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神話の英雄譚/運命の逆賊  作者: わらびもち
第八章 天空都市
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第132話 ルシファー(4)

 聖都から南東方向に進んだとある地、シューレットはベータを追っていた。ベータは致し方なくそこに立ち止まり、迎え撃つこととした……が。


「あれ?」


 彼を追っていたシューレットは突如止まった正しくはベータの他に、そこにいた影のために。


「ジンリュー君とシャルテリアさんじゃない。さっき中央に連絡入れたばっかりなのに」


「余はジンリューに呼ばれてな」


「未来を見て、ここに来た方が良さそうだったもので。他の法帝にも連絡は前もって入れておきましたが……アレが敵ですか?」


「あぁ、気をつけてくれ」


 そこに集ったのは新しく十法帝となったサンダーグラス=ジンリュー、“竜帝”ジルダ=シャルテリア、そして“剣帝”シリアン=シューレットの3人。対するは歴史の破壊者(デスティニー)が番外、ベータ。数として優勢なのはシューレット達だが。


「参ったな。まさかこんなところまで追ってくるたぁ……王の手を煩わせるわけにもいかねぇ。仕方ねぇな。殺すとしよう」


「そりゃ怖いね。私達はあんたを殺すとするが」


 そう言いながらシューレットは斬りかかった。能力スキル剣帝ソードマスター』、それは魔力そのものが強力な刃となる。その本質としてはグランデュースの能力スキル……いや、その始祖であるグランデュース=バルザートのものに極めて近い。


「ッ……!?」


「なんだ……?」


 しかしその刃が、ベータには届かなかった。魔力の壁ではない。反発されたような……。


「重力か!」


「ほお……流石、目が鋭い」


「ッ……!」


 ベータがそう言うと、彼を中心に外側に向かって重力が働いた。身体が引っ張られ、近づけない。人間では逆らえないだけの力が……。


「わっはっはっ! ぬるいぬるい! 余はドラゴンじゃ!」


「ッ……そうでしたな。いやいや、舐めてやしたか」


 シャルテリアは人型の身体に大きな翼を生やし、そのまま空を舞って氷の槍で突き刺した。それをベータは長い槍で受け止める。


「『泡沫転生リグロ』!」


「ほうほう……」


「なッ……!?」


 ジンリューの手から放出された小さな泡が、ベータを包もうと襲いかかった。空気を割り、魔力に亀裂を入れる。それでも届かない。


「『剣裂スラッシュ』!」


「んん……悪かねぇ」


 縦に振り、放たれた一筋の斬撃。軌道は正確。威力も速度も充分。しかし掠め、皮膚を小さく斬るだけだった。


「……いや、重力じゃないですね。アイツが操っているのは距離だ」


「距離?」


「えぇ、おそらく」


 重力でも軌道を変えるには充分な力だろうが、それにしても反発力が大きい。ならば距離を定め、一定を保とうとすると思った方が……。


「がっはっはっ! おいおい、ここか!? 祭りの会場は!!」


「静かになさい、ガラリネオ。……アレが番外? 規格外の魔力ですね」


 遅れてそこにやってきたのは、“海帝”ガリヌラ=ガラリネオ、“妖精帝ようせいおう”アリイェット=シュリナだった。5対1、数は変わらず優勢。


「おふたりとも……他の法帝は?」


「そう簡単に駆けつけられる距離じゃないのでしょう。まず、私達で奴を倒しますよ」


「……いやはや、こうなると面倒だ。仕方ない……」


「……ッ!? おい! 何か来るぞ! 伏せ……」


 刹那、一帯は嵐よりも強力に吹き乱れた。縮み、膨張し、そして爆発。収束と暴発を繰り返し、地震よりも強大なエネルギーに飲み込まれた。


 1分か2分か、その崩壊によって彼らは地中の瓦礫に沈んだ。大地からは血が吹き出し、その上にはただ1人が立っていた。


「ふぅ……やれやれ、しぶといヤツらだ。今、トドメを……」


「ベータ! 一時撤退だ!」


「おぉ! 王よ! 主導権を得られたんですかい!」


「あぁ! だが急げ! ヤツが来る!」


 そこに飛んできたのは聖都から戻ったルシファーとアルファだった。彼らは汗を垂らしながら北西から飛んできていた。異常事態、たとえ肉体の主導権を握っていたとしても、それでも危うい存在の接近。


「あっしとアルファさん、それからアンタまでいるんだ。そう急がなくたって、この人達のトドメを……」


「いいや、ダメだ! 今すぐ架空空間に転移をしろ! すぐそこに来ているぞ!」


「……やれやれ、仕方ねぇか」


 ベータは2人を連れ、距離を繋いで転移した。アルファがそこで気配を消し、彼らは完全に撤退を完成させた。残された5人は虫の息ながら、確かに命を繋いでいた。


「はっ……はっ……」


「……間に合わなかったか。……今はいいか。ほら、君達、目を覚ましなさい」


 彼がそう言うと、彼らの傷は、そして消費された魔力は完全に回復した。周囲の崩壊を直す体力は残されていない……というより、余裕はなかったのだが。


「痛……ッ!? エス……アリスさん!」


「久しいな、シャル。悪いが先を急いでる。彼らの世話をしてやってくれ」


「は、はい……」


 シャルテリアの返事を待たずに、エストは再び飛んで行った。次は獄境に向けて。


***


「あぁ……危なかった」


「そんなにヤベェ相手なんですか? エストってのは……」


「まったく……分からんか。まずまともにやり合って、勝てる相手ではない。なぁ、アルファ」


「えぇ、そうですね。戦うなら全ての戦力をぶつけなければ。それで勝率八割でしょうか」


 架空空間に転移したルシファー達は、そこに重い腰を下ろした。現世とは少しだけ違う次元に広がっている大空間。


「魔天皇という大きな駒は失ったろうが……火はつけた。中央政府に聞いてこい。我々と敵対するか、あるいは権限を全て移譲するか、選べと」


「はっ、仰せのままに」

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