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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第二章 魔天皇の城
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第25話 長旅ご苦労(1)

 全てが燃える夢を見た。肺が焼けるほど熱い、セリアの炎よりも熱い炎が、家も学園も、街も空も人も、目に見えるものを全て焼いていた。


 セリアの優しい炎とは違って、その炎はオレの大事なものを奪おうとする。それを許すまいと大人達が消火しようと水を被せるけれど意味はない。


 その炎を誰が点けたのか、オレは知っている。みんな知っている。けれど誰がその炎を消したのか、それは誰も知らなかった。



 夢の炎に飲み込まれるかと思ったとき、気付けば外は明るくなった。久しぶりに嫌な夢を見たな。そしてこの夢を見たときは決まって身体が重くなる。


 人の身体が重くなるのは、何かを背負ってるときか体調が優れないときだけだ。熱を出したときは決まってこの夢を見る。


 オレの幼い頃の記憶と今の記憶が混ざるせいで、当時よりも悲惨な景色を眺めることになった。今日は寝起きから最悪だ。


「おはよう! 起きたんだね。うなされてたけど、大丈夫?」


「……色々と言いたいことはあるんだけど……まずここは男子寮だぞ?」


 目を開けた先にはルーシュが座っていた。セリアは見当たらない。もう昼になる時間だからどこかに行っているのだろうか。


「セリアさんが許可してくれたのよ。熱が出てるなら一人にはできないって。セリアさんは校長先生に会いに行ったわよ。約束は守らないとって言ってた」


 約束と言えば……セリアの生きていた時代について話しているのだろうか。……ダメだ。イマイチ頭が回らない。オレは水とルーシュが切ってくれたりんごを食べた。


「今日が休日で良かったよ。序列戦でこんなに疲れるなんて……情けないったらありゃしない」


「緊迫した戦闘の中で昇級したんだからそんなもんだよ。それにセリアさんから聞いたけど、あの“とっておき”の技は結構無理してたんでしょ? ギリギリになってまで私に勝とうとしてくれたのは嬉しいよ」


「ははっ。上から目線だな。オレがいつか同じことを言ってやるよ」


「それは楽しみだね。ならそれまで負けずに待ってるとするよ」


「あ! ミラ、起きたのね! 具合はどう?」


「良いって言ったら違うけど、だいぶ楽だよ。一日休めば治ると思う」


 校長室から帰ってきたセリアが、扉を開いて部屋に入ってきた。何か楽しそうな顔をしているが……校長と面白い話でもしたのか? よく見れば右手に手紙のようなものを持っている。


「ミラは今学園でやらなきゃいけないことってあるの?」


「今……は別にないかな。なんで?」


「レイジさんが連絡してくれたから会いに行こうと思うの。あの子ったらこっちに来ようとしたみたいだけど、それなりの立場があるみたいだからね。私達がこの紹介状を持って向かうことになったのよ。ついでだしミラにはそこで魔物といっぱい戦ってもらうわよ」


「予想はつくけど、あの子っていうのは?」


「ユリハよ。獄境の王に会いに行くわ。校長から休みの許可は取っておいたからその辺りは心配しなくていいわよ」


「獄境!?私も行く! 私も連れてってください!」


「ルーシュはダメだろ。流石にまた無断で休んだら教官がお怒りになるぞ。……っていうかもう怒ってんだろ」


「そうだけど……」


 天転召喚のときに、ルーシュは既に無断欠席をしているからな。そのことで鬼教官にはだいぶキレられたと聞いたし……ルーシュのためにも今回ばかりは連れていけない。


「ごめんね、ルーシュ。私も一応レイジさんにお願いはしてみたんだけどさ、普段のこともあってルーシュは認められないって。特に許可をしたらレイジさんが鬼教官に怒られるからって拒否されちゃった。家族旅行ってわけでもないしね」


「校長はそれでいいのか……。まぁ自業自得だよ。お土産は買ってくるからルーシュは留守番しててくれ」


「……私、真面目に生きようかな」


「急に悟りを開くな。無理だし」


「“無理だし”!?!?」


 ルーシュはたぶん、普段から授業をサボったりしているのだろう。今さら真面目な人間になれるとは思えないし、なってほしくもない。ルーシュは今のままが一番良いんだ。


「で、出発は明日で二週間滞在ね。その間に魔物を狩って狩って狩りまくって五星級まで引き上げるわ。それと一ヶ月後に法帝会議があるみたいだから、帰ってきてから二週間くらいでそれに参加するわよ」


「ハードスケジュールにも程があるだろ。たったの二週間で五星級だって? 昨日四星級になったばかりなのによ」


「なんとかなるわよ。……いや、なんとかするの。ミラは五星級までなら順調に魔力を増やせるだろうしね。私はもう少しレイジさん達と話してくるから、ルーシュちゃんはミラの面倒お願いね」


「はい! 任せてください!」


 そう言ってセリアはまた部屋を出て行った。嵐のようだったな……。獄境に行くことを伝えるためだけに帰ってきたのか。


 まぁ明日出発なら今日の夕方とか夜とかに言われても困るんだが。……いや、昼から言われても結構困るな。……別に用意するものもないし構わないか。


「そうだ。これだけは言っておかないと。……ミラ、序列六位おめでとう! これから序列を奪おうとする人達がミラに挑戦しにくるだろうけど、頑張ってね!」


「そういえばそうだな。ルーシュも準優勝おめでとう」


 序列を奪う決闘、“争奪戦”は、下位のクラスの者はいつでも、何度でも挑むことができる。そして序列持ちと同じか上位のクラスの者には、その権利は年に一度しか渡されない。争奪戦で挑戦者が勝てば序列を明け渡すこととなり、それ以下の序列の者は繰り下がることになる。


 例えばオレが争奪戦に負ければオレの序列は七位となり、元八位の者は序列を失うことになる。ルーシュが負けたとしても新しい序列二位が生まれ、ルーシュは三位に、それ以下は一つずつ降格する。大抵の場合は序列八位か七位あたりに挑戦する者が多いために上位が変動することは少ないが、能力の相性などによってはその限りではない。


 それらを考慮してもルーシュやジンリューなどに関して言えば勝てる者はいないと思うが、オレやカミュールは上級生に目をつけられるだろう。まぁ連戦の場合には拒否権があるので、結局オレ達に挑む者は多くないだろう。


 だが上位の序列が変動すること自体は珍しいことでもない。争奪戦においては滅多にないと言っていいが、序列内での“決戦”では序列は稀に変わる。決戦を行う権利は上位の序列持ちの数だけ得られるため、オレの場合は最大で五回挑むことができる。


 序列を上げればその分の決戦を挑む権利は減るわけだが、決戦か争奪戦によって序列が落ちた場合にはその権利が増えることはない。だからそういった場合に備えて、ほとんどの者は学年末までは権利を消費することはない。

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