第15話 竜帝・ジルダ=シャルテリア(3)
「つまりはエストにあげちゃったってことよ。そう簡単にいくとも思ってなかったんだけど、エストは色々イレギュラーな存在だったし、なんかよく分かんないけど上手くいったのよね」
校長室に戻ったオレ達はセリアから事の詳細を聞いていたわけだが……
「なんか上手くって……」
セリアが魔神との戦いによって死ぬ直前、なんとかエスト様に力を継承できたとのことだった。しかしいよいよ分からない。能力は最大で一人一つまでのはずだ。エスト様は生まれながらの能力保持者だと聞く。
前代未聞という言葉は存在するものの、それは神が、世界が決めた法則だ。その存在がこの世界にある以上、二つ以上の能力を持つことなど許されないはず……。
いや、もしも力を融合させたと考えるなら辻褄は合うか……。いや、それでもとても信じられることではない。が……。
「セリアが言うなら本当なんでしょうね。考えるだけ無駄な気がします」
「そうじゃな。とにかくセリアが手を抜いていたというわけでないなら、余はそれで充分じゃ」
しかしやはり、セリアはエスト様に関して話すときはどうも生き生きとしている。惚気を聞いているようで何ともまぁ不思議な気分だ。
「して、実は余がここに来たのは何も、セリアに会いに来ただけではない。本当ならとりあえずは法帝としか共有はしたくないのじゃが……ミルアルト殿はセリアの契約者じゃからな。他所にするわけにもいくまい。何よりお主の存在はもはや八星級戦力と言っても過言ではないからな」
「アテにされてるのはセリアなんでしょうが、聞けるというならオレもわざわざ拒否はしません」
「なら早速……今世界中で特殊な者達が暴れ始めておるのじゃ。“デスティニー”あるいは“歴史の破壊者”と名乗る者達じゃ。初めはしっかりとした組織性はないものかと思ったったんじゃが……どうもそうでもないらしくな」
「余が調べた範囲では獄境大陸を除いて全ての大陸で確認できた。どうやら積極的に国に兵力を貸し出し、戦争を促しているようじゃ。近年はどうも戦争が活発に行われるから変じゃと思ったんじゃ。予想ではあるが各大陸に支部でも置いて活動しておるのじゃろうな」
「組織性があると判断した根拠は?」
「これが謎なんじゃがな、余が始末した者達は一切の全て名前も戸籍も存在しなかったんじゃ。人工生命体なのかとも思ったが、どうも奴らにはしっかりと魂があるようでな……」
能力や魔法によって植物などの魂を持たない生命を生み出すことは可能だが、魂を創ることは不可能だ。それは神や世界の法則でさえも完全に取り扱うことはできない。魂とは世界においてそれほどに貴重で尊いものなのだ。
「でも存在しないはずの人達が何人も居たってことでしょ? そんなことは普通じゃないんだから、あらゆる可能性を考慮するべきじゃ?」
「そうじゃな。してここからは完全に予測になるんじゃが……今から13年前、パンバール王国とジャルガリン共和国との間に起こった戦争をご存知か?大きな戦いだった故レイジとミルアルト殿は知ってるじゃろうが」
「私は知らないわね。ミラは知ってるの?」
「よく知ってるさ」
知らないわけがない。パンバール王国といえばルーシュの祖国だ。そしてその戦争はルーシュから日常を、そして両親を奪った。
オレは幼かったために当時のことなどほとんど覚えてはいないが、ルーシュの中にはそれは不幸として記憶に深く刻まれている。彼女が戦争の悪夢にうなされたのは一度や二度ではない。




