第134話 運命(1)
それから瞬く間に時間が流れ数日後のこと、十法帝会議の日となった。聞いた話によると、ジンリュー達はベータと戦って逃げられた……というか負けたのだとか。やはり番外を相手とするならば、相応の戦力を整えなければならない。
会議の地は聖都の聖国議堂。以前の会議と同じ地なのは、それを決めるだけの時間がなかったからだ。そこに並ぶのは10人の法帝と、そしてオレ。
(……おかしいと思うんだよ。戦力として数えられるのは嬉しいけどさ、オレは法帝じゃねぇだろ)
(仕方ないじゃない。実力は遜色ないし、何より私とエストの関係者だもの)
(……師匠は秘匿だから大して関係ないだろ)
分からない話ではない。いや、というか合理的だとは思う。前とは違い、セリアを抜きにしてもオレの戦力は彼らに並んでいるわけで……それを差し引いても場違いだと思っているんだ。
「さて、時間も惜しい。話を始めようと思うのだが……」
「歴史の破壊者、ユリハ様、番外、ルシファー……どれからです?」
話の進行をするのはベルドットさん、そしてそこに首を突っ込むのは“猛帝”リラルガさんだった。かつてパンバール戦争、そこで初めてルシファーを確認した存在。
「……まずユリハ様について。こちらはルシファーとの接触により自由意志を奪われていたらしい。今は元に戻ったらしいが……」
「民衆の困惑は収まらないでしょうね。そもそも奴らもそれが目的でしょう」
「だろうね。まず我々を降ろそうとする勢力が出るだろう。そんなものに対処する時間はない。七星級以下の者を防衛に向ける」
政府がユリハ様に従わなければ敵対すると宣言されたのだ。それだけで市民はどちらにつくか、それを考えている。過激な者達は、有無を言わずに攻撃に移るだろう。歴史の破壊者と戦える戦力をそんなものには割けない。
「歴史の破壊者の主はルシファーで間違いない。そして番外の戦力……我々を超える戦力が全てで五つ。ルシファー、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ。対して、我々の戦力は十法帝に加えてミルアルト君の11人」
……加えて師匠か。しかし相手の戦力はそればかりではない。No.8だって法帝級……少なくとも今のオレに近しい力がある。それ以外にもいるかもしれない。言えることは番外が法帝を超える力だというだけ。
「で、どうすんだよ。番外に勝つ当てはあるのか?」
「……正直ない。シャルテリアさん、ベータというのはどんな人でした?」
「……数をぶつけて勝てる相手じゃなかったな。余を含めた法帝5人、それでも敵わなかったからのぉ……ベルドット、お主と誰かが共闘してやっと対等じゃろう」
「……そうですか」
ベータはそれだけ強いのか。あのときオレ達が戦っていたら……まず間違いなく負けていた。しかし……。
「参ったね。ベルドットをベータにぶつけて、ならアルファとルシファーは誰が対処する? 残りの8人か7人か……ガンマとデルタと戦うのが限界では?」
「……私の師匠に任せるかね……」
「誰?」
「強いお方だよ」
師匠ならば確かに戦えるだろうが……果たして任せていいものか。向こうは他の誰よりも師匠を対処するはず。ならば二対一ならば勝てないと見た方が……。
「ミルアルト君、君はどう思う?」
「え、オレですか?」
「ああ、アルファのこともルシファーのことも……師匠のことも。君が一番知ってるだろう?」
……あぁ、そういえばベルベットさんは師匠がエスト様だってことは知らないのか。と考えると、セリアもいるし一番理解しているのは確かにオレ……だが。
「あの2人は、数を集めて勝てる相手じゃありません。確かに師匠なら戦えると思いますが……相手が最も警戒しているのも師匠でしょう」
「……そうだよな……」
師匠は強い。測れないほどに、そして圧倒的な力を誇るヤツらが警戒するほどに。だからこそ、だ。
「個人的なことを言うのなら……」
「どうした?」
「ルシファーはオレが倒したい……!」
そう言おうとした瞬間、議堂は崩壊した。結界の張られた頑強な結界が、4つの影によって……。
「なッ……お前はッ……!?」
「ん? おぉ、久しいじゃねぇか!」
知らぬ2つの影、恐らくガンマとデルタ。それからベータと……。オレはもう一つの影に顔を掴まれ、そのまま何百、何千メートルも吹き飛ばされた。
「キャアアアッ!?」
「ぐぁあッ! な、なんだ……!?」
十法帝会議は分断された。道中の街は崩壊し、火に呑まれる様子を見るしかできなかった。ただ今は、それを気にする余裕も、怒る余裕もない。まさかここを狙われるとは……戦力の最も集結している場面に……わざわざ……ッ!
「げほッ……はぁ、はぁ。……あぁ、久しいな、No.8」
「強くなったみたいだな。ただ俺には新しく、ゼータという名が……いや、お前には古い名でいいか」
他のみんなはどうなっているか、気にする余裕もない。目の前の相手は以前からさらに力を上げ、怪物になっている。果たしてオレ一人でどこまで……。
「ははっ、借りは返すぞ。あん時ゃ痛かったからな」
「あぁ、今度こそ互いに殺し合いといこう」




