから、魔素から生まれる魔物を作るなんてことは……仮に魔素を多少操れる人間がいたとしてもあり得ないだろう。


「おいおい……何かおかしいと思ったら、みんなやられちゃってるじゃないの。王には一体なんて伝えればいいんだか……」


「ッ!!?」


「ミラ!!」


 聞き慣れない声がしたかと思い振り向くと、目の前に大きな男が立っていた。禍々しい魔力に勝手に身体が反応し、オレは痛みを我慢しながら立ち上がった。


 しかしそれ以降身体を動かすことはできなかった。腹部に違和感を覚えて視線を落とすと、男の腕がオレの腹を突き刺していた。


 まだ温かく赤い血が男の腕を伝い、オレは脚から力が抜けていった。膝が地面につき、男の手が抜けた腹からはドクドクと血が流れ出して地面は赤黒い鏡になった。


「ミラから離れてッ!!」


「うるせぇなぁ。なんだアンタは……!!」


 セリアが剣を抜きながら男に突進したが、その男は重い音とともにそのままセリアを殴り飛ばした。セリアは洞窟の壁まで吹き飛んだが、傷は負っていなさそうだ。だがセリアに攻撃を当てられるなんて……何者だよ……コイツは……。


「ぐッ……ぬぁあ!!」


「根性だけは認めてやるよ」


「あぁあああ!!」


 なんとか動く左腕で殴ろうとしたが、痛みと血の流しすぎで腕力や魔力だけでなく思考力がほとんどなくなっていたようだ。


 何も考えずに伸ばした腕は、ブチブチという音とともに男に引きちぎられた。そしてそのまま穴の空いた腹を蹴られ、セリアと反対側の壁に打ち付けられた。


 いよいよ意識を保つことができなくなり、視界は闇に閉ざされていった。


「ミラ!!意識を保ちなさい!!」


「!?……ホントになんなんだよ、アンタ。結構強く殴ったのになぁ……?」


 男は疑問を解こうと考えを巡らせ、その様子を見ながら今度はセリアが男を剣で吹き飛ばした。少し斬られたようで口から血を流していたが、重傷ではない。


「この力………あぁ……そうか。アンタあれだろ。ネフィル=セルセリアだろ? 大物じゃねぇの。……ってことはその小僧が聖都魔法学園のグランデュース=ミルアルトだな?」


「なッ!?」


「うーん……。参ったなぁ……どーも……」


 男はセリア達のことを知っているようだった。そしてその正体を知るや否や、先ほどまでの勢いを失って転移門を開いた。


「そういうことなら、アンタらを殺すのはまだだ。王の準備が整ってねぇんでな」


「待て! お前は何なんだ!!」


「うん? あぁ……俺は歴史の破壊者(デスティニー)No.8(ナンバー・エイト)、いずれまた会うだろうからな。覚えとけよ」


「……ミラを急いで運ばないと……!!」


 セリアはとりあえずミラの流血だけ抑えて、彼を背負って急いでユリハの城へと走っていった。偶然、洞窟の異変を察知したユリハが洞窟の入り口まで迎えに来ており、転移魔法ですぐに城へと戻ることができた。


 ユリハの特殊な魔法でミラは瀕死の状態から回復し、目を覚ましたのはこの出来事から二週間後のことだった。

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