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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第一章 序列戦
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第24話 とっておき(2)

 オレは充分なエネルギーになった魔力、魔天をルーシュに向けて放った。その光は人の目には残像にしか映らず、セリアの言った通り光の線、光線レーザーにしか見えなかった。


「『白天ハクテン』……!!」


「くッ……!!」


 ルーシュは咄嗟に植物の壁を作り出して光線を防ごうとした。しかしそんなものに遮られるわけもなく、ありとあらゆるものを貫く光線はルーシュにまで至った。


 彼女の反応速度より何倍も速く、防御することは叶わない。白天はルーシュを貫いたかと思えば、そのまま止まることなく空にも穴を開けた。


「ふぅ……。ははっ。参った! オレはもう戦えねぇや」


「はっ……はははっ!! 凄いよ! 凄いよ、ミラ!! まさかここまでの力があるなんて!! ……セリアさんにいっぱいしごかれたんだね」


 白天はルーシュの肩を貫いたようだが、それ以上のことはなかったみたいだ。実戦ならあるいは大きな一撃だったかもしれないが……どっちにしたってオレは魔力も底をついて戦うことはできない。腕力だけではどうにもならないからな。


 ……白天はあまりにエネルギーが大きいから制御が簡単ではなかった。脳天を撃ち抜ければ勝てたんだけどな……まぁそれも含めてオレの負けだ。


「目を離せぬ激しい戦いでした!! 二回戦、第十一試合勝者は!! 生徒会副会長! アリベル=ルーシュ!!!」


「グランデュースの最後の技……アレはなんだ?」


「あの子の能力スキルは魔法を斬るものと聞いていたが……」


「面白い子だなぁ……。ルーシュの友か。……生徒会ウチに勧誘してみるのもいいかもな」


 オレは剣を回収して選手室へと戻った。観客席はオレの使った白天のせいでざわざわとしている。フラフラとした足取りでなんとか選手室に戻ったが、そこも変わらず騒がしくなっていた。


「おい、ミルアルト! 最後の技はなんなんだ!? 剣術じゃねぇよな!?」


「あぁ……まぁ色々あるのさ。アレだよ……あの……守護者から教えてもらったんだ」


「守護者の技なのか?」


「……まぁそんなところだ。ちょっと疲れたから……休ませてくれ」


「そうか。寝とけ寝とけ」


 序列戦が終わって校長が序列を発表するまで、オレ達は帰ることはできない。できればカミュールの試合も見ておきたいけど、正直そんなに体力の余裕はない。オレは椅子に座って瞼を下ろした。


 以降の試合は順調に進んでいった。カミュールは序列八位のガムレット=スペードという者に激戦の末なんとか勝利し、三回戦、準々決勝で生徒会長・サンダーグラス=ジンリューに敗北した。そしてジンリューとルーシュが勝ち進み、万人の予想通り決勝は二人の対決となった。


「いよいよ序列戦は終わりを迎えます!! 決勝は皆さんの期待通り、この二人の対決です!!」

「生徒会副会長にして序列二位!! アリベル=ルーシュ!!」

「そして生徒会長にして序列一位! 学園唯一の七星級の戦士!! サンダーグラス=ジンリュー!!」

「両者ともこれまで圧倒的な実力で勝ち進んでいます!! 最後にして最高の一戦! 序列戦決勝!! 始めッ!!」


「いつものふざけた態度……今日で叩き直してやるか」


「私に勝てるつもりでいるけどさ、負ける可能性も考えなよ」


「負けを想定するわけがないでしょ」


 そして一秒にも満たないほんの一瞬のうちに、ルーシュの剣とジンリューの拳が衝突した。そしてその衝撃が大地を揺らし、観客席を震わせた。


 ルーシュは躊躇うことなく森を生み出し、オレと戦ったとき以上に禍々しい森になっていた。蔓と大樹が蛇のように唸り、黒い雨が降り始めた。闘技台の環境のみならず、天候さえも支配下においているようだ。


 その分魔力消費も激しそうだったが、温存するほどの余裕を持って戦うことはできないようだ。


 しかしジンリューはそれに怯むことなく、堂々と立っていた。そしてその瞬間、彼の力の片鱗を見ることができた。


 襲いかかる森に手のひらを向けたかと思えば、そこから放たれた魔力の雨のようなものが森を破壊した。大樹には無数の小さな穴が空き、その穴がどんどんと増えてその大樹は消滅した。


「相変わらずその『空間支配』……破壊的な力だね……!」


「お前の力は厄介だけど……やっぱり俺の力とは相性が悪いな」


 ジンリューの能力スキルは空間を破壊するような力だろうか。いや、目に見えないほど小さな何かを操って、それが触れた場所を無に帰す力と表現した方が正しいか。手のひらから出したその何か、粒子が大樹を、森を削り取っていったんだ。


