第20話 阻まれない斬撃の道(1)
開始の合図と共に、オレは剣を抜き、ガラヌは杖を取り出した。杖は魔法の精度を高めたり魔力消費を抑えたりする役割を持つが、そう考えると能力保持者ではなさそうだ。
「お前は随分有名だからなァ……俺も知ってるよォ……。可哀想になァ……。俺は一年で成長したってのに……お前は十何年と足踏みしてて……どんな気持ちなんだァ……?」
「嫌な性格してますね、先輩。まぁ強けりゃなんでもいいんじゃないすか?」
「ほう……」
ガラヌの質問に答えるように、オレは彼に接近して首を斬る勢いで剣を振った。しかしその剣は突如現れた岩の壁に阻まれ、ガラヌに届きはしなかった。
「なるほど……土……いや、岩属性の魔法師ですか……」
魔法というのは、魔力をエネルギーに変換して引き起こす現象だと認識されることは少なくない。それも間違ってはいないが、厳密には少し違う。魔力という特殊なエネルギーを用いて世界に誤認させることで、物質や現象を作り出すものだ。
しかしそんな中で、土や岩といった、まとめて地属性と呼ばれる属性の魔法は実際に物質を生み出すことが特徴だ。オレの力ならば岩を斬るのは造作もないが、能力によって消し去ることはできない。
「間違っちゃいねェがよォ……それだけなわけねェだろォ……!!」
「『炎弾』!!」
「くッ……!!」
ガラヌに染み込んだ赤い魔力から、強力な炎魔法が放たれた。天現融合によって魔力も跳ね上がっているため、消し去るのも楽ではなかった。自前の岩属性と外付けの炎属性……そう珍しい組み合わせでもない。
「……溶岩でも作るつもりっすか?」
「岩との複合魔法だったらよォ……お前の能力も意味がねェんじゃねェかァ……?」
「まさか。その程度、斬れないわけがないでしょう。試してみますか? 先輩に体力を使うのも勿体無いので、魔法もあなたも、一太刀で切り伏せてみせましょう」
「そういう態度が気に入らねェんだよなァ……!!落ちこぼれのくせに生意気な……その態度がよォ……!! 望み通りに俺の最高の技で終わらせてやるぜェ……!!!」
冷静なオレとは対照的に、ガラヌは興奮しているようだ。しかしそんな精神の昂りに呼応するように、彼の炎は温度を増し、作り出した岩を溶かし始めた。
その岩は炎によって完全に制御され、竜のような形になった。温度は岩を溶かすほど、闘技台も柔らかくなっている。まともにやってはオレの剣が溶かされてしまうな。……剣だけで済めばマシな方か。
「可哀想になァ……。たった三星級のガキが思い上がっちまって……そのせいで近づくことすらできずに負けちまうなんてなァ……!!」
「『獄炎竜』!!」
「思い上がってんのはどっちだか……」
確かにもの凄い熱量ではあるが、セリアの炎と比べれば何でもない。オレは強く剣を構えた。剣は時に空間を越えて相手を斬る。
セリア曰く、剣を極めれば極めるほどに、どんな物質、現象であれ、斬り裂く剣の道を阻むことはできなくなるそうだ。オレはまだそう胸を張れるほどの境地には至っていないが、『殲滅の騎士』は森羅万象を斬る力だ。
たとえ実在する物質を操っていようと、魔法が魔力を纏っている以上、オレの剣は離れていようがそこに届く。届いたならば、斬撃はただその道を辿るだけだ。
「『殲滅剣』!!」
「なッ……あぁああああ!!」
鋭い斬撃が竜とガラヌを両断し、反属性の魔力が魔法を無へと誘った。ここの結界がセリアやシャルテリアさんが暴れても揺るがないと知らなければ、こうも大胆に斬ることはできなかっただろう。
護符によって身を守られていたガラヌは、結界内では肉体を保たずに結界外へと放り出された。やはり便利な技術だな。
「アンタ、竜見たことねぇだろ。その程度の技に名付けるなんて、思い上がってたんじゃねぇのか?」




