第22話 阻まれない斬撃の道(3)
「さぁ! 白熱の一回戦を終え、序列戦は二回戦へと進みます!! 第一試合では圧倒的な勝利を抑えた新星! グランデュース=ミルアルト!!」
「そして同じく、生徒会副会長の名に恥じぬ圧倒的な力を見せつけ勝利しました! 現序列二位! アリベル=ルーシュ!! 二人は同じ家で過ごした姉弟のような関係とのことです!!」
「必見の二回戦! 第十一試合!! 始めッ!!」
オレとルーシュは同じようなタイミングで剣を抜いた。ルーシュは剣の腕はさることながら、最も強力なのは能力『神々の祝福』の方だ。
それ自体の殺傷能力が高いというわけではないが、強化、拘束、翻弄など、あらゆることが可能な万能の力だ。オレの能力で対抗しようにも、彼女の能力のある特徴により、大した意味は為さないことだろう。
「姉弟か。誰がそんなことを言ったんだろうな。そりゃ間違いでもねぇとは思うがよ」
「いいんじゃない? どう言われるよりも収まりがいいし。……そんなことより、ミラの試合見たわよ。大したものだったけど……あれ以上のはあるのかな?」
「……とっておきが一つだけ」
「そう。なら警戒しなきゃいけないわけだ。負けちゃう可能性を」
ルーシュはそう言って地面に剣を刺した。そして地面が揺らぎ始めたかと思えば、草が生え始め、木が生え動き始めた。
『神々の祝福』とはつまり、自然現象を、生命を生み出す力だ。そこに魂が宿ることはないが、それを除けば無条件に生命を生み出すことができる。
太い鞭のような木をオレの力で滅しようとも、生まれ続けるものを止めることはできない。オレの能力は、ルーシュに対して有効打にはなりづらい。止めるためには、ルーシュ本人の魔力を斬る他ない。
……とはいえだ。闘技台はすっかり生きた森になってしまい、完全にルーシュの領域だ。足場は悪く距離も取られる。近づこうと木を斬り払えばその隙を狙われるだろう。だが距離を取れば負けるのはオレだ。
「接近するか! いいね!!」
「『部分身体強化』!!」
「『裂滅剣』!!」
オレは脚を魔力で強化し、ルーシュは向かって飛びかかった。木や蔓が邪魔をするけれど、まとめて斬ってしまえばいい。オレは圧縮した魔力を剣に込めて思いっきり剣を振った。
オレの斬撃は森を斬ることなど造作もないことだが、ルーシュの剣を弾くには至らなかった。そして構え直している間に森は回復していく。
「やっぱり悪くないね。昔よりもうんと強くなってるよ」
「ルーシュもな。昔はもっと剣を交えてくれたのに。これじゃ嫌いになりそうだよ」
「それは困るけど、ミラは私じゃなくて自分を恨むんでしょ? ストイックだもんね」
そう言って蔓がオレの脚を拘束し、槍のように鋭い木がオレに襲いかかった。蔓には魔力を流して消滅させ、木は全て斬り落とした。そしてその後ろからルーシュが斬りかかり、オレはなんとか払った。
が、今ので腕を斬られたせいでこれからは反応が遅れてしまいそうだ。結界内であるため血が出たりすることはないし痛みもほとんどないが、腕の違和感を消し去ることはできない。
……? いや、違うな。この違和感は傷だけじゃない。
「毒性の強い植物でも生やしてるのか? 空気が悪いと思ったら、毒が撒かれてるじゃないか……」
「私は優しいから、神経毒だけね。負けを認めて結界の外に出れば、何もなかったことになるけど?」
「まさか。そんなことをしたとして、怒るのはルーシュの方だろ?」
「ふふっ……」
なるほど……毒の類は護符を燃やしても効果があるのか。……いや、そういう効果を錯覚させられているのか……。
結界内では有害な要素は無効化されるものだ。毒を感じてはいるが現実には何の問題もない。だがこれを無視して戦うことはできないな。オレは身体の隅々まで魔力を巡らせて毒を滅した。
「参ったな……。実力以上に……手数でも上回られてるか……」
「じゃあどうするの? 私はそれが気になってるの」
ルーシュは普段のふざけた態度とは裏腹に、戦闘では決して油断をすることはない。その上周囲をよく見ているし、これほどまでに鉄壁なら隙を突くなんてことはできそうにない。それなら……。
「正面から超えるのみさ! ルーシュがどれだけ強かろうが、オレがそれを超えてやる!!」
「『殲滅灰剣』!!」
「ッ!!」
瞬間、オレの魔力が沸き出し、解き放たれるような感覚に襲われた。オレは目一杯の魔力を剣に流し、その魔力を放出しないように剣の内側に抑え込みながらその剣を振った。防御のために作られた木の分厚い壁を越えて、斬撃はルーシュにまで届いた。
ルーシュの魔力も能力もオレの斬撃を止めることはできない。森はすぐに再生するだろうが、オレの剣を受けたルーシュは再生できるものではない。
始めから森を斬ろうとするのではなく、森ごと相手を斬ってしまえばよかったのだ。……斬れるかどうかは別として。




