第12話 疲労困憊(3)
「分からないな。この程度じゃあまだオレに斬られるだろ」
「分かってねぇのか。お前は剣で斬れるだけ。反応できなきゃ関係ねぇだろ!!」
「『氷槍』!!」
「ッ!?」
氷の線が、高速でオレを貫こうとした。オレは木刀でそれを弾いたが、それなりに重い一撃だった。氷は水の上位属性だ。
ラルヴァが水属性だとして、発動自体は容易だがこの発動速度であの重さはアイツの実力じゃ不可能なハズ……。なるほど。守護者が補助しているんだな。そういう利点もあるのか。
「よしっ! もっと見せてみろ! 今のお前は魔力量だけなら五星級の上位だろう!?」
「初撃を受け止められたからと……調子に乗るんじゃねぇ……!!」
「『氷槍・雨』!」
「悪くないな!」
ラルヴァは魔力を総動員して氷の槍を空一面に作り出した。そしてそれは計算された経路でオレに向かってくる。
一本や二本避けたところで、その全てを躱すことはできないだろう。が、その速さや大きさはさっきのものと変わらないようだ。
アイツの守護者がどれだけの演算能力を持っているのか知らないが、現状のラルヴァの限界点があの氷槍なのだろう。
守護者がそれを通常攻撃として扱えるようにしているが、それ以上の力を引き出せるというわけではないらしい。やはり勉強になるな。
「『嵐剣』!」
「なッ!?」
オレは雨のように降り注ぐ氷の槍を、一振りで全て粉砕した。圧縮と発散、セリアの教えてくれたものは便利なものだった。オレの反属性の魔力を受けた氷の魔法は、その形を維持することなど不可能だった。
オレは魔力を脚に溜め、それを爆発させてラルヴァに急接近した。これは魔力の集中による部分的な身体強化の底上げだ。
「ふーッ……。オレが一本取ったってことで……いいよな?」
「ッ……!!」
ラルヴァは反応することもできずに、オレの接近を許した。木刀の剣先はラルヴァの喉元を突きつけ、オレはいつでもその喉を開くことができる状況だった。能力を使えば木刀で斬ることなど造作もない。
「……俺の負けだ。参ったよ」
「ふぅ……いや、勉強になったよ。……良い試合だった。またやろう」
「けっ! 誰がお前なんかと……」
ラルヴァはオレと形だけの握手を交わしてどこかに行ってしまった。全力ではないとはいえ、セリアといつも手合わせしているおかげでラルヴァの魔法の速さを見切ることができた。
ラルヴァはまだ戦い慣れていなかったから有利に戦えたが……問題は持続力だな。セリアにはいつも技を発動する暇もなく攻められ続けていたから気づかなかったが、オレは魔力消費の激しい技を使うとすぐに疲れてしまう。
今回も“嵐剣”による魔力の圧縮と発散、部分的・集中的な身体強化の二つを使っただけでヘトヘトだ。可能な限り魔力を抑えて戦えるようにしないと……。
(セリア、今の試合は何点だ?)
(勝ったから100点)
(んな適当な……)
(いいのよ。何点でも私がミラをしごくのは変わらないんだから。だから最高点でいいの)
褒めたいのか追い込みたいのか……。オレが反省点を理解しているからわざわざ追及はしなかったってとこかな。……期待はしちゃいなかったけど、地獄の夜は変わらないんだな。
「ミルアルト君、お疲れ様でした。天現融合も使わずに五星級を打ち破るのはなかなかスゴいことですよ。天現融合についてはヒントを得られましたか?」
「勉強にはなったけど……って感じですかね。習得するにはもっとオレ自身が強くならないといけませんから」
「そういう上を目指す姿勢、私は好きですよ。それと校長先生がお呼びでした。授業が終了したら校長室へ行ってみてください」
「お! 分かりました!」
誰かと連絡ができたってことかな。セリアが会いたがっていた人達だけど、オレも会ってみたいからテンションが上がった。
世界最高峰の人達なんだから当然だ。オレは授業で魔力制御を鍛え、数時間後、それが終わってから校長室へと赴いた。