 ルーシュはなんとか剣術で喰らいついていたが、それでもジンリューの破壊力には敵わなかった。生み出された植物はことごとく滅せられ、ついには首を掴まれて剣を払われた。


「……優勝は俺でいいかな?」


「ふっ……ここまでされちゃ認めないわけにはいかないよ。仕方ない。私は今回も二位で諦めるとするよ」


 そう言ってルーシュは結界の外に出た。首は落とされないまま、勝負は決した。どうやらジンリューとルーシュとの間には、随分な差があるようだった。


「序列戦決勝! 勝者はァ!! 生徒会長! サンダーグラス=ジンリュー!!」


 観客席は歓声に包まれていた。勝者が決まったのだ。誰も興奮せずにはいられない。当の二人は冷静であるが。そしてそんな湧き上がっている観客の視線の中、校長が闘技場の中央に現れた。


「諸君、よくこの試合を見届けてくれた。私はシュールラ=レイジ、ご存知の通り本校の校長だ。せっかくなのでこの場を借りて新しい序列を発表しようと思う。この序列は試合を通して私が決定したものだ」

「それでは順に発表する!」


  “八位 三年・ガムレット=スペード”


  “七位 四年・タームレイド=シュベッツ”


  “六位 一年・グランデュース=ミルアルト”


  “五位 一年・シリアン=カミュール”


  “四位 二年・ジルガス=アンドラン”


  “三位 四年・フリダム=ミライア”


  “二位 三年・アリベル=ルーシュ”


  “一位 四年・サンダーグラス=ジンリュー”


「以上が序列入りした者達の名だ。名を挙げられた者達は決して驕らずますます力を極め、そうでない者は決して折れず、ぜひとも彼らの地位を奪いたまえ。そして今一度、私からは精一杯の賛辞を送ろう!!」


 校長の言葉とともに、序列戦は終了した。それまでの盛り上がりがまるで嘘かのように、流れるように帰路についた。


 思い返せば上位の二名は群を抜いて強かった。八位から三位までの実力は団子であろうが、そんな今のオレ達ではどう転んでも実力でルーシュやジンリューを打ち負かすことはできない。


 だからこそ、ルーシュと当たるのが後半であったならと、そう思うこともできるが……。


 オレは寮に戻ってベッドにうつ伏せになった。オレの感情を無視するように、このベッドの柔らかさは今日も変わらない。優勝と意気込んでいたオレを嘲笑うようなフカフカ具合だ。


「セリアはオレのことを慰めてくれたりはしないのか?」


「戦う相手なんて実戦じゃ選べないからね。よくやったとは思ってるわよ。四星級にもなって」


「ははっ……。相棒が同じ思考っていうのは楽でいいな。凹んでる暇なんてないんだから……頑張るしかねぇ」


「……凹む暇くらいはあるんじゃない?挫折もときには大切よ」


「……絶妙に合わねぇな……。そりゃあ挫折を否定はしないけど……今じゃないさ……」


 オレはそう言って瞼を下ろすと、一瞬で夢の世界に落ちた。まるで気絶するように眠り、起きるときも突然だった。気づいたときには日の光を浴びており、身体が重いことに気がついた。

第一章完結です!

もし面白かったら評価、ブックマーク等もしていただけたら嬉しいです✨

さて、主要な登場人物をこちらで紹介しておきます!


グランデュース=ミルアルト・・・本作主人公。愛称はミラ。能力スキル殲滅の騎士(ディザス・ナイト)』を持つ聖都魔法学園の一年生の少年。天転召喚にてセリアを召喚した。序列六位。


ネフィル(グランデュース)=セルセリア・・・神話の時代の英雄。能力スキルは現在持っていない。10,000年の時を経てミラに召喚された。


アリベル=ルーシュ・・・ミラの2歳年上の幼馴染。能力スキル神々の祝福(アダム)』を持つ。序列二位・生徒会副会長。幼い頃、戦争により親を亡くす


サンダーグラス=ジンリュー・・・生徒会長、序列一位。


シュールラ=レイジ・・・十法帝(八星級)のうちの一人。聖都魔法学園の校長。


ジルダ=シャルテリア・・・竜帝、かつ十法帝の一人。神話の英雄、ジルダ=グラダルオ(セリアのかつての仲間)の娘。


歴史の破壊者(デスティニー)・・・???


ルシファー・・・???


ネフィル=エスト・・・神話の主人公。詳細は前作、および前々作にて。

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